第三話 世界語がわからないので威圧とジェスチャーで乗り切る隊長(無能)
「――まさか、あの方々が……神々の使いだとは……!」
「雷と鉄の獣に乗り、空を裂く火を放ち、我らを救ってくれた!」
「こ、このお方がきっと“雷神ラーグ=マガトゥ”の転生体……!」
……すまん、何言ってるのか全然わからん。
「おい、坂本。あいつら、何語喋ってるんだ?」
「恐らくこの世界の公用語。文法はラテン語に近く、語彙はスラヴ系。習得には少なくとも半年必要です」
「え、坂本お前、それっぽいこと言ってるけど、全然確信ないだろ!?」
「隊長、言語についてはGoogle翻訳をどうぞ」
「……圏外なんだよバカヤロー!」
現在、俺たちはLAVの周囲を村人にぐるっと囲まれていた。
みんな、なんか神に仕える僧侶みたいな服着てるおっさんと、
鼻水たらした子ども、そして泣きそうな目の村娘が、俺たちに手を合わせて拝んでる。
どうやら、俺たちはガチで「神の使い」扱いされているようだ。
そしてその中心に立たされている俺。田中三曹
「こ……これはあれだな。うん。とりあえず、ジェスチャーで意思疎通を試みよう。まずは“敵意はない”って伝えて――」
✋(・∀・)ノ ←笑顔で手を振る
「オォォ……!」
「見よ、あれは“神聖なる五指の開示”!」
「和平のサインだ……やはり雷神だ!」
「ちょっとした手振りで神扱いされた!?」
坂本は言った。
「隊長。神になってください。現地の信仰を利用すれば、戦略的優位が得られます」
「いやだよ!? 俺、ただの陸曹だぞ!? 演技力も教養もないのに宗教の象徴とか無理!」
「安心してください。三曹が間違ったことを言っても、我々がフォローします」
「つまり俺はお飾りの神か!?」
とりあえず、森が即席でメモと筆記具を使って、
漢字とカタカナを交えた“絵解きコミュニケーション帳”を作り始めた。
流石、元・東大志望。異世界でも賢い。
一方その頃、川崎は。
「隊長、LAVに載ってたレーション(戦闘糧食)配っていいですか? 子どもが腹すかせてたんで」
「いいけどさ、レーションっ味微妙だぞ? 拒否られても泣くなよ?」
数分後――
「ウマアアアアアアアアッ!!」
「なんという濃厚な風味! 脂と塩が脳に染みるッ!」
「この茶色い塊、魔導薬か!? こんな味、食べたことがないぞ!!」
「異世界の民、レーションを絶賛!?」
しかも川崎、子どもにチョコレートを渡して懐かれていた。
「マッソー! マッソー!(筋肉!筋肉!)」と謎の愛称で呼ばれている。
……川崎、お前、異世界でも筋肉で人気取るのか。
その日の夕方、我々は“村の英雄”としてもてなされ、
わらぶき屋根の一番でかい家に通され、山盛りの異世界食を振る舞われた。
異常なまでに香辛料の効いたシチュー、謎の焼き魚、なぜかナマで出てくる肉。
……坂本、よくそれ食べられるな?
「隊長、さっきから動物たちの視線が」
「え、どこどこ?」
「屋根の上。魔物かと」
「勘弁してくれよもう!」
――こうして、異世界での一日目は幕を閉じた。
俺は神扱いされ、
有能な部下たちは地元民の心をがっちりつかみ、
異世界なのに、なぜか俺だけが文化と言語のギャップで胃痛に苦しんでいる。
でもまあ、生きてるし、飯もうまい。
いっそこのままのんびり暮らしたいなー
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