第3話今度こそ本当の賊
「エレンさん。前回の村に他に商人は居ましたか?」
「……居なかったはずだよ。馬も居るけど、最悪の事は想定しておかないといけないかもね。こっちとしては、戦力は僕を含めて4人。冒険者志望のレイウード君は戦えるのかい?」
「体術を得意としているので戦えます。先行しましょうか?」
「出来ればお願いしたいかな。こっちは商人で本職ではないし。でも、流石にこれくらいの規模の盗賊なら、加護持ちは居ないはずだよ。加護があるような連中はもっと凄い事をやらかすからね。この程度の賊なら、戦闘用の加護は持っていないはずだ」
「解りました。先行します」
さて、冒険者になる前だけど、護衛依頼のつもりで頑張ろうか。報酬はなんてまだそんな事は言えないからな。冒険者でも何でもないんだし。それに、まだ戦闘をするって決まった訳では無い。これが2日間も立ち往生しているだけの商人って可能性もあるからな。
「すみませーん。大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないんだ! 助けてくれ! 車輪が外れちまったんだ!」
「じゃあそっちに行きますね!」
後ろの幌馬車を確認。ナイフ持ちの賊を発見。そのまま幌馬車の中に入り込んで接近する。そして、一気に離脱する。中には1人だけだった。倒せたかもしれないが、安全策でいかないといけない。
「エレンさん! 賊です! 援軍をください!」
「っち! バレたか! お前らやるぞ!」
エレンさんたちが4人で走り込んでくる。こっちは幌馬車に隠れ居た1人と、車輪の所に居た賊が1人、それと草むらに伏せていたであろう賊が3人。……5対5か。本職じゃないって言っていたし、まずは数を減らさないと。殺しても良いのかが判断はつかないが、こういう時は殺しても文句は言われないはずだ。まあ、何とでもなるとは思うが。連携してくる気配は無さそうだしな。
幌馬車から出てきた賊のナイフを躱し、手首を捻りつつ、大きく投げる。そうして転がった所を股関節目掛けて思いっきり踏み抜く。こうする事で足の関節が外れる。完全に外道の技なんだけど、小手先が得意とは言ったはずだ。こう言う事も得意だったりする。だから推薦をされなかった訳なんだけど。余りにも道の精神から離れてしまっているからな。
「ぐあああ! 足が!」
「クソが! この野郎!」
殴りかかってきた勢いに任せて転ばせる。そのまま腕の関節を外してしまう。足よりも効果は薄いが、痛みで動けなくなるだろう。
「ぎゃああ! う、腕が!」
「舐めやがって小僧が!」
そして3対1。それは流石に厳しい。後ろに飛びのき、援軍と合流を優先する。これで3対5。数ではこちらが有利。そして、相手の足が止まった。……足を、止めたな? 数の不利に足が止まったか。それなら。
向こうの馬車を1台ストレージで回収し、即座に賊の頭の上から吐き出す。死角から急に馬車が降ってきたら? 当然回避も出来ないだろう。賊が馬車に押し潰される。
「「「ぎゃあああ!」」」
「よくやってくれたレイウード君! さっさと首を刎ねるよ!」
剣を持っていたエレンさんたち4人に5人の首が刎ねられた。周囲には敵は無し。こっちを見ている人間の気配は確認できなかった。まあ、ここで出てくるなんて事はしないとは思うけどな。俺なら見捨てて逃げる。
残ったのは、修理が必要だと言っていた馬車と、無傷の馬車、それに2頭の馬だった。賊の幌馬車の中には幾つかのマジックバッグがあったので、それらも立派な戦利品だ。これは臨時収入としては美味しいな。商人としても結構嬉しいんじゃないか? 無傷で馬車が1台増えたし、何よりも馬が生きて2頭手に入っているんだ。結構な金になるんじゃないかなと思う。
「いやあ、儲かったね。盗賊と鉢合わせたときはひやりとしたけど、レイウード君が思った以上に戦えたのが助かったよ」
「冒険者になるにあたって、訓練は欠かしませんでしたから」
それは本当だ。合気道にもある程度の基礎の動きがある。それらは毎日練習をしていた。前世と同じ身体じゃないんだ。入念に確認をしていたんだよ。友達を投げて遊んでいたんだ。……友達くらい居たぞ? 何故か投げられるともう一回って言われていたんだけど。何故に投げられたがるのか、よく解らなかったが。まあ、受け身の練習にはなるんだけど。
「でも、機転が凄いよね。まさかストレージで馬車を落とすなんて考えなかったよ」
「ある物は利用しないと駄目ですからね。それを忠実に守っただけですよ」
そう。これがストレージの戦闘スタイルの1つだ。簡単に言うと、物質の疑似転移が可能になる。今回みたいに質量体を一気に頭上に展開できるのだ。マジックバッグでは出来ない芸当なんだよ。ストレージにしか出来ない戦い方だ。まあ、何も無ければ、足元を崩して終わらせたんだけどな? 足元から土が無くなれば、落ちるしかない。そうやって戦う事も出来るのだよ。ストレージの戦い方は無限にあると言っても良い。それの1つが疑似転移になるんだよ。
まあ、生物は飛ばせないし、色々と制約はあるんだけどな? 割と初見殺し的な使い方が出来るので便利なのだよ。特に市街地戦には自信がある。活用できるものが沢山あるからな。まあ、家屋なんて壊したら弁償しないといけないから、壊しても良い事が前提なんだけど。
「上手い戦い方だったし、それに、普通に勝てていたと思うよ? 始めはどうやって投げたのか解らなかったからね。とにかく結果だけが見えていたから」
「まあ、そういう体術が得意なので。それで? 死体はどうするんですか?」
「こいつらのマジックバッグに放り込んで、それでガロールの衛兵に突き出して終わりかな。指名手配をされていたら、臨時のボーナスが入るんだけど、流石にここまで小さいと指名手配はされていないと思うからね。レイウード君の手柄も減っちゃうけど、それは仕方がないと諦めてね?」
「ん? 手柄? 何の話です?」
「冒険者になるんでしょ? こういう場合は商人の護衛依頼になるんだよ。後出しでも申請が出来るから、旅先で商人が助けを求めていたら、積極的に助けた方が良いんだよ。今回みたいに、盗賊の可能性があるから、気を付けないといけないんだけど」
「でも、冒険者になる前なんですけど、それでも有効なんですか?」
「有効だよ。流石に何年も前の話で、誰も証言者が居なければ問題だけど、今回は僕が証言者になるからね。商人は嘘はつかない。誤魔化すことはあるけど、嘘はついたらいけないんだよ。それが商人の信用になるからね。冒険者ギルドもそれは解っているから」
「こっちとしては、手柄になるんでしたら歓迎したいですね。護衛依頼って事で処理するんですよね?」
「そう。それと盗賊の撃破報告だね。護衛依頼は護衛するに当たって、必要な処置が生じた場合には、それ相応の対応をしなければならないんだけど、それも功績になるんだ。護衛依頼を受けて、何もなかったらそのままなんだけど、今回みたいに賊に襲われましたってなると、ちゃんと撃破したって功績になるんだよ。それも覚えておいた方がいいね」
「なるほど。ありがとうございます」
「それと、報酬に関してなんだけど、先払いで良いかな? 今回は、余り良いものを商売道具として扱ってないから、盗賊の剥ぎ取り物からになるんだけど。マジックバッグが1つと、こいつらが持っていたナイフ2つと剣が2本。それと5134ギレット。さっき数えたから間違いないよ。……結構貯め込んでいたんだね。普通は100ギレットも持っていたら多い方なんだけど」
なんだか報酬まで貰えるらしい。本当に良いんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます