第13話 光と闇
数ヶ月後、ドナルド・レーガン男爵領は、驚くべき変貌を遂げていた。太郎が打ち出したさまざまな経済改革が次々と実を結び、この地域は急速な発展を遂げていたのだ。不正業者の徹底的な排除と、公正な税制、そして何よりもインダス川に架けられた新しい橋(フロッグ・ケン伯爵領から「借り受けた」ものだが、その事実は伏せられている)は、領民の生活を劇的に向上させた。
新しい橋は、物流を活性化させ、遠く離れた地域との交易を容易にした。質の高い公共サービスと、公正な商取引が保障されるという評判は瞬く間に広がり、周辺地域はもちろん、遠く離れた他国からの住民までもが、このドナルド・レーガン男爵領に移り住んできた。
人口の増加は、さらに活発な経済活動を生み出した。移り住んだ住民を見込んだ商人たちが続々と集まり、市場は賑わい、新たな商店が次々と開店した。彼らの活発な取引は、領地内の富を循環させ、それがさらなる富を生むという好循環を生み出していた。まさに、太郎が目指した経済活性化の理想が、現実のものとなっていた。
しかし、そのまばゆいばかりの繁栄の裏では、それを妬む者たちの間で、不穏な動きが活発になっていた。
妬みと陰謀の派閥
その中心にいたのは、やはりフロッグ・ケン伯爵だった。彼の領地では、太郎によって橋が突然消失したことで、経済活動が停滞し、領民の不満が高まっていた。かつての栄光を失い、焦燥に駆られていたフロッグ・ケン伯爵は、ドナルド・レーガン男爵領の急速な発展を、憎々しげに見つめていた。
フロッグ・ケン伯爵の邸宅に集まっていたのは、彼に与する主要な貴族たちだった。
「くそ……あのドナルド・レーガン男爵め!このままでは、我がフロッグ・ケン伯爵領の権威は地に落ちる一方だ!」
フロッグ・ケン伯爵は、苛立ちを隠せない様子で机を叩いた。
「なんとかせねばなりません。あの男爵領の富は、もはや我々の想像を遥かに超えています」
痩身のピグミー子爵が、顔色を悪くして言った。彼もまた、自身の領地がドナルド・レーガン男爵領に経済的に劣勢に立たされている現状に焦っていた。
「あの金、ほしい……。我々もあの富を奪い、挽回するのです!」
粗暴な印象のアチラ男爵が、欲望を露わにした目で言った。
「このままでは、我々の領地はどんどん衰退していくばかりだ。何としてでも、あの男爵領の勢いを止めねばならない」
陰鬱な表情のハイセン男爵が、重々しくつぶやいた。
沈黙が続く中、フロッグ・ケン伯爵派の中でもひときわ狡猾な策士として知られるフォレスティア男爵が、口を開いた。彼の顔には、冷酷な笑みが浮かんでいる。
「大義名分は、既にございます」
フォレスティア男爵の言葉に、全員の視線が集中した。
「あの男爵領のインダス川に架けられた橋は、フロッグ・ケン伯爵閣下の領地にあった橋に酷似している、という噂が広まっています」
その言葉に、フロッグ・ケン伯爵が眉をひそめた。
「まさか……。あれは我々の橋であったと確信するが、証拠があるわけではない。それに、いくら似ているからといって、それだけで宣戦布告など……」
「確実でなくてもよいのです」
フォレスティア男爵は、冷淡な声でフロッグ・ケン伯爵の言葉を遮った。
「そうか……!」
フロッグ・ケン伯爵は、フォレスティア男爵の言葉の意味を悟り、目を見開いた。
「とにかく、宣戦布告する大義名分は、何でもいいのです。あの橋の件でも、領地間の境界線が曖昧だという難癖でも、貿易における不当な競争でも、あるいは単なる『領主としての正当な怒り』でも構いません」
フォレスティア男爵は、参加者全員の顔を見回し、不敵に笑った。
「狙うは、あの富です。攻めるのです」
こうして、フロッグ・ケン伯爵を中心とした派閥の連中による、ドナルド・レーガン男爵領への侵攻計画が、静かに、しかし確実に進行し始めた。繁栄の光が強ければ強いほど、それに引き寄せられる影もまた、深く濃くなっていくのだった。
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