第4話
湯船に浸かりながら水面を見る。
そこに映るのはもちろん僕だ。
今やもう、人の信じ方も忘れた僕自身だ。
ゆらり。
ゆら、ゆらり。
水面が揺れる。
顔が見えなくなって最初に失ったものは、喜怒哀楽の多様さだった。
耳が良ければ、聞きたくもない人の悪口、陰口まで聞こえてしまう。
学校社会の裏の顔を知ったうえで笑うなんて、僕にはできなかった。
どんどんマイナス方向に突き進んでいく感情に歯止めをかけるために、
まずは、「嫌い」や「いやだ」といった感情がほとんど消えた。
それから、顔の皮だけで笑うのが得意になった。
どんなに面白くなくても、笑っている「ふり」だけは出来た。
いつしかそれが普通だと思われるほどに。
ゆらり、ゆらり、ゆらゆらり。
手をちょっと揺らし続けるだけで、だんだんと波は大きくなっていく。
僕がこの時間を気に入っているのは、
もしかしたら波に自分を重ね合わせているからかもしれない。
二度と戻ることない、この心の大きな傷と、大きな波を。
わかってもらえただろうか。
いわゆる僕はこういうめんどくさいタイプの人間なのである。
・・・だけど。
こんな僕だって怒ることもあるらしい。
「僕が何をしたっていうんだよ!」
怒りと困惑がブレンドされた叫び声が響く。
が、それは様々な音にかき消される。
まさかこんなことになるなんて。
僕は友達がいなくなったからって、
チンパンジーと友だちになりたかったわけじゃないのだけど。
神様はどうも、不思議なことがお好きらしい。
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