(ルーク×ミチル)「月の沙漠がキレイです」

 月が綺麗な夜は……

 眠っていた野生が目覚める……




 砂漠に浮かぶ月。邪魔するような建物がないため、月だけが際立って見える。

 そんな光景を、ミチルはため息吐いて見ていた。


「ねえ、ルークぅ。月が綺麗だね」


「ああ、そうだね」


 ルークは読みかけの本を閉じて窓の外を見る。

 月明かりに照らされたルークの姿は、月の沙漠を進んだ王子様も真っ青なほど綺麗。


「ふふ、うふふ」


「ミチル? なに?」


 ミチルの意味深な微笑みに、ルークは首を傾げていた。


「あのね、『月が綺麗ですね』って言うのはオレの世界では『愛してます』って意味なんだよぉ♡」


「そう、なの? 素敵な言葉だね」


「うふふふ!」


 素直に関心するルークの反応が新鮮でミチルは嬉しくなってしまう。

 日本ではだいぶ擦られてすっかりメジャーになってしまった言い方だからだ。


「ミチル」


「なあに?」


「月が綺麗です」


「……やだあ♡ ルーくんの方が綺麗だよぉ」


「ミチルの方がずっと綺麗、です」


 あまーい!

 甘過ぎるぅうう!


「うっふふふ!」


 ミチルは興奮で笑いが止まらない。


「……」


 しかし、突然ルークの動きが止まった。

 月をずっと見上げながら固まっている。


「ルーク?」


「わ……わ……」




 わおーん……!




 ルークが突然ワンワンボイスを!

 ここで「Meets05 優しいバーサーカー」編をお読みでない方に説明しよう。ルークはミチルに生成してもらった青いチェーンネックレスで、ミチル専用の忠犬に変身するのである!

 その見た目は蒼い毛並みが輝くワンワンなのだが……


「ふわぁ!」


 ミチルはルークの変化に目を見張る。

 ケモ耳とケモしっぽだけが生えていた。色はブラウン。ミチルのワンワンルークカラーではない。

 月を見たら生えた所を見ると、さてはオオカミの耳としっぽか。


「キャアア! 初期設定の『優しい獣人』の方のルークじゃね!?」


 ストップ! メタ発言!!




「あ、ああ……」


 ルークは己の変化に戸惑っていた。


「なんで、こんな、こと……?」


 ミチルはもっと近づいてルークの肩に触れる。


「ルーク、大丈夫? 具合悪いとかない?」


「それはない、けど……」


 ミチルを見つめるルークの視線が熱っぽい。

 翠色の瞳が、何故か今夜だけ紅くなっていた。


「ペロペロワンワンではなく、はむはむガオガオしたいです……」


 ちょっとそれ、具体的にはどうすんのぉお!?

 興奮と驚愕で今度はミチルが固まった。




「ミチル……」


 はむはむ


「ミチル……」


 ガオガオ




「ミチル、綺麗です……」


「ぷえええぇ……♡」


 今宵、オオカミの野生が目覚めました。




「ミチルのここは、もっと綺麗です……」


 全部、愛されちゃう♡

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