第5話 謎解きの時間だ!

 児童館でみんなと話し合った次の日。

 金曜日の放課後。


 ぼく――村田むらたはじめ ――は、町の図書館で、調べものに夢中だった。

 まわりには分厚い本や、昔の地図がいっぱい。テーブルやイスもあって、パソコンで調べものもできる。


 なぜ、ぼくがこの図書館にいるかって?

 それは、六年二組の神城かみしろ鷹司たかし提案ていあんで、ぼくたちは、ふたつのチームに分かれることになったからだ。


 クリスタルを取りもどす『奪還だっかんチーム』は、ナツキ、フユキ、神城、そしてシロベル。


 謎を調べる『調査チーム』は、ぼくと、うさぎさん。


――今ごろ、ナツキたちは"鳥屋敷"に向かってるころかな……


 ナツキやフユキもがんばってるけど、こういう調査や推理には、あいつらはまだ早いっていうか~、やっぱり、ぼくたちの出番だよね。


「うさぎさん、何かわかった?」

「うーん、まだだよ」


 ぼくの目の前にいるのは、うさぎさん――宇崎うざきまひろ。パソコンのキーボードをカタカタと打っている。


だけど、やっぱり心配になって――


「……あいつら、だいじょうぶかな」


 ……なんかさ、いろいろと不安なんだ。

 とくに、あのカラスたちが現れてからは。

 

「……あのカラスたち、すごくこわかったもんね」

 ぼくの心配そうな顔を見て、うさぎさんが言った。


「でも、鷹司くんが一緒なら大丈夫だよ」

「そうかな? あいつ、口ではかっこいいこと言うけど、なんか、あやしくない?」


 思っていたことが、つい口から出てしまう。


「口だけじゃなくて、見た目もかっこいいし」

 うさぎさんが、いつも通りにさらっと言った。


「うさぎさんまで、それ言う!?」


 なんだよそれ……ほんと、神城ってなんか気に食わない。

 だけど、うさぎさんはふっと笑い、


「でもね、私は見た目より、がんばってる子のほうが、好きなんだ」


 ——えっ?


 ……そうなんだ。

 そんなこと、今まで聞いたことなかった。

 うさぎさんって、アイドルの話とかもしないし、ナツキはいつも鳥の話ばっかりだし……。


「へ、へぇ〜、そうなんだ。さすが、うさぎさんだな」


 気づいたら、ちょっと声が上ずってた。


 なんだか、やる気がぐんと、わいてきた。

 ぼくは、サッと、いつものメモ帳を取り出した。


「そのメモ帳、だいぶ、分厚くなってきたね。そんなに書いてどうするの?」

 うさぎさんが興味深そうにのぞきこんでくる。


「だってさ、こうしておけば、あとで思い出すときに役立つし」


「でも、なんで紙のメモなの? スマホにもメモ機能あるのに」


「紙のほうがさ、パラパラってめくれるし、好きなとこに書きこめるし! スマホみたいに充電なくなったり、ネットつながらなくてイライラすることもないし!」


「なるほど。それがハジメのこだわりなんだね」


 さすがうさぎさん! ぼくのこと、ちゃんとわかってくれてる。


 そう思いながら、ふと前のページを見たとき、そこに書いたメモが目に入った。あー、これって、あの神城がつけてたブレスレット見たとき……あわてて書いたんだっけ。


 NGS-2022 / ID147


 『NGS-2022/ID147』……2022ってさ、西暦のこと……かな? たぶん。で、IDって……そういうの、あるよな。誰のものかって分かるように付ける……番号?


 神城は「このブレスレットはお守りなんだ」って言ってたけど、ちょっとあやしい。


そのとき——


「ハジメ、どうしたの?」


 うさぎさんがふしぎそうに聞いてきた。やばっ、ブレスレットのことは、まだナイショだ。ちゃんと調べてからじゃないと、いいかげんなやつだと思われたら困るし。


「……でもさ、今回のクリスタルのことって、謎だらけじゃん。このメモをヒントに、小説を書いたらどうかな〜って思ってるんだ」


「へぇ〜、ハジメって小説なんて書くんだ!」


「いや、今から始めるところ」


「ハジメって作文も上手だし、それ、書けたらぜったいに見せてね!」


 ちょっと照れる。でも、うれしかった。


「でも、今は、クリスタルの玉のなぞを解く方が先だね」

 そう言って、うさぎさんはまた図書館のパソコンの検索をしはじめた。

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