第34話 汝強者カ?
「ふぃー美味いな。やはりこんなときは甘味に限る」
えっとぱふぇ? だったかな。苺の酸味とくりーむの甘みがよく合う....助けて大正解だったぜ。
「あの....夜宵ちゃん? あの化け物ってなんだったの?それにあの女の子も....」
「俺も詳しくは知らん、ああいう化け物が魔物って呼ばれてることとあの女が本来そういう魔物共と戦う存在ってことぐらいしかな」
言われてみれば俺、魔法少女共と結構会ってるのにこんぐらいしか知らんのな。
あいつらが持ってくるのだいたい面倒事だから関わりたくないっちゃあないんだが....暇つぶしで魔物共を狩ったりする以上避けては通れんよなぁ。
「あはは....普通は冗談で返すんだろうけどあれも見たあとじゃなにも言えないや」
「──和斗気ぃ張っとけよ。あの女の台詞からして俺かお前のところにあいつはまた来るぞ」
「その時はまた助けてくれる....よね? 」
「ははっ勿論お代は甘味でな」
何回でも襲って見やがれクソ女、返り討ちにして和斗から甘味を頂いてやるぜ。
「にしても動いたからかまだ腹が減るな....」
そうだ! 確かあれがあったな....お、あったこれこれ。
「夜宵ちゃんそういうのも食べるんだね....だいぶ辛そうだけど大丈夫? 」
持ってたレジ袋から取り出したのはあのはた迷惑魔法少女から貰った激辛ちっぷすなる菓子だ。
「へっ馬鹿言うんじゃねぇよ和斗。たかだか菓子だろうが。美味いもんには違ぇねぇだろう」
「確かにそういう好みの人達は快く食べるだろうけど....夜宵ちゃんって辛いのもいけたんだね──夜宵ちゃん....? 」
夜宵の身体からは汗が吹き出し顔は真っ赤になっていて口は引きつっていた。
「大丈夫....? 」
「はっ! な、ななななに言ってんだ和斗。なにを勘違いしてるかはしッ知らんが俺は平気だ」
悲鳴を押し殺して喋っているせいか呂律もあやふやで表情筋がピキっていて目から涙も滲んでるように見える。
「──ぷっ! あはは....あ、ごめんね」
「な、なにがそんなに愉快なんだぁ? 和斗ぉ? 」
この時はこの時だけは初めて彼女の年相応な反応が見れた気がして僕は思わず吹き出してしまった。
当の本人は必死の形相で口の中の痛みに耐えていたらしいが....ふふっ....
「おい、和斗、今笑っただろ! なんで笑った!? 」
〜〜〜
「しんどいわね....」
魔力はカツカツ魔物は沢山....常駐型の巣に逃げるんじゃなかった。
でもどうしろって言うのよ! あの魔物と戦うぐらいならまだこっちの方が勝機あった、それだけは言えた。
「ギシャアアアア! 」
「【ビーム】! 」
鹿の頭に肉塊のような団子型の魔物は私の手から放たれた光線によって悲鳴を叫んで焼け死んだ。
「ギシャ! 」
「いくら殺してもキリがない....」
魔物を倒して魔力を取り込めてもすぐに自身の魔力に転換される訳じゃない。
このままだとジリ貧だ....出口はすぐそこにある。
だけど外にはアイツがいる。
あれは勝てる勝てないの話じゃない。一方的に殺されるか弄ばれるかの最悪な二択を強制してくる運命そのものだ。
「【ビーム】」
次々と魔物が焼かれていく。
一応あいつらの縄張りの端なため本体が出てくることはない筈だ。
ここら辺の雑魚はあらかた殺した。あとは物陰で魔力を回復させて....
「ギシャアアアアアア! 」
空気を僅かに震わせるほどの断末魔が魔蝕結界内を覆い尽くした。
ここではない少し離れたところで....
「魔物の絶叫....もしかして他にも魔法少女が!? 」
協力出来るかもしれない!
そこからはがむしゃらに走った。悲鳴の音源へと向かって足を進めてやっとそれらしき人影が見えた。
「お願いします! 助けてください! 」
声を張り上げた、聴き逃せないように、でも相手からの返事はなかった。
その魔法少女はただ立っているだけでこちらには見向きもせず私に背を向けて目の前の魔物の死骸を眺めていた。
「あ、あの....! 」
荒れる呼吸を落ち着かせその魔法少女に声をかけた。だが残念ながら無視だった。
流石の私もムッときた。
人が命の危機になってるのに無視なんて酷すぎる。職業柄、魔法少女が道徳を捨てたタイプが多いのは知ってたけどあんまりじゃない....
「聞こえてるんでしょ! せめて返事ぐらい──」
その後の言葉は続けられなかった。
私はその魔法少女の肩を叩いた。なにかが落ちた。落ちちゃいけないものが落ちた。
黒くて、赤くて、ボーリング玉くらいの大きさで私の足元まで転がってきたそれはその魔法少女の頭だった。
「
「う、嘘....でしょ? 」
倒れた魔物の死体の影からもう1つの人影が現れた。
なんでアイツが魔蝕結界の中に!? あの魔物も魔法少女もこいつが? せっかく逃げれたのに逃げれたのに....
「我ガ目ノ前デ逃亡ヲスルカ....ソノヨウナ軟弱者ニ生キル価値無シ。去ネ! 」
次の瞬間には視界がずれて血糊を払う人型の魔物一人がその結界内部に残った。
「我ガ運命ノ待チ人、何処デ逢エルカ....」
血生臭い匂いにつられ魔物たちがその場へと集っていった。
〜〜〜
「へっくち!」
「あらまぁ風邪かしら....夜宵ちゃん明日の学校はお休みしましょうね。学校にはあ母さんが連絡しておいてあげるから」
「め、面目ねぇ....」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
読んでいただきありがとうございます!
あの後激辛チップスは責任をもって和斗くんが預かり涙目で完食致しました。
和「思ったよりは辛くなかったです。(辛かったけど)」
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