メルダイン
情報とは不思議なもので、良い話も悪い話もいつの間にか広がってしまうのだった。
カインが見つけたメルダインの情報はその日のうちにムーの街に広がっていた。
拳ほどのメルダインの存在はムーの勢力図を変えてしまうほどの存在だった。街中にピリつく空気が走っている。
宿に戻ったカインとメアリーをミランダとトスカーナファミリーのドン。シスコ、トスカーナが待っていた。
二人の表情は喜び半分、戸惑い半分の複雑なものであった。
「相変わらず、お前は騒動の種だな」
ミランダはこれからのことを決めかねる用に呟いた。
「待て、待て。また俺のせいにするのか?」
カインは不満を口にした。
進んでメルダインを見つけた訳では無いが、混乱の火種を作ったことは間違いないのだから、歯切れが悪い。
「いつものこととは言え、問題を大きくするのは間違いないだろう」
「カインは悪くないわ」
メアリーの助け舟も、シスコには通じなかった。
「確かにメルダインはトスカーナファミリーに取って幸運だか、これ以上ムーに血の雨が降るのは避けたいところだ」
シスコはこれ以上ないという顔でカインを見つめた。
◇◇◇◇◇
その頃、ムーの組織のほとんどがトスカーナファミリーの手に入れたメルダインを狙い、動き出そうとしていたが、コルネ一族と恒心会が本格的に抗争の準備に入ったことを知ると、コルネ一族と恒心会、トスカーナファミリー以外は動くのを止め、結果的に三つ巴の争いになるのは間違いないようだ。
結果的にカイン達はトスカーナファミリーに力を貸す形になった。
世界の厄災と直接関係ない争いなので、メアリーは宿に残る事になった。
抗争事件にメアリーを巻き込む訳にもいかないし、メアリー本人も単純な暴力には関わりたくないというのが本音のようだ。
今回の抗争にムーの警察組織もダンマリを決め込むつもりのようである。
もともと賄賂でズブズブの警察が動くわけ無いのは皆が分かっていたことだ。
◇◇◇◇◇
そんな嵐の前の静けさの前、先ず動いたのはコルネ一族であり、ムーの戦力だけではなくカルム本国から人員の補充まで始めた。
これにはトスカーナファミリーも動揺が走った。いかに奇跡の鉱石、メルダインを巡る争いとはいえ、規模が大きすぎる。
ファミリー内でも、強硬派と穏健派に意見は分かれていた。しかし、メルダインの魅力は大きすぎ、抗争を望む意見が強くなっていた。その一因がカインとミランダ、二人の五大奇人の存在も大きかった。
そんな雰囲気にカインとミランダは眉をひそめていた。
「俺たちに何をさせる気だ?」
「全くだ。こうなるとやっぱりお前は【悪運】なんだな」
カインもこれには返す言葉が無かった。
更に嫌な情報が入ってきた。恒心会が大量の火器を準備しているらしいとの話である。この時代、火器の存在はかなり大きく、もしかしたら人員を増やしたコルネ一族よりも大きな障害になるかもしれない。
表立って立場を明かしていないが、恒心会は帝の一端であるとの噂を確信に変えていた。
◇◇◇◇◇
三つ巴のあらそいは守るトスカーナファミリーが有利に進んでいた。シスコは自らは動かず、コルネと恒心会の数の減らし合いを待てばいいはずであった。
だが事態は急展開していった。
街に緊張感が張り詰めはじめ、三日が立った。最初に動いたのは恒心会であった。恒心会の組員が大量の爆薬を持ってコルネ一族の本拠地を襲い、抗争が本格化したのだった。
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