第14話 自分自身のウェルビーイング
前回の話で名前を出した慶応義塾大学の前野隆司教授は幸福学を専門としている。
その前野教授の提言がウェルビーイングだ。
本稿のタイトルは「医療安全とウェルビーイング」だが、それより何より自分が幸せになる方法こそが読者の関心事だろう。
筆者も同様だ。
自分がどう幸せになるか、話はそこに尽きる。
さて、前野教授はウェルビーイングを実現する方法を4つ語っている。
その4つとは「挑戦」「感謝」「楽観」「受容」だ。
筆者なりの解釈を順に述べよう。
何事も実行可能な形に落とし込まなくてはならない。
まずは、何か新しい事をやってみる「挑戦」だ。
これは「スペイン語を新たに学ぶ」とか「バイオリン教室に通い始める」とか、そんな大袈裟なものでなくて良い。
初めての店でランチを摂る、くらいで十分。
美味しくて接客もOKならまた行けば良いし、それらがピンと来なければリストから外す。
こういった事も自らの成長と考えられる。
前野教授によれば挑戦の後に成長があるそうだから、ランチ店のリスト更新もウェルビーイングへの第1歩と言っていいはず。
次は「感謝」だ。
筆者はコンビニで何か買ったときも「ありがとうございます!」と明るく店員に返すように心掛けている。
この明るさが客の社会的地位と比例しているような気がするのは気のせいだろうか。
筆者も接客業だから嫌でも感じさせられる。
偉い人ほど明るく爽やかだ。
逆も然り。
偉くない人ほど不平不満が多い……気がする。
また、先日はこんな事があった。
職場の天井の蛍光灯が切れたので担当部署に連絡したのだ。
早速、脚立を持った担当者がやってきて取り替えてくれた。
やはり明るくなると気持ちいい。
「お蔭で勤労意欲がますます湧いてきました!」
そう言うと、「それは良かったです」と担当者は苦笑いしていた。
感謝しながらもギャグを飛ばす。
これこそウェルビーイングの究極の姿かもしれない。
さらに、ウェルビーイング実現への3つ目の方法「楽観」について語ろう。
どんな事でも悲観的になりすぎると何故か結果が良くない。
そして悲観的な自分は楽しいとは言えない状態だ。
だから楽観的に考えようじゃないか。
身内に引き籠り中年男がいる?
でも、犯罪者でもなければ大借金を抱えているわけでもないんだろう。
だったらいいじゃないか。
人として最低限のラインは守れているよ。
楽観的に考えよう!
筆者の職場は病院だ。
だから人の生死にかかわる事は日常的に起こっている。
目の前の患者が死にそうだ?
でも、自分が死ぬわけじゃないんだろう。
だったら落ち着いて処置をしようぜ。
これは医学生時代に救急科の教授から直接聞いたセリフだ。
今になって、教授の言った通りだと思う。
もちろん「自分が死ぬわけじゃない」などと患者・家族の前で言ったりしたら大変な事になる。
心の中でそっと自分に言い聞かせるだけにしておこう。
最後の「受容」については次回に述べよう。
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