第4話 ポリファーマシーは何故おこる

 では、ポリファーマシーは何故おこるのだろうか。

 いくつかの原因が考えられる。


 まず、高齢者は病気も愁訴しゅうそも多い。

 高血圧、高脂血症こうしけっしょうはデフォで存在する。

 それに加えて糖尿病、高尿酸血症、骨粗鬆症こつそしょうしょうの合併も少なくない。

 さらには頻尿や便秘もよく見られる。


 これだけで最低7種類の薬を必要とする。


 それに加えて、眠れない、腰が痛い、物忘れが多い、耳鳴りがする、歩くときにふらつく、などの症状は、むしろ無い人の方が少ないくらいだ。


 だから薬がどんどん増える。


 さらに医療に対するフリーアクセス。

 日本では健康保険証さえ持っていれば、どの医療機関にかかる事もできる。

 勢い、近所の内科クリニック、整形外科クリニック、そして基幹病院にも受診する患者が多い。

 内科クリニックなんか1つだけではなく複数かかる事もある。

 その事の是非は別として、処方される薬が増えるのは必然の成り行きだ。

 それぞれのクリニックや病院で「腰が痛い」といえば、各医療機関から鎮痛薬が処方される。

「鎮痛薬は〇〇クリニックで処方されているので不要です」などという患者は真面目な若者か医療関係者くらいだ。


 さらに薬好きの患者と薬嫌いの患者では、前者の方が遥かに多い気がする。

 薬好きの患者は、医療機関にかかったら薬を処方してもらわないと気が済まない。

「この眩暈めまいは自然軽快するので様子をみましょう」などと言ったりしたらガッカリされる。

 モノに対してしかお金を出したくない日本人気質の典型かもしれない。

 もっと専門的知識に対する敬意を払ってもらいたいものだ、と筆者は思う。


 薬好きの患者は減薬に抵抗する。

 主治医の異動で外来通院を引き継いだ患者の場合、既に多数の薬を処方されている事が珍しくない。

 筆者はポリファーマシーを避けるために必要最小限の薬に減らそうとする。

 が、そんな事は患者にとって暴挙に感じるらしい。

 忙しい外来診察時間で減薬の是非を論争している余裕もないので、結局は患者の言いなりになってしまうのが現実だ。


 さらに他の医療機関からも多くの薬が出ている事がある。

 本当は他院からも必要最小限の薬にしてもらいたい。

 だから高齢者のお薬手帳を確認した時に、他院からの「ロキソニン 3錠 分3」などという処方をみつけたら、思わず「マジかよ!」と言いたくなる。

 が、他医からの処方には口を出すのが難しい。

 せいぜい患者に「ロキソニンは腎臓に悪いから、もうちょっと減らした方がいいんじゃないでしょうかね。向こうの先生に相談したらいいと思いますよ」と言うくらいだろう。


 こういった諸般の事情で、ポリファーマシーは起こりやすく対処しにくいのが現実だ。

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