13.気功術-3-






「シェリー。軟気功は自分の健康の為に生命エネルギーを体内に巡らせ、硬気功は己の生命エネルギーで肉体を強化させたり、水の上や雪の上を普通に歩いたり出来ると言っていたよな?」


「ええ」


「生命エネルギーって・・・本当にあるのか?」


 シェリアザードを疑う訳ではないが、自分が目にしたもの以外は信用できない性格なのか、レオンハルトが証拠を見せて欲しいと訴える。


「いいわよ。ステファニー、水が入ったコップか盥を用意してくれないかしら?」


『シェリアザードよ、それくらい我が用意するぞ』


 ステファニーに代わってワタガシが水に入った盥を三人の目の前に出現させた。


「ひ、姫様・・・?ワタガシって何者ですか?ヘルハウンドとかケルベロスといった魔獣の類であれば冒険者ギルドで従魔登録した方がいいですよ?」


「ワタガシは魔獣の類ではないとだけ言っておくわ。それよりも見て頂戴」


 これが生きとし生けるもの全てが持つ気───生命エネルギーが存在する証拠を見せる為、ワタガシが出した水の入っている盥にシェリアザードが手を翳す。


「こ、これが気功術の要とでも言うべき気・・・生命エネルギー、なのか!?」


 大地に降り注ぐ雨が幾重にも輪を描くかのように、波一つ立っていなかった盥の水面に波紋が広がる。模様を描いている波紋は小波となり、やがて何かに弾かれたかのように水が勢いよく噴き出したのだ。


「姫様が使える魔法は土魔法と木魔法、そして回復魔法・・・」


 水魔法の素質がないシェリアザードは魔法で一滴の水を出す事も操る事も出来ない。


 つまり目には見えないだけで生命エネルギーが存在する事も、生命エネルギーを操る気功術も本物だという事になる。


「ワタガシ!俺もやってみたい!」


「私も!」


『まずは己の中に流れる生命エネルギーを感じ取る訓練を・・・いや、人体の構造と機能を学ぶ事だな』


「「そ、そんな~!!!」」


 シェリアザードが使った技・・・ではないが、水が勢いよく噴き出す様が何かクールで格好いいと思ってしまったレオンハルトとステファニーが自分もやってみたいと挙手するのだが、ワタガシに一刀両断されてしまったものだから落ち込んでしまう。


「騎士のレオンは短期間で気功術を使えるようになるってワタガシが言っていたから気に病む事はないし、ステファニーもまだ十代だもの。今から気功術を学んでも肉体の若さの維持が出来るわよ?」


「「よし!頑張るぞ(わ)!!」」


 人体の構造と機能を学び理解する事は自分の生命を護る事に、肉体の若さの維持にも繋がるのだというシェリアザードの言葉で立ち直った二人に苦笑を浮かべずにはいられない一人と一柱であった。






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