【南梨能学園連続失踪事件】

❄️冬は つとめて

第1話 雑誌記者の叫び。

十年前、一人の雑誌記者が記事を出した。


事件の情報募集の為だ。



ー情報募集。1994年南梨能学園集団失踪事件についてー


ー雑誌記事ー


【独占取材! あのとき南梨能市で何が起きていたのか!】


皆さんは覚えているだろうか。


1994年に発生した謎の大量連続失踪事件のことを。


南梨能学園2年B組の生徒30人が次々と前触れもなく姿を消していったという謎の怪奇現象を。


生徒達が次々と消えていく中、愛する我が子を兄弟を失った家族は、しかし、涙を流すどころか、消え去った生徒のことを最初からいなかったかのようにすっかりと忘れてしまっていたという悍ましい事件を。


あの怪奇事件から約20年の月日を経た2015年の現在もなお、消えた生徒達は帰ってくることはなく、大切な家族を失った人々の記憶にもぽっかりと大きな穴が空いたままだ。


この連載では、この未解決事件について、なぜ、どうやって生徒達は姿を消したのか、その疑問を解決するために調査していく。



それだけではない。


家族にすら忘れ去られてしまった生徒達がかつてはどのような暮らしに身をおいていたのか、何を経験し、何を夢見て生きてきたのか、そうした彼らの暮らしを知ることで事件解決の手掛かりを探っていく。



あれから十年、なんの手がかりもなく時は過ぎていた。




「教えてくれ、あの子達に何があったのか。」

十年年前、記事を出した記者はその雑誌を握りしめ思いにふける。



ー1994年にS県梨能市私立南梨能学園で発生した謎の大量連続失踪事件。ー


ー雑誌記事ー


ー2年B組の生徒30名が1人また1人と姿を消していき、彼らの家族もまた愛する我が子や兄弟の記憶を完全に失っていった。


この怪事件に関する情報と真相は30年を経た現在であっても憶測が飛び交うばかり。


真実はおろか、手掛かりすら掴めないままだ。ー


「頼む、誰か、教えてくれ。」

記者は呟く。



ーあの日、彼らに何があったのかを。


彼らは何に笑い、何に涙し、何のために生き、そして、どうして消えたのかを。


あなたの知る、彼らの辿った足取りを、どうか記してくれないか。ー


「誰も知らない、彼らの…… 」



かの事件が抜けない棘のように刺さったまま、記者は真相を知る者に願うように再び雑誌に情報提供の記事を載せた。



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