第9話 大量の資料の大漁

 昨日は、大漁だった。かと言って、魚を釣りに行ったわけではない。そもそも私は釣りなんてしない。魚を釣るなどという行為はしない。

 では何が、大漁なのか。確かに、大量のものを入手したけどね。

 それはなんと、60年以上前の資料。文学同人誌、ってものです。

 同じ団体名で同題の同人誌は、今でも北海道にあるみたい。しかもその本部が北広島市と来たものですけど、こちらは本場の広島市です。広島県の、ね。


 その資料は、広島市立中央図書館にありました。実は県立図書館にもあるのだけど、まずはこちらの方に。7冊あるかと思いきや、実はデータの誤りで、正確には広島県立図書館の通りで6冊でした。

 それも、私が資料請求をしたがゆえに判明したこと。

 さらに、この6冊のうちの1冊はすでに別の場所でコピーし終えていますが、他の5冊は初めてです。でもって、まずは慎重に必要な位置を確認。何だかんだで、6冊のうちの49枚、98頁分を複写申請することに。ここは前に行った広島平和記念資料館と異なり、自分でコピーせにゃならん。

 ああ、お茶くみやコピー取りが苦にならない若い女性の気が知れんわとか何とか思いながら、コピーを開始。一枚一枚、確認しながら、慎重に。慎重にするのは漏れやダブりを起こさないためだけでなく、古い資料なので破損しないようにという配慮が何より求められるものですからね。しばらくコピーしているうちに、ふと気づいたのよ、どういうわけか。

「嗚呼、これは人類の遺産を保全するための仕事なのだな」ってね。

 そらあんた、そうでしょう。

 考古学の発掘なんかもそうやない。大のいい歳の頭のいいおにいさんやおじさんに加えときにおねえさんたち(おばさんは言わんとく~苦笑汗汗)がね、土方と言われる人らと同じような作業をしているわけじゃん、暑い中、寒い中。

 あれがただの誰でもできる単純作業と言えるか?

 それと同じことを、私はしているわけよ。ただ上司のおっさんにコピーとって参れと言われてはいとってきますって話じゃ、チャンチャラないわけや。ミスしたごめん、資料が破れた御免では済まないからね。そう考えると、がぜん、緊張感も高まるし、なんか、背負っているものの大きさと重さを感じないわけにはいかなくなりました。めでたいとは、手放しでは言えないけどねぇ。


 何とか49枚のコピーを終え、今度は、新聞記事の複写に。年月特定のために一旦検索機能を使って調べ、それをメモして、さあ、マイクロフィルムを出してもらっての複写。生れてはじめて、マイクロフィルムを印刷したぜ。

 それで、合計51枚のコピーがめでたくも終了。

 領収書がいわゆる感熱紙のものだったので、紙での正式なものにしてもらおうとしたら、下の階の事務室に行ってくださいとのこと。殺風景な事務室に入って領収書を発行してもらうことに。ふと目の前を見ると、この図書館の館長室なんてものまである。図書館の館長室なんて、初めて見かけたぞ。

 その時ふと、私、思ったンです。

「嗚呼、これがプロの仕事というものか」とね。


 複写を終えて、あとは大先輩にお読みいただくためのコピーがいるので早めに確保しておかねばということで、岡山でよくお世話になるチェーン店の広島の店を探すべく、まずは岡山の店に電話。電話番号を控え、それから広島の店に連絡を取って場所を聞いたのだけど、なんかねぇ、上手いこと行かなくて、歩いて10分かからないところが20分近く、あっちに行ったりこっちに行ったり。それでようやくその店に入り込めた頃には、しっかり汗をかいていました。

 しかし、このあとはもう大丈夫。コピー機の上に先ほど図書館で複写させてもらった紙一式をバサッと置いてあとは自動でバンバンバン。49枚の印刷が完了。あっという間に終えて電子マネーで決済して、近くの電停に。ほどなく電車も来て、4駅先の電停で降りて、前にも泊まったホテルにチェックイン。

 ちょうど、14時前だったね。これで、今日の仕事は終わり。この後の風呂の気持よかったこと。その後近くで食べたカレーの美味かったこと。そして何よりひと段落した後のビールの、美味かったこと。

 だけど、カレーを食べた後ビールまでの道のりは、少しばかりきつかったね。

 ま、そこはいいとしましょう。


 大量の資料の大漁という大成果をあげて、これで安心して戻れます。

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