自由詩ノート(2025/06/01~)

藍沢篠

ハイドレンジア

暗く沈んだ毎日の中

酸性の雨に曝されて

花は彩りを失ってゆく


胸の奥に降りしきる雨は

煤煙にくすんで毒を帯び

「ごめんね」のひとつもいいあえない

きみと僕の距離を静かに引き裂く


逢いたくて仕方ないのに

雨音が泪声すらもかき消して


最初からわかっていた

こうなってしまうことくらい

やるせなさを抱え

日々の鬱憤だけが募っていった果てに

すべてが綻んで崩れて


こころの奥底が枯れ果てたような

寂寞ばかりが胸を刺す


色の抜けた花は咲かない


もっと素直に泣けたらよかった

もっとまっすぐに笑えたらよかった

紫陽花から色が抜け落ちるように

想いは薄弱になっていった


わざと傘を差さないで

雨に濡れながら

つがいの魂の居場所を探しているのに


どうしても辿り着けないまま

きょうもまた夜が更けてゆく




※ハイドレンジア:Hydrangea.英語で「紫陽花」の意。

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