第8話 雑誌記者の憶測。
雑誌記者の宮下雪也は、南梨能学園の前に立った。
梨能宏哉に関することは、短大で2種教員免許を得て故郷に戻った。それ以外何も情報は出てこなかった。
三十年前、いや三十六年前のことを覚えている同級生は少なかった。大学卒業以来、梨能宏哉との交流はなかったとのことだ。
『子供好きだったな。』
『早く教員になりたかったから短大にした、言ってたような。』
『故郷で、学校を開くとか。』
そう、うる覚えだ。
ただ彼が、子供好きなことだけは分かった。
梨能宏哉が、失踪した子供達を
初等部・中等部と。
梨能宏哉が、南梨能地域に戻って学園が開校された。
梨能宏哉が、あの子達の高等部の授業をしていたのか?
だが、梨能宏哉は2種教員免許しか持ってなかった。
高等部の教員にはなりえない、1種教員免許を取り直したという形跡はない。
おかしなことといえば、梨能雅哉が学園開校の為に教員免許を取るために大学に通ったことだ。
学園経営だけなら、教員免許は必要ない。
梨能雅哉は、1種教員免許を持っている。学園の理事長として、学園長として
本当に梨能雅哉が、あの子達の担任をしていたのか?
梨能宏哉がそのまま担任していたとしたら?
閉鎖された地域、権力者であり支援者である梨能家に逆らえる者がいるのか?
梨能宏哉が、あの失踪事件に関わっているのなら。
6月に梨能宏哉は亡くなっている。
既に
梨能宏哉が、あの子達に何かをしたのか?
梨能宏哉は、六年間も子供達を導き絶対的存在になっていたはずだ。
親達の故人を思うように語られた言葉。
『年でしょうか、近頃あの子のことを思い出すんですよ。』
『ああ、生きていたらどんなに大人になっていたかを。』
梨能宏哉、彼が?
いや、いくら権力者の息子であっても子供が殺されたら少しは騒ぐはずた。
『宏坊は、わし等にとっても息子のようでしたしな。』
『ええ、あの子達も本望でしょう。』
『あの子達は、本当に宏哉坊っちゃんを大好きでしたから。』
親達に梨能宏哉に対する憎しみはない。
だとしたら……
梨能宏哉は6月に、亡くなっている。
後追い……
雑誌記者宮下は真実が知りたくて、梨能雅哉に取材をお願いした。
断られると思っていたが、了解を得て今南梨能学園の前に立っていた。
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