第4話.嫌な予感

 そして昼休みのことだった。


 「君が虎野くんか」

 

 と、お弁当を開きかけた僕に声をかけてきたのは別のクラスに居る、莉奈と仲の良い(と言ってもそんなに仲良くはない)河原崎さん。

 

 スクールカースト上位で、運動や勉強はお手の物だが、毒舌なのが玉に瑕と言われている。そんな人がクラスの違う僕の所に来るなんて、やっぱり今朝の件か?

 

 正面から見据えられて、全身の毛が逆立ったような感じがする。


 「昨日、莉奈の家に行って何をした?」

 

 来ました!予言当たり!嫌な予感だけは必中効果付いてるから。正直いらない。


 「で?何をしたのか聞いてるんだけど」

 

 こわ、ドスの効いた声で話すなよ。


 そういえば質問されてたんだった。教室の窓から見ている河原崎さんファンクラブの視線が痛いなか、僕は特に何もしていないと事実だけを述べる。しかし彼女は受け入れられないようで、


 「じゃあどうして莉奈と急に仲良くなったんだ」


 と聞いてきた。別にいいだろ。誰が誰と仲良くなったって。でも、(自称)大切な友達が知らんやつと仲良くなるのは、少し抵抗があるもんなのか?あぁ…どう返せばいいんだろう…。


 『いっそ思い切りぶつかってやれよ』


 なるほど。確かにその方がいいかもしれない。このままもやもやとして相手を苛つかせるより、自分の思っていることを全部相手にぶつければいい。


 「だから、莉奈とどうして仲良くなっ…」


 「人と仲良くなって何が悪い」

 

 言った。言ってしまった。1回口に出したらもう引き返せない。このまま全力で戦ってやる。


 「は?あんたみたいな陰キャが莉奈と釣り合うはずがないんだよ」


 ーそれを言うなら、お前みたいな毒舌女も莉奈に釣り合わないぜ?流石にそんなことは言えない。なぜかって、陰キャの自覚があるからだ。


 「だから、身の程を知ってね虎野くん。あんたは影で…」


 「河原崎さんに、僕の人生を決めてもらいたくはない」


 ヤバい…こんな陽キャに言い返したの初めてで失神しそう…。


 「ねぇ、自分の立場分かってる?君みたいな陰キャに人権ない…」


 「それ、差別ですよ?」


  言ってやった。言いたいことを言えるって、なんて爽やかになれるんだろう。


 「ちっ…そうだ、あんたと私で対決しない?」

 

 なんだ?対決?守護霊戦争とでも言うつもりか?そしてあんたが勝ったら莉奈と仲良くしてもいいけど、私が勝ったら金輪際莉奈には近づかないでと言うつもりか?そして最後に、ま、指示出しなんかしたことない陰キャが私に勝てるはずないんだけどねって残して校庭行くつもりか?


 「今から私と校庭で守護霊戦争をしなさい。あんたが勝ったら莉奈と仲良くしてもいいけど、私が勝ったら金輪際莉奈には近づかないで。ま、指示出しなんかしたことない陰キャが私に勝てるはずないんだけどね」


 おいぃぃぃ、ほとんど合ってるやないか!で、校庭に行って戦闘開始ですかぁ…。とりあえず弁当の卵焼きを2つ口に放り込んで、返事も聞かず校庭に駆け出した河原崎を追いかけた。


 校庭についた時には既に野次馬ができていた。河原崎の相手をするのは誰なんだろうと期待の眼差しが多かったが、僕が河原崎の向かいに立った瞬間、全ての視線が呆れに変化した。こんな陰キャがアイドルに何の用だと言わんばかりだ。


 「よく見ておきなさい!この私が、私に逆らった陰キャに正義の鉄槌を下す瞬間を!」

 そう宣言した途端、校庭は歓声に包まれた。何事かと教室にいた人達も皆校庭を向く。はぁ…こんなことになるならやめときゃ良かったと後悔してももう遅い。てか、なんでこいつのほうが好かれてんだよ。まあいいわ、勝って見返してやる!

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