ステイシー・グリーンフィールド
キューブ市には大きな酒場は二つある。一つは料理が安く量も多い大衆居酒屋、『シュバリエのクジラの背』
朝から朝までもっぱら冒険者達の宴の会場として賑わっている。
そしてもう一つはクエスト依頼の掲示板を独占し、依頼の掲示にも受託にもワンドリンクを要求するぼったくり居酒屋『パメラの盃亭』
客足は多く、しかし飲食をするものは少ない。大概の冒険者は依頼書と最少の酒代をカウンターに叩きつけ代わりに出てくるショットグラスをくいと飲み干しとクエストの番号が刻まれた受領書代わりの青銅のプレートを掴んで店を後にする。
そんな日常風景を背にして窓際のカウンター席に座る少女。緑色の髪をベリーショート。鎖帷子の上に青銅の胸当てと手甲、腰当て、足甲。左手首には丸盾。左腰にはショートソード。右腰と背中にウエストバッグ。フルフェイス兜はカウンターに置いている。
このわたし、ステイシー・グリーンフィールドはクエスト依頼の受託と昼食のため『パメラの盃亭』を訪れていた。
食べ物を頼んだ時にしか出てこない水で唇を湿らせながらステイシーは思案する。
今日の掲示板のクエストもほとんど受領できるものがなかった。
報酬が塩っぱいグリーンバットの駆除、棘バッタの駆除、ゴブリン退治の依頼。
2人以上のパーティーが条件の洞窟のスライム討伐、オークの集落の襲撃。
割に合わない逸れムーンウルフの生け取りか討伐。
サンダーバードの卵搾取はちょっと危険か。
果てはベーヌボー人のスパイ捜索と殺害。報酬は良いが殺人は願い下げである。
他の依頼は多人数パーティを条件にしているか1人では難しい。
「金がほしい」
1人呟き俯くステイシー。
「お待たせしました」
白髪オールバックのウェイターが兜の隣に熱々のエビグラタンを置く。
「お熱いのでお気をつけ下さい」
小さなむき海老とマカロニがたくさん入ったグラタンが白い湯気をあげている。
「シュバリエに感謝を」
そう言ってステイシーはグラタンをスプーンで一口分掬い、息を吹きかけ冷ます。
息を吹きかけながら窓の外に目をやると1人のエルフが店に入ろうとしている所だった。
白髪混じりの金髪を後ろに流し腰まで届く三つ編みにしている。
服装は黒いフード付きのローブで金の縦ラインの刺繍が入っている。
(白髪混じりのエルフ……。墓場のエルフかな?冒険者とは聞いたことないし、ご依頼かな?金持ってるかな??)
そんなことを考えながらグラタンを口に運んだ。
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