夢追う劇団トゥルナン「ハーフ&ハーフ5〜ターニングポイント〜」

空草 うつを

序 章~奇跡のはじまり~

『縁は異なもの味なもの』


 人の縁というものはどこでつながっているか分からないもの。

 簡単にわかる縁もあれば、それとは気づかない縁もある。


 だからそんな縁に気づいたときは、くれぐれもしっかり握って離さないこと。

 なぜならその縁という結びつきが世界を豊かにしてくれるからだ。


 たしかにこの縁というやつは一筋縄ではいかない代物だ。

 『良縁』なんて言葉もあれば、『腐れ縁』なんて言葉もある。


 幸運だとか、素敵なめぐり合わせなんかをもたらしてくれたり。

 誰かに助けられたり、逆に誰かを助けることになったり。

 はたまた厄介ごとに巻き込まれてみたり。


 まぁ、誰もがそんな不思議な縁の存在を感じたことはあると思う。


 人は一人では生きていけないもの。

 人と人のつながりが私達の世界を作り出している。


 そのつながり『縁』が私の世界に何をもたらしたのか? 


 これから書き記すのはそういう物語だ。

 それは私と四人の仲間たちの物語であり、傷ついた魂の救済と再生の物語であり、不思議な縁がつないだ奇跡のような物語になるだろう。


 さて。

 まずは事の起こりから書き始めてみようか!


🎭



『劇団員募集中!』


 そう大きく書いたポスターを、喫茶店の壁に貼らせてもらった。もちろん店主の許可を得て。


「ついに始動か。七星ななせちゃんの劇団」


 顔馴染みでもある店主は、私が貼ったポスターを感慨深げに見ていた。


『劇団トゥルナン』


 トゥルナンは、フランス語でターニングポイントという意味を持つ。そう、この劇団を始動させた今こそが、私にとってのターニングポイントになってもいる。


「でも、あの一里塚いちりづか七星ななせが、あんなに大きな劇団をやめて一から自分の劇団を作るなんてねぇ」


 店主は少しだけ心配そうに私を見ていた。

 私はもともと、日本でもわりと有名な某劇団に所属していた役者だった。その劇団にいれば将来安泰なのは間違いなかったが、私には夢があった。

 もう一度、やりたい演目がある。

 それは大きな組織にいては叶う事が難しいものだったから、思い切って飛び出してみた。


 その為にまずやるべきは、人集めだ。

 声をかける役者やスタッフの目処は立っている。自慢ではないが、人を見る目はある方だ。

 こうして、私の団員集めの日々が始まった。

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