第2話 白と赤

 それは人々の中に生まれた感情が澱のように貯まっていた物が、大きなうねりとなりそのうねりがマグマのように噴火した。


 ドルエド、それは白亜教によって導かれている、正法の国である。


 白亜教、それは大災害の前まではロシア聖教であった宗教が、大災害を境に名を替え生まれ変わったのが白亜教なのだが一番の違いは一人の教主の教えがすべてに優先されるということであった。


 十七代白亜教、教主キレモアは鎖国の厳格化を唱え、国内経済を苦しめていた。

 それでも白亜教では教主の言葉は神の言葉に等しい。そのため、表立って異を唱える者はいないのが現状であった。


 それでも人々はそんな中では生きていられるはずも無く、白亜教の幹部の中にもキレモアに対する不満を口にする者もいるほどであった。


【我の言葉は神の言葉である。我に従うのだ】


 キレモアはそうは言いながらも国中に不満が有るのは知っていたがもう止めることは出来ないのが、正直な所である。


 それは起きるべくして起きたデモであった。

 デモの波は正都まで押し寄せ、焼き討ちまで起き、白い都市が赤く染め上げられる夜、メアリーは人の流れに逆らって進んだ。

 こうなる事は、しばらく前から知ってはいたが、愛着のある生まれ故郷を捨てる事が出来ずに今日を迎えたのだった。


「お母さん、お母さんも早く」

メアリーは母に訴えかけた。

「私はしなければならないことがあるの!だから、メアリー貴女だけは行きなさい」

 これがメアリーと母の別れであった。


 ドルエドの内乱は白亜教の近衛兵軍によって鎮圧されたが、その事実が他の国々に伝えられることはなかった。


 メアリーはドルエドの貿易港から出る、貿易船に潜り込んでの密航であった。

 その船が着いたのが新帝都 帝であったのだ。

 そこで、貿易船の乗員にカジノに売られてしまったのだ。メアリーはその美貌でカジノで働くことになったのだ。

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