魔術師団随一の圧倒的火力で、万難を排して新作スイーツを堪能したいだけなのに、職場がポンコツ揃いなうえ世界の危機まで勃発したので、仕方なく全部まとめて瞬殺し、残業なんか回避します——定時退社の魔法使い
第30話: 地下アジト制圧とヴァロワールの狂気的計画
第30話: 地下アジト制圧とヴァロワールの狂気的計画
ケンプファーを無力化し、地下アジトを完全に制圧したクロエたちは、早速、アジト内部の探索と情報収集を開始した。
武器庫には、予想通り、大量の違法改造された武器や、禁断の古代魔道具、そして洗脳に使用されていたと思われる特殊な薬品などが保管されており、クロエはそれらを全て記録・分析した後、再利用不可能なように徹底的に破壊するよう指示した。
そして最も重要なのは、アジトの最深部にあった、結社の情報管理用と思われる大型の魔導コンピューター端末だった。
それは、クロエがこれまでに見たこともないような、古代技術と現代技術が歪に融合した異様な代物だった。
「…この端末のセキュリティシステム、
かなり高度ですね。
物理的なプロテクトもさることながら、
魔法的なトラップや自己破壊プログラムも
多重に仕掛けられているようです。
解除には少々、時間がかかるかもしれません」
クロエは、アナリティカル・レンズで端末の構造をスキャンしながら、慎重に解析を進めていた。
リリィも、地上の移動司令部から、クロエの解析作業を遠隔でサポートし、関連する可能性のある古代の暗号技術や、セキュリティシステムの脆弱性に関する情報を提供している。
数時間に及ぶクロエとリリィの連携による困難なハッキング作業の末、ついに端末の主要データバンクへのアクセスに成功した。
そして、そこに保存されていた情報は、クロエたちの想像を遥かに超える、衝撃的なものだった。
まず結社の正確な構成員リスト。そこには、王国の政治・経済・軍事の中枢に食い込んでいる、驚くほど多くの有力者の名前が含まれていた。
彼らは、ヴァロワールのカリスマ性と結社の掲げる「世界の革新」という甘言に魅せられ、あるいは弱みを握られて、組織に協力しているようだった。
次に結社の武器や資金の、世界規模での秘密の流通ルート。彼らは、複数の国家や闇組織と裏で繋がり、禁制品の密売や非合法な手段で莫大な活動資金を調達していた。
そして何よりも衝撃的だったのは、ヴァロワールが進めている最終計画の、恐るべき全貌だった。
彼がオリジンコアセクターで起動しようとしていたのは、単なる古代兵器ではなかった。
それは「レガシー・コロッサス」と呼称される、カルドニア王国建国以前の超古代文明が遺した、惑星規模での環境改変能力を持つ、戦略級の巨大自律型ゴーレムだったのである。
そう、それこそが、かつてオリジンコアセクターでその一部が暴走し、我々が辛うじて撃退したあの巨大ゴーレムの完全な姿、あるいはその上位存在であることが、データから読み取れた。
ヴァロワールの目的は、そのレガシー・コロッサスを完全制御下に置き、彼が「非効率」と判断した全ての存在——他の敵対国家、特定の思想を持つ民族、既存の社会システム、さらには彼にとって不都合な自然環境の一部(例えば特定の病気を媒介する生物や、非効率な作物が育つ土壌など)に至るまで——を、文字通り「剪定」し、彼にとって理想的で完璧に調和の取れた、「究極の効率的世界」を地上に新たに創り上げることにあるらしかった。
それは、もはや王国支配というレベルを遥かに超えた、全人類、いや、全世界の運命を左右しかねない、狂気の沙汰としか言いようのない計画だった。
「……これは……!
彼は本気で世界を『リセット』し、
自分の手で作り変えるつもりなんですか——!?
なんという壮大で、そして独善的な非効率…!」
クロエは、ディスプレイに表示された計画の概要を読みながら、戦慄に身を震わせた。
さらに解析を進める中で、ヴァロワールが、なぜこれほどまでに歪んだ「効率」に執着し、このような狂気的な計画を抱くに至ったのか、その個人的な動機の一端も垣間見えてきた。
彼はかつて、王国の非効率な政策決定や無意味な派閥抗争、そしてそれらが引き起こした悲劇的な戦争によって、自身の故郷、家族、そして未来への希望の全てを、理不尽な形で奪われたという、深い心の傷を抱えていたのだ。
その絶望と世界への復讐心、そして二度と同じ悲劇を繰り返させないためには、絶対的な力による徹底的な管理と効率化が必要だ——という歪んだ信念が、彼をこの狂気の計画へと駆り立てているようだった。
事態の恐るべきスケールと、ヴァロワールの歪んでいながらも、どこか哀しい動機。
それらを知ったクロエたちは、改めて自分たちがとてつもない相手に戦いを挑んでいるのだという事実を、痛感させられた。
シオン・アークライトもその情報を目にして
「やれやれ……
これは、僕が想像していた以上に、
根が深く、そして救いようのない狂気だね。
だが同時に、非常に興味深い研究対象でもある。
彼の言う『効率的世界』とは、
一体どんな景色なんだろうな?」
などと不謹慎な好奇心を隠そうともしなかった。
——アランは、
「……彼の過去に同情の余地がないわけではない。
だがその手段は、決して許されるものではない。
我々は、彼を止めなければならない。
どんな犠牲を払ってでも」
と静かに固い決意を口にした。
——バーンズは
「難しいことはよく分からんが、
要するに、とんでもねえ悪い奴だってことだな!
だったら、俺たちがぶっ飛ばして、
世界を救ってやればいいだけの話だ!」
と、その無駄に筋肉質な拳をブン! と突き出した。相変わらず(それが救いになるほどに)単純明快だった。
そしてクロエは。
「……彼の動機が何であれ、
その計画がどれほど壮大であれ、
私の結論は変わりません」
彼女は静かに、きっぱりと言い放った。
「ヴァロワール宰相の
その非効率極まりない計画は、
断じて容認できません。
なぜならそれは、私の完璧な定時退社と、
愛すべきアフターファイブの平和を、
根本から脅かす、最大の障害だからです」
彼女は改めて、ヴァロワール打倒への決意を固めた。個人的な理由から始まった彼女の戦いは、今や、世界の運命を左右する戦いへと、否応なく展開しようとしている。
「皆さん、聞きましたね。
我々の最終目標は、
ヴァロワール宰相と、
彼が操ろうとしているレガシー・コロッサスです。
これより我々は、
最終決戦に向けた準備フェーズに移行します。
残された時間は、
おそらくそれほど多くありません。
コロッサスが完全に起動し、
彼の狂気が世界に解き放たれる前に、
必ず、我々の手でそれを阻止しなければなりません。
……もちろん、
定時退社時間は厳守した上で、ですが」
クロエのその言葉に、仲間たちは、それぞれの思いを胸に力強く頷いた。
地下アジト制圧という中間目標は達成された。しかしそれは、より困難で、そしてより壮絶な戦いの、ほんの序章に過ぎなかったのだ——。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます