第12話 主婦、美容と癒やしに手を出す。ダンジョン温泉はじめました!




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その朝、ダンジョンに足を踏み入れた美咲は、ふわっとした湿気と香りに気づいた。


「……なんか、今日はスパみたいな匂いしない?」


ふわふわと湯気が立ち上るその先には、まるで隠れ湯のような空間。

ダンジョン奥に、ひっそりと温泉区画が開放されていた。


「ママ、またレベルアップしたね」と、もふまるが肩に乗って笑う。


温泉の効能は《疲労回復》《MP回復》《美容促進》《リラックススキル上昇率UP》など、主婦心をくすぐるものばかりだった。



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✦ 温泉と魔導配管と家庭風呂


美咲は早速、《魔導パイプ》を利用してダンジョン温泉と家の浴室をつなぐ。


家庭用の浴槽に魔力風呂を導入したことで、

入浴=ヒールバフという奇跡のシステムが完成。


湊斗:「今日のお風呂、絶対なんか光ってた」

真人:「俺の疲れが30%減ってる気がする……」


家族からの評判も上々だ。



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✦ 自作コスメで、ママ友テスト配布


温泉区画の素材癒し苔《温泉石》を乾燥・粉砕・濾過して、

美咲は趣味が高じて《手作り温泉美容液》を開発。

それを――ママ友たちに、試しに小分けで配ってみた。


「これ、なんかすごく良くない?」

「朝の肌のもちもち感が全然ちがうんだけど」

「えっ、美咲さんって実はエステ関係の仕事してたっけ?」


公園の隅にて、プチ盛り上がりを見せるママ友たち。

普段は話題が子どもの話やスーパーの特売ばかりなのに、

今日は「ブースター成分ってなに?」「ナチュラル系なのにすごいね!」と、まるでサロンの空気。


「ほんとに家で作ってるの?」と驚かれたが、

さすがに“うちの床下ダンジョンで採れた素材で”とは言えない。


「ちょっと、ハーブ農園みたいなもので……」と濁しておいた。



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✦ 家計簿とにらめっこ、そして…


その夜。

美容液の空容器が3本。反響があまりにも良すぎて、むしろ怖くなった美咲は、リビングで家計簿アプリを開く。


「……こんなに喜ばれるなら、材料費くらいは取ってもよさそうだよね……?」


現状、温泉素材は使い切れないほど採れる。

保存も効くし、乾燥させれば配送も可能。


(ネットショップ……作れる?)

(スキルに《クラフト補助》ついたら、商品開発も楽になるかも)


ノートPCのブラウザを開き、ECサイトの立ち上げ方を検索する。


「よーし、美咲ブランド立ち上げ、第一歩っ!」


小さく拳を握ってガッツポーズしたところで、真人がコップを片手に通りかかった。


「またなんか始めたの?」


「ふふふ。うちのダンジョン様様よ~」



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✦ そして、静かに始まる“成り上がり”


次の日。

美咲は新しい化粧水サンプル3種を持って、再びママ友と試作品モニター会(公園)へ。


湊斗は学校で、弁当の卵焼きがピカピカしてると騒がれた。


真人は、帰宅して風呂に入るたびにレベルが上がっているような気がしている。


――だが、それでもまだ、この家庭の快進撃は“静かに”進んでいた。



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