第26話ちょっとした質問

 出来上がったクーシーのファンシーな村は見た目こそクーシー達のセンスで作られていたが、実際ベースの部分は私が持ち込んだもので作り上げられている。


 私は単純に住みやすいと思うのだが、やはり現地住民には違和感が先に立つこともあるだろうとそんな予想をしていた時もあった。


「―――いや、そうでもないな」


「やべぇぜ……。こんなうまいもの食ったことないって……」


 分厚いパテのハンバーガーと山盛りポテトを食べる研究員Aは、目新しい料理を堪能しているようにしか見えなかった。


 私はそんな彼になんとなく話しかけてみた。


「……ちなみにそれ無料じゃないからね」


「箱のボタン押したら出て来たんですけど!?」


「ちゃんと給料から引かれているんだよ」


「……給料があったことに驚きなんですけど?」


「そうかね?」


 連続でいいリアクションをする研究員Aは意外な拾い物かもしれない。


「まぁ一応だ。ここだけでしか使えないポイントだがね。足りない分は取り立てるから気をつけたまえ」


「こわー……ちょっと押しただけで食べ物が山ほど出て来たんですけど?」


「そりゃあファーストフードの自動販売機だから当たり前だよ。コーラもおすすめだから試してみてくれ」


 私は自身が料理できるわけではないが、レシピを再現する調理ロボはある。


 味にはこだわったつもりだから、気に入ったのならいくらでも食べてほしいところだった。


「コーラって……あの黒い水ですかね? ちょっと飲む勇気がなかったんですよ」


「おお、試してみたのか! どうだった?」


「え?……飲み物だか何だかわかんなかったんで、捨てちゃったんですが」


「…………やはりありがたみは必要だね。しばらく君のポイントは二倍要求することにしよう」


「なんで!?」


 何でって、食べ物を粗末にするやつはギルティである。


 ハンバーガーまで捨てていたら改造コースだったが……そこまではしていないようなので許してあげることにしよう。


 そして気配を感じて振り向いた私は、ちょうど店の一つから出て来た研究員Bを見つける。


 研究員Bは長い黒髪をいつも以上に綺麗に切りそろえられ、艶やかに手入れされているところを見ると、自動散髪機を利用したようだ。


「君も気に入ってくれたかね? きちんと相手によってケアの方法を変えてくれるはずだが」


「……ビックリするほど最高でした。私以外のお客がクーシー達しかいないので、妙な気分でしたが」


「ああ。確かにペット美容院で髪を切ってもらっているような気分にはなるかもしれないな」


「いや、まぁ……はい……」


「だが、シャンプーもコンディショナーも私特性だ。本職にも褒められたこともあるから利用するといい」


「……それは人間用の話?」


「人間用だね」


 今のところ人間は少ないが、私も利用してみたいから備えは万全である。


「それにしても、驚きです。この間まで何もなかった場所だとはとても……」


「おお、戸惑っている人もちゃんといたのか。ちょっと安心してしまうよ。いやなにいつまでも何もないと、味気ないからねぇ。これからどんどん発展させるつもりだからついてきたまえよ?」


「これ以上に!?」


 元々ささやかな街を作れるくらいの備えはしてきていたのだ。


 私個人としては発展が順調で満足していたが、研究員Bは理解しがたいと言った風だった。


「こういうのは暇な時にでも楽しんでもらえればいいよ。ところで君に2つほど聞きたいことがあるんだ、五分ほど時間を貰えるかな?」


「は、はい。なんでしょうか?」


「まず一つ目は楽しい話題からだね。期待してくれ」


 研究員Bを伴って案内したのはマイガレージである。


「実は作ってみたものがあってね。君にあげた実験機に積んでみた。使ってみて感想を聞かせてくれたまえ」


「先日頂いたロボットのことでしょうか?」


「その通り。一応魔力と思われるものは発見して、私なりに解釈してみているが、実際魔力を知る人間に使ってみてほしくてね。次にモンスターに遭遇した時にでも使ってみてくれないかね?」


「私に出来るでしょうか?」


「もちろんだとも。ああそうだ。ある程度モニタリングはさせてもらっているからその辺りは了承してもらうよ?」


「ええっとモニタリングと言うのは?」


「動かしている様子はつねに見られていると思ってくれということだよ」


「……なるほど。了解しました」


「とにかく存分に使ってくれ。壊してしまっても構わないから」


「こ、壊すですか? い、いいんですか?」


「もちろん。戦闘用だからね。弱点を知るには全力で使ってもらわないと。壊せる物なら壊してみろと言ってやりたいところだよ」


 彼女の専用機なのだ、データはできる限り取って次につなげたいところである。


 異世界初、ハイブリット素敵ロボと言える完成度に達したいが、さてどうなるものか今後が実に楽しみだった。


「……まぁそんなにうまくいくかはわからんがね」


「はぁ。よくわかりませんが、この子の力は分かっているつもりです」


「……通用したならなによりだ。私の出した無茶ぶりに君達はよく答えてくれていると思うよ」


「無茶だとは思っていたんですね……」


「不確定要素が多かった。まぁ何事も最初はあるさ」


 特に初仕事のスケルトンの上位固体を速やかにゲットしてくれたのは実に有能だった。


 今後私の魔法への理解が進めば、より活躍の場を作ってあげられもするだろう。


「まぁこれは次にサンプル採集を頼む時までに、練習してくれればうれしい」


「わかりました。頑張ります……」


 ただ語り楽しい部分を語り終えて満足してしまった私は、しかし彼女の視線がまだ自分に向けられていることに気がついた。


「……何かね?」


「あの、もう一つの頼みというのは?」


「おお! そうだった。まぁこちらはどうでもいい話なんだが……彼らは君の知り合いかね? 人間の様だから一応確認をね」


 私は手を叩く。


 するとクーシー達に連れてこられて、床に転がされたのは鎧兜で武装した5人の男達だった。

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