番外編『狭山の残光、未来への灯火』

@aoi4160

第一章:『邂逅(かいこう) ― 路地裏の影、狭山の風』


あらすじ:

物語は、北関東の宇都宮市の寂れた路地裏から始まります。

かつて九州で名の知れた組の組長補佐まで務めたものの、多くを語らない過去を持つ神保厚い(じんぼあつい)。 五十歳を過ぎた彼は、その風貌や立ち居振る舞いからただならぬ雰囲気を漂わせ、「狭山のガキ大将」とも呼ばれ、関東平野北部にまで影響力を持つと噂されています。

ある日、神保は宇都宮の路地裏で、薄汚れた学ランを着た反抗的な目つきの少年、葵(あおい)と出会います。年は十三か十四ほど。

神保は葵の生意気ながらも芯の強そうな眼差しに興味を引かれ、「お前、いい面構えはしてるが、まだ何か肝心なものが足りねえようだ。俺についてきたら、それが何だか、わかるかもしれねえぜ」と声をかけます。

最初は反発していた葵でしたが、神保の言葉と、今まで出会った大人たちとは違う不思議な威圧感と温かみに、心の奥底で何かを感じ取ります。

二人は古びた喫茶店に入り、神保は葵にサンドイッチと珈琲をご馳走します。 そして、「ちったあマシな戦い方ってもんを、教えてやってもいい」と、自分の名前と電話番号だけが書かれた名刺を葵に渡すのでした。

誰にも心を開かず、社会に反発してきた葵にとって、正面から自分と向き合ってくれる神保の存在は衝撃的でした。

数日間の葛藤の後、葵は意を決して神保に電話をかけます。 神保は特に驚く様子もなく、埼玉の「狭山」にある自分の家に来るよう、ぶっきらぼうながらも道順を告げるのでした。

それは、葵の心に小さな希望の光が差し込んだ瞬間でした。

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