第2話 世界一のハンバーグと、不思議なフルーツ
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翌朝――。
「あのハンバーグ、本当にすごかったんだよって話をしたら、みんなに『お店の名前教えて!』って言われちゃって……」
仕事から帰宅した美咲は、肩の力が抜けたような柔らかい笑みを浮かべながら言った。
「そうだったんですね。……それは、少し恥ずかしいような、でも嬉しいですね」
陽翔は、エプロンの紐を結びながら、テーブルに紅茶と手作りのマドレーヌを並べていく。
美咲が座ると、ティーカップから湯気が立ちのぼる。
その香りに、ふぅっとひと息、彼女の肩がほぐれていくのが分かった。
「ねえ陽翔くん……次は、スイーツとか、作ってみたりする?」
「……ふふ、実は少し考えていたところです。少し変わった素材を見つけまして」
「変わった素材……? ふふ、なんだか楽しみかも」
お嫁ちゃんがそう言って笑うと、陽翔も自然と笑みを浮かべた。
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夜。
ひと段落ついた時間に、陽翔はソファに座り、スマホを手に取る。
『異世界ネットスーパー』のアイコンをタップすると、
相変わらず、どこかファンタジックな雰囲気のショップページが開かれた。
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🛒【スイーツ素材カテゴリ】
・虹の卵
・花蜜の砂糖(口に入れた瞬間に香りが広がる)
・月のミルク(常温で甘くとろける不思議な牛乳)
・ほろほろ果実(食べると3秒で幸せな気持ちになる)
・時のバニラビーンズ(時間を忘れる甘さ)
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「……これは、悩みますね」
ひとつひとつの素材に物語があるようで、眺めているだけでも心が踊る。
「けれど……やはり、まずは基本から」
陽翔は“花蜜の砂糖”と“月のミルク”を選び、
さらにおまけとしておすすめされた“ほろほろ果実”もカートに追加した。
「初回特典で送料がかからないのは……ありがたいですね」
注文を確定すると、またしても玄関チャイムが鳴った。
どうやら、配送時間も“魔法級”に早いらしい。
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「わ……ほんとに甘い……けど、くどくない……」
美咲は小皿に乗せられた“花蜜のミルクプリン”を一口食べて、目をまるくする。
「とろけますね……! これは、少し罪悪感すらある甘さです……」
「ふふ、それはうれしい褒め言葉ですね。よかったら、果物もどうぞ。『ほろほろ果実』というそうです」
「へぇ、変な名前……」
そう言いながら口に運んだ瞬間――
「……あ……なんか、しあわせ……」
「お、お嫁ちゃん?」
「……疲れとか、どっか行っちゃったかも……この果物、ほんとに、魔法みたい……」
小さく笑う美咲を見て、陽翔は心の中でそっと思った。
(――この素材を、もっといろんな人にも食べてほしいな)
美咲が笑ってくれた。
それが何よりの証拠だ。
“異世界ネットスーパー”が、自分の手に託された意味――
なんとなく、わかりかけてきた気がする。
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