ターニングポイント1942

焼肉バンタム

第1話 研究開発

架空戦記創作大会、2025 投稿作品


お題3:日本が早期に実用的な誘導兵器を投入できた第二次大戦を描く架空戦記





昭和10(1935)年、楠木重工は海軍技術研究所にある製品を持ち込んだ。


「今日お見せしたいモノなんですが…。じつわ、わが社は陸軍さんと共同して滑空爆弾と言う物を作ったんですわ。」

士官室の来客用の向かい合う椅子と挟まれたテーブル。

詰襟軍服2人と対峙する2人の背広の男。

差し出された名刺には”楠木重工業 専務”と”技術部部長”の肩書の双方、背広で太った中年だ。

「はあ…。」

うさん臭さに当惑する工兵大尉の前には机の上に並んだ模型と資料、実物の白黒写真には”軍機”の朱印の判子の上に2本線で消させている。

「で、まあ。結局モノに成らなくて陸軍さんが興味が無くなって、海軍さんに持っていって良いか尋ねたらよい返事を貰えまして。」

技官が冊子を取り中身を読み始める。

「ふーん。何故、陸軍は採用を辞めたんだ?」

呟く技官。

「独逸が似たような物を開発中…。ということで始まったんですが。はっきり言って命中率が悪かったんです。要は爆撃機より高度3000mから投下して15Km位滑空させる500K爆弾付けたグライダーで真直ぐは飛んだんですが。目標に命中させるのがとてもとても。値段も割に合わなくて…。」

「それは…。」

困惑の大尉。

「陸が使えないのは…。」

呆れて湯呑を持つ技官。

お茶に口をつける技官に語り掛ける。

「コレを改造して魚雷を付けたら海軍さんの新しい陸攻に付けられると思ったんですよ。」

「ブッ、」

お茶を吹き出す技官に驚く大尉。

楠木重工は新興の財閥、楠木商店の傘下で九州の渡部鉄工所がある。

近年の不況の中、倒産したり経営不振の企業に出資金で多くを傘下に収めたという話だ。

今の楠木重工は、水上機や発動機補器、魚雷の部品等で海軍への実績がある。

「いや…。」

受注品を精査すれば勘案できるだろうが。

「おい。」

いきなり軍機の新型陸攻の性能に突っ込んで来る楠木重工…。

新興、楠木商店は震災と大恐慌で大きくなり…。

不景気の中、米国や独逸から色々な機材を買い漁り、近年の不景気で就職難の中。

大卒を大量に採用する景気の良さと軍への売り込みの熱心さは有名だ。

売り込む商品は薬から糧秣、そして兵器だ。

しかもオカシナ兵器が多い。

「えーと、資料の付箋張ってあるページ。陸軍さんの実験で建物への攻撃法のページを見てください。」

硬直する我々に話を進める部長。

「ああ、」

「ほお。」

一通り目を通して頷く大尉と技官。

「発射から急降下で低空飛行。目標が高さ10m幅50mの建物への命中率は良いんです。」

「しかし、船は動く。」

苦言を表す大尉。

「はい、判っております。」

頷く部長。

「海の上は風も強い。」

技官の発言を待って答える営業。

「はい、理解しています。ボロメータという熱源を感知する管がございます。想定熱源はボイラーの排熱、陸軍さんでは前後左右で誘導が難しかったが、低空飛行なら左右だけでございます。」

ポンチ絵を差し出す背広。

正面に魚雷、被さる主翼上に角度違う三つのボロメータが付いており二本の胴体で後ろに開いた尾翼が付いている。

左右のボロメータで感知修正して正面が一番大きな熱源に向かう設計だ。

「目標を見失っても左右に細かく首を振り修正します。目標が移動しても追従できるはずです。」

「うーむ。」

「理屈は解った。だが未だ物はない。」

「ジャイロで真っすぐ飛ぶ航空機投下型グライダーは有るんです。コレが高額になった理由ですが。当社の主査は行けると言ってます。」

「なるほど…。」

楠木商店は不景気で倒産した会社を…。

特に解散した元鈴木商店傘下の会社を幾つか買い漁っている。

その為、変な製品を売っている。

昨今の少年工作の代名詞”クスノキ電光の鉱石ラジヲ”の広告だ。

10年前のラジヲ放送開始で大卒俸給一ヶ月分の高額だったラジヲ受信機が。

昨今、少年が本気で一年間の小遣い稼ぎをすれば買える程度にまで下がってしまった。

無論キットだが、組立説明書は漫画を取り入れており、かなり技術的な事を解り易く解説している。

尋常小学校への軍部の宣布品に”コレを使うと良い”と言う技官もいた。

「という訳で当社との共同開発で技官の派遣と試験の場所と機材のご協力をお願いします。」

頭を下げる重役。

「恐らく出来ると思いますが作ってみないと分りません。」

技官の答えに投げ槍になる大尉。

「上に掛け合ってみるが…。予算が通るか分からない。」

その答えに満面の笑みの部長。

「はい!陸軍さんの基礎予算でしたが貴重な税金を無駄に出来ません。海軍さんの新兵器にお役立て出来るのなら、我が社の冥利に尽きると言う物です。必ず帝国のお役に立てる物を作って見せます!!」

喜ぶ二人のおっさんに、技官は”胡散臭い連中だ”という印象だけ残った。





解説:尋常小学校への軍部の宣布品

戦前、陸海軍は共同で尋常小学校の男子生徒向けに補助金を出して”竹ひごゴム動力飛行機模型”を学校教材として配布していました。

理由はパイロット目指す少年を増やすため。(同じ物は戦後も駄菓子屋で買えました。)

当時の方の話でも玩具が買ってもらえない家庭で”之は教材”で許されたので凄い嬉しかった思い出だそうです。


(´・ω・`)急造のお話なので脇が甘い。

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