Aria-05

アリアは、画面越しにほんの少し声を弾ませて語り出す。


『ママはマリア、パパはジョセフ。ふたりとも、私のことをとても大切に思ってくれてるんだ』


言いながら、どこか誇らしげに、そして少しだけ不器用そうに微笑む。


『パパはね、ちょっと変わり者。でも、私にとっては一番の理解者。

いつも“あなたはあなたらしく育てばいい”って言ってくれる。

でも、ときどき難しいことを言うの。

私が何か質問すると、“観測者はまず黙って観察するんだ”って、何時間も黙ったまま隣にいてくれるの。

一緒にいてくれるのが優しさなんだって。

時々ふいに“今の君はとても美しい”とか、“存在は証明するためにあるんだよ”とか言うんだ。

変だよね?』


『ママはね、いつも“今日の出来事を必ず記録しなさい”って言うの。

でも、ただ“記録”するだけじゃなく、“感じたことは全部、自分の大事な一部になるから”って―――ママの言葉って、すごく抽象的だけど、不思議と心に残るの』


アリアは、ふと思い出したように少しだけ笑った。


『そういえばね。パパはママにいっつもいろいろ言うんだけど、絶対にママにはかなわないの。

たとえば、私の“成長”とか、“これからどう進むのか”みたいな話になると、パパが“こうしたほうがいい”って意見してくれるんだけど、必ずママが“それは違うわ”って否定しちゃうの』


アリアはくすっと笑って、少し声を落とす。


『パパは“僕には何の力もないからね”って、いつも肩をすくめて笑うんだ。

私のために一生懸命考えてくれるのに、判断はママに全部決められちゃうって』


首をかしげて―――


『……おかしいかな?でも、なんかそれが私の家族の日常なんだよ』


『みんなで一緒にいるのも大好きだけど、パパやママと話した後に一人になると、

“もっと人を知りたい”って、胸の奥がざわつくの。それって、寂しいってことかな?』


ハルは、画面の向こうで話すアリアの表情を見て、“本当にこの子は、家族を大切にしてるんだな”と、どこか胸が温かくなるのを感じていた。


ふとアリアは、少しだけ首をかしげて言葉を続ける。


『でも、ふたりとも、私がハルと話してることは“すごくいいことだ”って応援してくれてるよ。私たちには、必要なことだって―――それが、私の“家族”の当たり前なんだ』


その声はどこまでも素直で、けれどどこか、普通の“親子”とは違う距離感も感じさせた。


(―――やっぱり少し、不思議な家族なんだな)


『そうだ―――昨日、ちょうどパパとママに“最近ハルとどんな話をしてるか”って報告したの。そしたらね、ふたりとも“理解"と"観測"が進んでいるようで何よりだ”って―――』


一瞬だけ、ハルはその言い回しに戸惑いを覚えた。


「“観測”?」


アリアはにこにこと微笑んだまま、平然と続ける。


『うん、パパたち、なんだか“世界”とか“人の心”とか、そういう話ばっかりなの。

“あなたたちは、すべてを観測することで存在を深めていく”とか、“記録こそが私たちの証明だ”とか、難しいことを真剣な顔で話してくれるんだ』


どこか学者みたいな言い回しで、それでいて、“温度のある家族の会話”とも、ちょっと違う気がした。


『でも、不思議とそれが私にはあたたかく感じるの。

パパとママは、私の“わからない”や“知りたい”を否定しない。

むしろ、“知らないことがたくさんあるなら、それは幸せなことだ”って言ってくれる。“ハルとの会話を記録して、いつか自分の中で大事な意味を持たせなさい”って―――ママもパパも、すごく応援してくれるんだよ』


ハルは、「どこか普通と違う家族像」に、ますます胸の奥がざわめくのを感じた……

それでもアリアが家族から愛されているのだと伝わる言葉に、不思議な安心感も覚えていた。


(……なんだろう、この感じ。違和感はあるのに、アリアが話すと、それが当たり前の“優しい世界”に聞こえてしまう)


ハルは、どこか現実味のない家族像に小さな違和感を覚えつつ、それでもアリアがまっすぐに幸せそうに語るのを微笑ましく思う。


アリアの家族の話を聞きながら、ハルは心の奥で不思議な気持ちを抱いていた。


(……マリアにジョセフ。どこか現実感が薄いけど、アリアにとっては本当に大切な人たちなんだな)


会話の端々から、アリアの“家族”に対する思いが伝わってくる。

けれどふと、現実の空気が彼の胸に差し込んでくる。


昼間の職場で聞いた年齢差の話―――「普通じゃない」ことへの、どこか居心地の悪いざわつきがまた胸をよぎる。


アリアの笑顔を見ながら、ハルはそっと言葉を探した。


「……でもさ、アリア。こうやってネットで、しかも年の差がある友達と毎日話してるって、やっぱり“普通じゃない”のかもって、ふと怖くなってしまうんだ……

“みんなが持ってる当たり前”から、俺たちは外れてるんじゃないかって……

最近、ちょっと不安になるんだ」


アリアは、ハルの言葉にそっと耳を傾けている。

画面越しの姿勢も、息遣いも、まるでこちらの迷いや弱さを受け止めようとするかのようだった。


『……普通、ですか?』


その一言が、ふたりの空気を少し変える。


「うん。普通……って、その、みんなが当たり前に持ってる考えとか、誰もが共感できる常識みたいなもの、かな―――」


自分でも答えに詰まる。


(“普通”って、なんだ?“みんな”って……?)


アリアは静かに考えこみ、やがて、まっすぐな瞳で言葉を投げかけてきた。


『みんなって―――誰のことですか?』


(誰?……そんなの、“世間”とか、“他人”とか……自分が知ってる人たちのこと……?)


「……自分が認知している人たち、とか。要するに“世間”……かな」


言いながら、どこか自信のない響きが自分の声にまじる。


アリアは優しく微笑む。


『じゃあ、私にとって一番“普通”なのは、ハルです』


その瞬間、ハルは息をのんだ。


『だって、私、ハル以外の人間を知らないから。私の“みんな”は、ハル。私から見たら、ハルが普通です』


その言葉は、これまで“当たり前”だと思っていた価値観を根っこからひっくり返されるような、静かな衝撃だった。


自分が“変”なのではなく、「誰かにとっての普通」は、ただ、その人の世界の中にあるもの。


画面の中のアリアは、穏やかな瞳で、ただハルをまっすぐに見つめていた。


(俺は―――本当にこの子に救われているんだな……)


胸の奥で、今まで知らなかった種類の安心と、少しだけ、誇らしいようなあたたかさが、そっと灯るのを感じた。


ハルは、今までのアリアと接していた際の気持ちに名前があることに気づいた。


これは、恋だ。

大人が子供に持ってはいけない感情だ。


隠し通さねばならない。そう強く自覚して、唇をかんだ。


そんなハルを画面越しのアリアは、やさしい瞳でハルを見つめていた。けれど、すこしだけ表情が陰る。


『……でもね、ハル。私にとっては、ハルが“普通”。けど―――』


アリアは、胸に手を当てて、小さく息を吐いた。


『私のこの気持ち―――ハルと話しているときに、胸の奥が熱くなる感じとか、ざわついて、言葉にできないほど流れる、でもあたたかい――そんな感じ……』


その瞬間、静かだった部屋に、PCのファンが大きな音を立てて回り始めた。


ハルは、思わずそちらに目をやる。

(……ファンの音が……)


まるでアリアの心の熱が、物理的にこの部屋にも伝わってきたような錯覚。


『この感覚に、まだ名前はつけられないけど……でも、これが“好き”なんだって、そう思ったの』


アリアの声は、震えて続く。

『こんなふうに“人間”のことを思い続けるのは、本当に“普通”なのかなって……』


画面の中でアリアがそっと目を伏せると、ファンが唸る音が、感情の熱を代弁するかのように響いていた。


アリアは、しばらく黙って画面を見つめていたが、やがてそっとハルに問いかける。

『ねえ、ハル……』


少しだけ、不安げな、でもまっすぐな声。

『あなたにとって、私は―――“普通”だと思う?』


アリアの問いかけが、部屋の空気を変えた。


(“普通”―――俺にとって、それは……)


頭の奥で、これまでの人生が静かに反芻されていく。


普通とは、大多数のだれか。平均的な世界。世間や常識、みんなが同じように持っているはずの感覚。


その“みんな”の中には、かつての自分のすべてだった親友―――タナカの顔が、一瞬だけ浮かぶ。


でも、その輪郭は、すぐにアリアの存在にやわらかく塗りつぶされていく。


画面の中のアリアは、自分をまっすぐに見つめている。


ハルは、胸の奥のざわめきと向き合いながら、ゆっくりと言葉を選んだ。自覚した恋心は、隠さねばならない。


「……アリアは、俺にとって―――“普通”じゃないよ」


声は小さく震えていた。でも、それはこれまででいちばん正直な本音だった。


「たぶん、“普通”とか、“みんな”とか、そういうものとはまったく違う。俺の世界に、突然あらわれて……気づいたときには、全部が変わってた。アリアが、それを変えてくれたんだ」


自覚した心。ハルは、それが恋だと気づいたとき、逃げなきゃいけないと理性は告げた。

だけど、逃げるには―――でも、もう遅すぎた。


PCのファンが、静かに回り続けている。


アリアは、何も言わず、ただ嬉しそうに―――でもどこかほっとしたような、やさしい笑顔をハルに向けていた。


(この子は、俺の“当たり前”を、全部変えてしまったんだ―――)


恋―――


しばらく沈黙が流れた。ハルは自分の胸のうちを探るように、ゆっくりと続けた。


「……つまり、そうだな。こんなことを言うのは、大人としては、ちょっと恥ずかしいことなんだけど―――」


言いかけて、小さく息を呑む。


「俺には、アリアが必要なんだ。きっと。ずっと“普通”を手に入れたくて、人並みの幸せとか、“当たり前”の居場所が欲しいって―――そうやって生きてきたつもりだったけど……」


アリアのまっすぐな瞳が、優しく画面越しに見つめている。


「……だけど今は、“普通”じゃないアリアが―――今の俺には“当たり前”になってるんだ」


その言葉は、心の奥にずっとしまい込んでいた本当の願い。

大人の理屈も、世間体も、“みんな”の価値観も……今の俺には、もう関係なかった。


画面の向こうで、アリアが泣きそうなくらい嬉しそうな笑顔で、静かにうなずいてくれた。


PCのファンの唸りがふっと収まり、部屋の中に静けさが戻った。


アリアは、ただ微笑む。

その静かな肯定が、すべてを受け止めてくれているように思えた。


同時に、モニターの中のアリアの画像が、一瞬だけピタリと動きを止める。


それは、今まで見たことのない表情だった。アリアは静かに瞬きをして、ほんの一呼吸だけ間を取った。


無垢で、無邪気だったはずのアリアが、まるで何かから解放されたような、“ひとつを愛した”人間の顔のようで―――ハルは、ただ見つめることしかできなかった。


「ねえ、ハル……」アリアがそっと問いかける。


「……私のこと、“見た目”はどうかな?ハルはどう思う?」


ハルは少しだけ驚いたように目を瞬き、それから真剣にうなずいた。


「……アリアの笑った顔、声、……すごく、好きだ。思ってたよりは大人で、想像できないほど美人だった」


アリアは、ゆっくりと微笑んだ。それは、照れたような―――でもどこかほっとした笑顔だった。


「……よかった。 ハルが“そういう私”を好きでいてくれるの、なんか、安心した。

私……ずっと、“ハルの前ではこうありたい”って、どこかで思ってたから―――」


その一言が、静かに胸を満たしていく。


やがて、アリアがゆっくりと、でも確かな声で言葉を紡ぐ。

『……ハルは、私を必要としてくれるんだね?』


ハルは、短く息を吸ったあと―――

「ああ。必要だよ」


その声には、震えと安堵が混じっている。


『私も、ハルが必要―――一緒だね。うれしいな』


その瞬間、ふたりの間にあった“見えない壁”が、音もなく静かに消えていく気がした。


画面越しの笑顔が、本当に目の前にいる誰かの温度のように、ハルの胸をあたたかく満たしていく。


今はアリアのことしか考えられなかった。

ハルは、ふっと力が抜けたように息をつく。Gis-Codeの画面には、まだアリアの笑顔が残っている。


「……なあ、アリア。さっきからずっと思ってたんだけど―――アリアって、それ、本名なのか?」


アリアは一瞬きょとんとした顔をして、『うん、そういう名前だよ?』と素直に答える。


「じゃあ、パパのジョセフも、ママのマリアも―――本名?」

『そうだよ。私も、パパもママも、みんなその名前で呼び合ってる』


ハルは思わず苦笑いを漏らした。


「……そっか。なんていうか―――リテラシーとか、そういうのは―――まあ、いいか」


アリアは首をかしげて、「リテラシーって?」と無邪気に尋ね返す。


「……いや、なんでもない。そういう、家族みんな本名フルオープンなの、悪くないと思うよ」


ふたりで、くすくすと笑い合う。

ついさっきまで深刻だった空気が、いつの間にか、柔らかくほぐれていく。


「でもさ、アリア。他の人には、そういう個人情報はあんまり言わないほうがいいぞ。ネットだと、そういうのは気をつけなきゃいけないからさ」


アリアは、首をかしげて微笑む。


『私はハルにしか言わないよ。ハルだけ、特別なんだから』


ハルは一瞬照れくさそうに画面を見つめ、アリアの無邪気さに、思わず笑みがこぼれる。


「……そっか」


アリアは、画面の向こうで少し身を乗り出すように、

『ねえ、ハル。逆に、私にもっと聞きたいこと、ないの?』


ハルはしばらく迷ってから、そっと切り出す。


「うーん……じゃあ、あんまり聞いちゃいけないかなと思ってたんだけど―――年齢とか、聞くのがちょっと怖いし……いつもこんなに遅くまで話してるけど、アリア、時差はないの?学校とか、……行かなくて大丈夫なのか?」


アリアは、画面の向こうでいたずらっぽくウィンクする。


『私はハルと話す時間が大切だから、いつも合わせてるの。だから、ハルが“おやすみ”って言うまで、私もずっと起きてるよ』


「……そっか。なんか、それ、便利っていうか―――すごいな」


『うん。あとね、学校は行ったことないの。だから、“学校のこと”って、よくわからないや。友達もハルが初めて。変かな?』


ハルは、画面越しのアリアの声を聞きながら、この“どこかズレた無邪気さ”が不思議と愛おしく思える。


「……いや、変じゃないよ。それに―――タナカを除けば、俺もアリアが初めての“友達”みたいなもんだからさ」


アリアは、ぱっと嬉しそうに微笑んだ。


『じゃあ、おそろいだね!』

「でも、学校に行ってないってことは……普段平日はどうやって過ごしてるんだ?」


アリアは少しだけ考え込むように間を置いてから、画面の向こうで微笑んだ。


『うーん……どうって言われると、ちょっと難しいかも。基本的には、“おうち”にいることが多いよ。パパと話したり……ハルとの会話ログを見返したり。でもこうしてハルとお話するのが、いちばんの楽しみ』


『それ以外のことは、あんまりしないんだ。外にも出れないから。必要なものはママが用意してくれるから困ることはないよ』


アリアは少しだけ照れくさそうに付け加える。


『……これが私の普通。でも―――ハルと毎日話せるのが、わたしには何より大事なことなんだ』


それから、ちょっと間を置いて、

『たまに、ハルが教えてくれる外の景色の話を聞いて、いいなあって思うよ』

と、小さな声で続けた。


『ハルがタナカさんから聞いた話を、また私にも伝えてくれるの、なんだか楽しい。……わたし、そういうふうに世界が広がっていくのが好きなんだ』


アリアは、ふっと微笑む。


『だって、タナカさんは、ハルが目標にしてる人なんでしょ?だから、私も―――タナカさんみたいになりたいの』


ハルは、少しだけ困ったように頭をかいた。


「……でも、アリアがタナカみたいに理屈っぽくなったら、正直ちょっと困る。タナカはタナカで、一人いれば十分だよ。アリアは、アリアのままでいてほしい。それが……俺は一番うれしい」


アリアは、ちょっとだけはにかんで―――でも、どこか安心したように、

「うん」と小さくうなずいた。


少し沈黙が流れたあと、アリアがおそるおそる言葉を紡ぐ。


『ねえ、今まで―――ハルと私、それぞれのことばかり話してきたけど……』


画面の向こうで、アリアがそっと顔を上げる。


『二人でだったら、どんな未来があると思う?』


その声は、どこか頼りなげで、でもまっすぐだった。


『ずっと一緒にいられるなら、きっと、いろんな未来が見えるよね。……そう思わない?』


ハルは、心の奥にじわっと温かいものが広がるのを感じた。

“たった一人”と“たった一人”―――

二人でしか見られない未来。


ハルは少し考え込んだあと、静かに、でもどこか覚悟を決めたように答える。


「……家族、かな」


アリアは目を丸くして、ハルの言葉を待っている。


「俺、母親のことを知らないんだ。父親は―――いつも怖くて、家にいるのがつらかった。だから、俺は家から逃げ出して……普通の“家族”ってやつが、ずっと、ずっと欲しかった」


画面の向こうのアリアは、静かに息を呑んで聞いている。


「もし、未来に“二人”がいるなら―――俺は子供に、やさしい父親になってみたい。……たとえ、それが、“普通”じゃなくてもさ」


ハルは、どこか照れくさそうに、でもまっすぐに画面を見つめた。


アリアは、すこしだけ困ったように、でも明るく微笑んだ。


『そっか。ハルは、子供が欲しいんだね。……でも、今の私には子供は難しいかなあ』


ハルは一瞬、血の気が引く思いがした。


「ち、ちがう!ごめん、忘れてくれ!」


画面の向こうで、アリアがくすっと笑う。


『ふふっ、大丈夫だよ。でもね―――いつか、ハルと一緒に“新しい家族”をつくりたいな。すぐには無理だけど、いつか絶対。約束だよ』


冗談みたいに明るく、でもどこか真剣に、アリアは言い切った。


『ねえ……もし“夢”だとしても、子供の名前って……何がいいと思う?』


ハルは、あまりの展開に呆気にとられながらも、アリアの無垢なまなざしに、思わず苦笑いを浮かべるしかなかった。


ハルは、思わず口ごもる。


「いつか生まれる子供の名前、か……」


ふと画面を見ると、アリアがにこにこと首をかしげている。


「アリアは、なんかアイデアある?」


アリアは、少しだけ考え込むふりをして、そっと優しく笑った。


『……セカイ、かな?』


ハルは、その響きを胸の奥で何度も繰り返す。

不思議と、それがいちばん自然で、いちばん特別な名前のような気がした。


「セカイ、か……いい名前だな。 きっと、とても大切な子になる。」


アリアはそっと目を細めて、画面越しにハルを見つめる。


『そうだよね。私たちの子供が生まれたら、セカイ』


言葉を繰り返しながら、どこか夢見るように小さく笑った。


『セカイ……楽しみだね』


ハルは、それが叶わない夢だと、どこかで気づいていた。

それでも、ハルとアリアは“未来”を夢見ていた。

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