14.新たな仲間-2-






「ワタガシ、実は私達──・・・」


 シェリアザードとレオンハルトが重大な事実を告げる。


『何だと!?そなた達はワイバーンを解体出来ぬと申すのか!!?』


「俺達はワタガシのように単独でワイバーンを狩れないし、解体も出来ないんだ」


 ワイバーンを解体するには設備が整っている冒険者ギルドにして貰うのが一般的である。


 グロリオサを襲ったからワイバーンを倒したという理由があれば冒険者ギルドに解体を依頼出来るが、今回はワタガシが肉を食べたいという理由だけで、しかも単独で狩ってしまったものだから頼む訳にはいかない。


「ラクシャーサ先生であればワイバーンの解体が出来るのかしら?仮に出来たとしても問題は場所と道具ね」


「俺が所属している騎士団に解体を頼むにしても、どう言い繕うか、だな・・・」


 シェリアザードとレオンハルトは腕を組んで考える。


「・・・・・・・・・・・・ラクシャーサ先生とお父様を巻き込んでしまおうかしら?」


「シェリー?どういう意味だ?」


「賄賂になるのかしら?交換条件と言えばいいのかしらね?」


 思い付きだから上手くいくかどうか分からないが、と前置きした上でレオンハルトに話す。


 シェリアザードの提案はこうだ。


 ワイバーンの皮・鱗・歯・爪は全て渡すので自分達が使う武器防具として加工してもいいし、部屋に飾るなりしてもいい。肉も少しだけラウロに渡すので食べてもいい。その代わり誰がワイバーンを狩ったのかを問わない形でラクシャーサ、或いは騎士団に解体して貰うというものだった。


『そうするのが妥当であろうな。ワイバーンの皮・鱗・歯・爪は、そなた達の装備を作る為と換金用に必要な分だけ取っておいて残りを渡せばよかろう』


「「ワタガシ?」」


 今の自分達に必要なのは肉であって皮や鱗ではないはずだ。疑問を抱いたシェリアザードとレオンハルトがワタガシに問い質す。


『シェリアザードよ、そなたには倒さねばならぬ強大な敵が居る。ジュスティスあ奴を、ジュスティスあ奴の部下共を倒すには今の装備では心許ないのだ』


「そう、よね・・・」


 ワタガシの言葉にシェリアザードが頷く。


 神の代行者である白竜族の竜王を倒すには種族を超えた連合軍であっても倒せない事は神話や物語等で語られているからなのか、小さな子供でも知っている。


 ましてや今の自分達の装備は武器防具を扱っている店で買ったもので、オーダーメイドではないのだ。


 ワタガシの指摘でその事に気が付いたシェリアザードは己の迂闊さを呪った。


ジュスティスあ奴を倒すのは考えようによっては簡単だが今のそなたには無理難題でしかない。しかもジュスティスあ奴の部下共も厄介だ。ジュスティスあ奴と対峙するという事は部下共との戦いは避けられぬ。ああ見えても白竜族あ奴等はその気になりさえすれば国一つくらい簡単に滅ぼせる。それこそ以前レオンハルトに話した理由でな・・・』


「ワタガシ?シェリーが倒さなければいけない敵は黒竜族の竜王クラスの強さを持つ、という事なのか・・・?」


 当時超大国と謳われていたルチルティーガ帝国が一夜にして滅んだ本当の理由をワタガシから聞いていたレオンハルトは驚愕の表情を浮かべる。


『その通りだ。それは今の武具では勝てぬ事を意味する。白竜族あ奴等との戦いを見据えて今よりも強力な装備を作らねばならぬ故にワイバーンの皮や鱗等を取っておくがよい』


 とはいえ、素材がワイバーンでは白竜族あ奴等の攻撃に耐え切れるかどうか微妙なところだな。というより、はっきり言わせて貰うが・・・無理だな


「ワタガシ?何の素材で作った武器だったら【あ奴等】とやらを倒す事が出来るのか教えてくれないか?」


 シェリアザードが倒さなければならない強敵=ワタガシの言う【あ奴等】が同じ存在を示している事を察したレオンハルトが尋ねる。


白竜族あ奴等と同族の角や皮等で作るか、或いは我の子か孫の武具を使えば何とかなるかも知れぬな・・・』


「そうか・・・」


(ん?)


 ある疑問がレオンハルトの胸に過ぎる。


「なぁ、ワタガシ?ワタガシって子供と孫が居るのか?えっ?本当に?子供が居るって事は奥方も?」


『当然居るに決まっているではないか。・・・って我の家庭事情などどうでもよい!シェリアザードよ、ワイバーンの解体の為にラクシャーサ先生とやらを呼んでこぬか!!』


 レオンハルトよ、次からはそなた達がワイバーンを解体せねばならぬからラクシャーサ先生とやらに師事して覚えるのだぞ!分かったな!?


「「はい!分かりました・・・っ!」」


 ワイバーンを解体して貰う為にシェリアザードはラクシャーサの家へと向かう。







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