第7話重さこそパワー

 という訳で、冒険者になりました。晴れて冒険者ですよ。これで自由に色々と出来るよね。そんな訳で、まずは宿屋を探さないといけない訳ですね。東側で良い場所があれば良いんだけど、大部屋かなあ。稼げるかどうかの確認も必要だと思うし、宿屋の相場が解らないからな。まずは大部屋に慣れた方が良いと思う。ある程度稼げるようになってきたら、個室でもいいかもしれない。


 そんな訳で宿屋を探したわけなんだけど、……素泊まり30ギレットって安いよなあ。食事は屋台でしろって事なんだろうけど、大部屋素泊まり30ギレット。うん。安いのなんの。屋台も普通に3ギレットでお腹いっぱい食べられるし、1日100ギレットってかなり贅沢しての話だったのか。まあ、贅沢したくなる気持ちは解らないでもないんだけど。結局は体は1つしかない訳で。食べられる量も飲める量も決まっている訳で。体は消耗品と考えると、贅沢な暮らしをした方が得だという考え方も出来るんだよなあ。まあ、質素でも問題ないとは思うんだけどな。


「宿では何もする事がないし、明日の朝飯と昼食も確保しないといけないから、ストレージに食事を閉まっておかないといけないよな。こういう時に時間停止って役に立つよな。何時でも出来立てが食べられるんだし」


 食事の有無は重要だ。食事を食べないと力が出ない。それに判断能力が鈍る。食事を抜くと、お腹空いたという感情が頭を何割か占有する事になる。それではとっさの時に遅れが出る。それでは問題なのだよ。食事はケチってはいけないのだ。食べられる時に食べないと、判断が遅くなる。それは戦闘では致命的だ。合気道の試合でも、ある程度のお菓子なんかを用意しておくといいぞ。小腹が空いた程度でも、判断は遅れるからな。


 そんな訳で1泊してみて解ったこと。布団がないってかなり辛いと言う事が解った。農村でも麦わらのベッドがあったからなあ。それも無いんだから、大部屋って結構苦しい。皆雑魚寝なんだから仕方がないとはいえ、寝るスペースも限られる。……稼げるようになったら個室確定だな。大部屋での暮らしは勘弁願いたいとは思う。そんな生活はしたくない。もっと贅沢に考えても良いのかもしれないな。


 冒険者の朝は早い。日が昇る前に北門に行き、メギル鉱山へと向かうのである。だけど、そんなのはみんな同じなんだよな。大勢で移動する羽目になる。戦闘なんてこれで起きる訳も無く。ただただ歩くだけの道のりなんだよな。まあ、俺は違う訳なんだけど。


 時折落ちている大岩を回収しながら歩いては、2分程度止まって準備を整える。戦うための準備が必要なんだよ。本当はもっと時間をかけた方が良いんだろうけど、重さ的に2分間で大丈夫だとは思う。軽く1トンを超えているだろうからな。こんな大岩が降ってくるんだから、死ぬときは死ぬよな。本当に回避なんて出来るのかね? 疑問でしか無いんだが。


 そんな訳で、皆より遅い到着で、そこから狩りに向かう。狙いはメギルサーペントだ。大岩の下に居る事が多く、大岩を除ければ出てくることが多いらしいんだから、俺の目的とは合致するよな。大岩を回収しながらメギルサーペントを探す。大岩を回収して、様子を見る。居ないと解ると2分間待機だ。準備は幾らしても問題無いからな。準備は大切なんだよ。


 そんな事を繰り返していると、1体目のメギルサーペントを見つけた。大岩の陰で休んでいた個体た。そして、すぐさま攻撃を開始した。


「居た! 発射!」


ズドドーン


「死んだか? 死んでるな! よしよし、やっぱり戦えるじゃないか。魔物も物理攻撃に耐性がある訳では無いと言う事がはっきりと解ったな。……まあ、ちょっと肉なんかは無駄にした感じがあるけど、皮は使えるんじゃないか? 詳しい事は解らないけど」


 散らばった岩を回収してメギルサーペントを回収する。これが俺の戦い方だ。質量体を飛ばして戦うという方法だ。ストレージは時間停止の効果が必ず付いてくる。暖かいものはそのまま暖かいままなんだよ。つまりは、エネルギーを保存する効果があると言う事なのだ。それがどういうことなのかというと、大岩に運動エネルギーを付与すれば、それを保存できると言う事なのだよ。だから、2分間止まって準備をしていたんだよ。


 簡単である。運動エネルギーを簡単に確保するには、位置エネルギーからの変換が一番楽なんだよ。高い所から落とせば、それだけで運動エネルギーが得られる。つまりは、ストレージの出口を下に向けて、自由落下させて、それを下で回収するという作業を2分間続けていたのだ。そうすると、1トンくらいある大岩であれば、空気抵抗を考えても時速600キロくらいにはなるんだよ。単純に考えると、拳銃の早さくらいにはなるんだよな。まあ、弾は大岩なので、かなり大きいんだけど。当たれば即死するくらいの強さを誇る弾丸になる訳だな。


 ストレージの加護を貰った時点で、この効果には思い至っていた。何せ考える時間はたっぷりとあったからな。前世で考えていたことなんだよ。ストレージって時間停止があるんだろう? それってエネルギーを保存しているって事にならないかとな。熱エネルギーが保存できるのであれば、運動エネルギーだって保存できてもいいだろうと。そう考えていた。


 それを今、こうして実験している訳なんだよ。狙いは大雑把でも構わない。弾が大きいからな。これが小さい球であれば、運動エネルギーが確保できないんだよ。空気抵抗があるから、一定速度よりも早くならないんだよな。重い大岩だからこそ、ここまでの早さになるし、早さは威力に直結する。エネルギーの大きさは質量と早さの掛け算だ。しかも早さは2乗される。重ければ自由落下で早さも担保できるから、今回の様な場合だと、重ければ重いほど威力が上がると言う事になる。


 常々思っていたんだよ。転生者でストレージを使うのに、物理方面で使う人ってそんなに居ないなって。まあ、それ以上にチートを貰っていたら、そりゃあ使わなくても強いんだろうが、今回みたいにストレージだけを貰った場合、ストレージだけでも戦えるんじゃないのか? という疑問はあった訳だ。荷物持ちだけが出来る事ではない。ストレージだって十分にチート能力なんだよ。チートなら、攻撃方面にも使えるだろう? そう思っていた訳だ。


「やっぱりストレージは反則だと思う。これだけの威力がお手軽に出せるんだからな。……素材はちょっと勿体ないかもしれないけど、それなら数を持っていけばいいだけの話だからな。さて、1体は倒せたんだ。この調子でどんどんと倒してしまわないとな。狙いはメギルサーペント。メギルリザードやメギルゴートも居れば倒すけど、他の奴らが倒すだろうからな。俺はメギルサーペントを中心に狩っていけばいいだろう。それだけでもかなりの収入になるはずだ。幸先は良い方だし、この調子でどんどんと行こうか」


 物理で戦う事になるんだけど、それは問題ない。自由落下程度は中学生の理科の範囲だ。俺にだってそのくらいは理解できる。ガチの物理学者には成れないけどな。公式なんて覚えてないし、そもそも重力加速度が同じなのかどうかもよく解っていない。重力加速度は同じくらいだとは思うけどな。そうじゃないと色々と人間が違ってくるんだし。立つことも出来なくなるんじゃないのか? まあ、筋力があれば、良いのかもしれないけど。


 ある程度は地球と同じと考えれば良いんだ。そもそも2分で足りなければ3分落とせば良いだけの話。重さを早さに変換すれば良いだけの話だからな。

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