第13話 意外な出迎え
そんなこんなで15分後、4人は保養所に到着した。
清掃庁熱海保養所は鉄筋コンクリート造の
リゾートマンションのような外観で、築50年余り。
『星雨の
現在の感性からすると、ややレトロで古びた感じは否めないが、
庭も建物もきれいに手入れされており、見晴らしも抜群だった。
「やっと来たな、特スイさん達。ようこそ熱海へ」
意外な人物が4人を笑顔で出迎えた。
少しよれたシャツにチノパン。その上から白衣を羽織っている。
ひょろりとした体つきで白髪交じりの短髪。
歳は50代後半から60代頭といったところか。
「父さん、なんでここに?診療所は?」
彼は浄の問いに、へらりと笑って答える。
「月に何日か、保養所の医務室に勤めてんだよ。まぁアルバイトさ」
「初耳なんだけど?」
「ふふ。ビックリさせようと思ってなぁ。黙ってたんだよ」
浄は仲間達に父を紹介した。
「俺の親父。熱海市内で診療所をやってるんだ」
「はじめまして、
丁寧に頭を下げる蓮慈に、三人もそれぞれ頭を下げた。
浄の父、蓮慈…
鐵也・響司・暁は彼とは初対面だが、
なんだか初めて会った気が全くしなかった。
顔かたちはそれほど似ている訳ではないのだが、
飄々とした態度に悪戯っぽく笑う表情など、
全体的な雰囲気が皆神浄にひどく似ているからだろうか。
「おーいみんな!東京からのゲストが来たぞ~!」
蓮慈が保養所内に呼びかけると、数名のスタッフが賑やかに駆けつけた。
ほとんどが老人か中高年だっが、たった一人若く美しい女性がいた。
亜麻色の真っ直ぐなロングヘアに、ほっそりとたおやかなスタイル。
顔立ちは繊細な彫刻のようだ。質素な制服に身を包んだ彼女は
鐵也を見るなり目を見開いた。
「鐵、ちゃん…?」
名を呼ばれた鐵也も彼女をみるなり驚きを隠せなかった。
「
浄は鐵也の様子が変わった事に気づくが、知らぬ振りをして
「…運命って信じます?」などとさっそく
保養所の女性スタッフ達(ほぼ高齢者)を口説き始める。
それによって保養所のエントランスは
和やかな笑い声と歓迎ムードで満たされ、
人々の関心は鐵也と彼女から離れた。
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