第15話 素材レビューと、冷やしプリンと、社内争奪戦
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翌朝――。
「陽翔くん、ネットスーパー……画面ちょっと変わってない?」
朝食後、何気なく画面を見ていた美咲が小さくつぶやいた。
「……あ、確かに。右下に“レビュー”というタブが追加されていますね」
異世界ネットスーパーに新たな機能が追加されていたのだ。
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📱【新機能解放】
《素材レビュー》
ご利用になった食材に対し、感想を記入できます。
※高評価の素材は「おすすめ食材」に昇格し、時折おまけ付きになります!
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「えっ……それって、まさかレビュー書いたら“ちょっと得”ってやつ!?」
「ふふ……異世界とて商売ですね」
陽翔は少し楽しそうに笑いながら、前日に使った「月灯チキン」の欄に、そっと書き込む。
焼いても冷めてもジューシーで、タレの香りがほんのり残る。
子どもたちが目を輝かせて食べてくれました。
“思い出の味”になったかもしれません。
レビューを書いたあと、ポンッと通知が届く。
📦【レビュー特典:星屑ハーブ×1が贈られました】
「おまけ……本当に来た……」
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その日の昼下がり――
美咲は会社で、自席に戻った瞬間に同僚たちに囲まれた。
「ねえねえ、陽翔さんの“冷やし系スイーツ”って今ありますか!? 暑くて溶けそうで……」
「なんか最近、“差し入れ担当”みたいになってるよね……奥様……」
「え、ええと……ちょうど新しい素材が届いてまして……」
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その日の夕方。
陽翔が選んだのは、“夏限定”カテゴリに追加されていたスイーツ素材。
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🛒【季節カテゴリ:夏の冷製スイーツ】
・氷月ミルク(とろける冷感牛乳)
・夢柑(ゆめかん)…香りが立つ冷果
・星寒ゼリーの素(冷やすときらきら光る)
・風露シロップ(甘すぎず、爽やか)
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「……こちらを使って、“ひんやり星空プリン”をお作りいたしましょうか」
ゼリー層とプリン層が二段になった、淡く透ける銀色の冷製デザート。
味は、ひとくち目でふわりと甘く、あとからすっと涼しさが残る。
美咲は職場に持っていくように、丁寧に詰められたミニカップを受け取りながら言った。
「……陽翔くん、いつか本当にカフェ開けるかもね」
「ええ。でもそのときは、看板に“美咲さんが最初の客”って入れておきます」
「…………惚れ直すわもう……!」
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そして翌日。
社内の休憩室では――
「きた! これが幻の“陽翔プリン2025・夏”!!」
「冷たい……のに、甘すぎない……これ、罪……」
「一口で脳が冷却される……」
「毎週届けてください!!!!!」←
結果、美咲のメールには“陽翔スイーツ希望リスト”が届き始め、
とうとう上司にまで「例の冷菓、ぜひ」と言われる始末に。
「……うちの夫が“社内冷菓王”になってる……!」
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夜、自宅。
「……たくさんの方が喜んでくださっているようで、私も嬉しいです」
「もう、なんか、“社内で最も待たれてる人物”になってるかも。顔も見えないのに!」
「それは恐れ多いですね。では、次は……」
陽翔はスマホを開き、次なる素材カテゴリを確認した。
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📱【近日解放予定】
▶️「地球×異世界:食文化交流ステージ」
▶️「出張料理依頼(個人宅・地方)」
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「……食文化交流……?」
「陽翔くん、もしかして次は……“異世界からのお客さん”が来たりして……?」
ふたりの世界は、またひとつ――静かに広がろうとしていた。
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