閑話1.シェリアザードが男同士の恋愛本を好む理由(またの名を黒歴史)-3-







「シェリー・・・聞いてもいいかな?」


「レオン?どうしたの?」


「シェリーの好みのタイプってもしかして・・・男同士の恋愛本に出てくる儚くて華奢な感じか、細いけどそこそこ筋肉が付いている男だったりする、のか?」


 シェリアザードの好みが本当は自分のようなマッチョでもなければ、ドールハウス作りと蒐集が趣味のオタク気質な男ではなく、儚くて華奢な身体つきをしている綺麗な男の子───自分と正反対のタイプだと思ったレオンハルトが恐る恐る問い質す。


「まさか!私の好みのタイプは筋骨隆々で自分の趣味を否定せずに理解してくれるひとよ」

 自分が男同士の恋愛本を読むのは、幼い女の子が【シンダーエラ】や【マーメイドプリンセス】といった童話に出てくるヒロインに自分を投影する形で、清い心を持つ主人公(意地悪な継母や義姉から隠れて自分で舞踏会に着ていくドレスとかを用意するといった行動をしない)が優しい魔法使いの力を借りて王子様と結ばれるというファンタジーな夢に浸る一時を楽しむようなものだと、イベントを終えた後、お土産としてスイーツショップ【卵な私】でカスタードを使ったケーキをステファニーに渡してからリビングルームを訪れたシェリアザードが、戦利品とでもいうべき男同士の恋愛本に目を通してしまい思わず顔を引きつらせてしまったレオンハルトの問いに答える。


「シェリアザード王女は幼い頃からシンダーエラを中心に子供向けに改編している童話よりも、登場人物の心の闇と言えばよいのか、当時の世相を反映して残酷な本性を露にしている童話の方が好きでしたね」


 男同士の恋愛本に出てくる男達って皆華奢でフォークとナイフよりも重たいものは持った事がないの~♡という感じの体型をしているが・・・それが普通なのか!?


 それなのに、何で人間一人を抱き上げる事が出来るんだ!?


 もしかして強化魔法を使っているのか!?


 シェリアザードが購入した本に目を通しているラクシャーサが思わずツッコミを入れる。


「男同士の恋愛本はファンタジーなのですから、そのようなツッコミを入れるのは野暮というものです。ラクシャーサ先生・・・」


 その辺りについては自分も常日頃から疑問を抱いているが、気にしたら負けと思ったので深く考えるのは止めたのだと、そう答えたシェリアザードは遠い目をしていた。


「つまりシェリーにとって男同士の恋愛本というのは、幼い子供向けに改編している童話のようなものという認識でいいのか?」


「ええ。私にとって男同士の恋愛本というのは、頭を空っぽにして読む事が出来るジャンルにして趣味と言ってもいいのかも知れないわね」


「成る程・・・。男同士の恋愛本はファンタジーにして子供向けの童話、か」


 そう思えば俺も男同士の恋愛本を読む事が出来るかも~♪


 シェリアザードが購入した男同士の恋愛本の一冊を手にしたレオンハルトが軽く目を通す。


「シェリー・・・?男同士の恋愛本って・・・・・・ギャグ、なのか?」


「ある意味そうとも言えるわね・・・」


「けど、シェリーが男同士の恋愛本を好む理由が分かったような気がするな~」


「分かってくれて、嬉しい・・・わ?」


 違う!


 そうじゃない!


 男同士の恋愛本はギャグであると同時にギャグでもないし、心の中でならともかく堂々とツッコミを入れるものでもない!


 あくまでも男女間とは別の意味での純粋な恋愛物語なのよ!



 分かってくれているようで分かっていないレオンハルトのツッコミに対して心の中で涙を流すシェリアザードであった。






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