転校生編

第6話💬転校生

「今度このクラスに、転入生がくるぞ。」

この、先生の一言からおよそ1週間。クラス中、様々な話題が飛び交う中で、この話は特に「最近話題になるものトップ3」に入っている。

 私?私はっていうと、その日学校を休んじゃったから、聞かされたのは2日後とかだった。皆、心配の連絡くれるのは嬉しかったけど、これに関しては、もっと早くにしらせなきゃならん話でしょ。いや、嬉しいけどね?

「あっ、よるさん、おはよう…」

「あ、おはよう暮密くん。」

「風邪は…もう、大丈夫なの?」

「うん、あの雨でまさか、こんなに学校休んじゃうとは…」

 うっかりうっかり。

「あの、授業のノートとかって、どうするつもり?」

 彼のこの質問は、今の私を大いに困らせているものだった。

「あ、あぁ〜〜〜どうしよう…確かに、誰かに借りるしか…」

 考える素振りで目を泳がせていたら、彼と目が合った。その瞬間、空気が微妙になった気がしたから、彼を凝視ぎょうししていたら、それに耐えられずに彼が口を開いてくれた。

「あっ、えっと、よかったら、僕のノート…見る?」

「え、いいの!じゃあ、お願いしま〜す。」

 別に、本当にそうして貰おうとは思ってなかったけど、彼ならそうしてくれる気がした。真面目だし。優しいしね。

「キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン、キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン。」

 事実上、休んだ私の代講をしてくれた彼は、チャイムの音に促され「じゃあ」と挨拶すると自分の席に戻っていった。

「起立!気をつけ!礼!」

「「おはようございます」」

「はい、おはようございます。今日は、君たちに言っていた通り。このクラスに転入生が来ます。入って。」

先生の合図に応え、教室前方の扉が開く。踏み出された脚はとても細かった。


「はじめまして、”宮原いすぐ”です。趣味は音楽鑑賞で、特技はギターの弾き語りです。よろしくお願いします。」

 ぺこりと頭を下げる転校生・いすぐさんは、まるで私と正反対のようなおしとやかな子だった。背丈は、私と同じくらい?で、ショートカットに泣き黒子ぼくろがよく似合っている。

「席は、夏木の隣が空いているな。そこに、座ってくれ。」

私の隣の座席を指さした先生に対して、彼女はコクっとうなずくとテクテクと私の方に、正しくは、私の隣の自分の座席にやってきて、「…よろしくお願いします。」と、ヒソヒソ声で話しかけてくれた。

「え、あ、うん、よろしく」

 【仲良くなれるといいな…】この子、いい子だ!私は新たな出会いに、ワクワクが止まらなかったのだった。

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