第6話 決戦だ!……でも…


黒い魔法に包まれた俺達は、魔法が消えると大広間のような場所に居た。


「とうとう来てしまったか……」

澄んだ女性の声がかかる。

俺達はそちらに顔を向けた。


彼女が魔王か…魔力の強さを俺でも感じる。

長いストレートの黒髪、同じく黒の瞳。

美人さんだ。

大きめの胸に足が出ている長いドレス。

今までの魔族と違って角や尻尾は無い。


「私が造った兵器人形を倒すとは思わなかった。」

「兵器人形?」

「紫の魔法少女、と言えばわかるか?」


成る程、あの紫の魔族、正当な魔族じゃなかったのか。

人の形の相手は倒すのに少し躊躇いがあるから、人形と聞いて少しホッとしてしまう。


「また小細工を使われる前に、一撃で仕留めよう!」

魔王は立ち上がると俺達をキッと睨む。

そしてすぐに短く詠唱をすると、俺達にそれを撃ち込もうとしてる!


「みんな!変身だ!」


俺が声を掛けると、レティーシア以外のみんなが同時に変身の歌を歌う。

あ、あれ?レティーシアは歌わない…何か考えているようだ。



「白き光よ、俺に力を!」


「紅き炎よ、拳に宿れ!」


「青き水よ、私に流れ込め!」


「緑の風よ、そよいで力に!」


「大地の神よ、守りの力を!」


白い光が俺の歌に呼応して輝き、身体に力が満ちる。

普段着が光にほどけて消え、全身が白い光に包まれる。

白いフード付きローブが光から編まれるように身体を覆う。

光が足元に集まり、白いブーツへと変化して装着。

最後に白い天使の輪が頭上に発光し、変身完了。


ミアの歌声に呼応して炎が立ち上がり、身体を包む。

普段着が炎の光にほどけ、全身が赤い光に包まれる。

炎の粒子が集まり、ショートジャケットと炎スカートが編まれるように形成。

足元に炎が集まり、赤×金のブーツが装着される

髪が炎の風に揺れ、三つ編みから、高い位置のポニーテールに結い直される。

頭上に赤い光の輪が浮かび、最後にガントレットを装着して、変身完了。


エリンの歌声に呼応して、水が立ち上がり身体を包む。

服が水の光にほどけ、全身が青い光に包まれる。

水の粒子が集まり、ショートジャケットとスリットスカートが編まれるように形成。

足元に水流が集まり、青×銀のロングブーツが装着される。

髪が水の風に揺れ、透明な水滴のイヤリングが耳を飾る。

青い天使の輪が頭上に浮かび上がって、変身完了。


ベルの歌声に呼応して、、

風の粒子が集まり、全身が緑の光に包まれる。

黄緑×白のショートジャケットが纏わりつくように形成。

ショートジャケットと黄緑のフレアスカートが編まれるように形成。

足元に風が渦巻き、白×黄緑のブーツが装着される。

髪が風に揺れ、風のリボンがふわりとツインテールに結ばれる。

緑色の天使の輪が浮かび上がって、変身完了。


キャスの歌声に呼応して、砂粒が舞い上がり身体を包む。

普段着が砂の光にほどけ、全身が茶色の光に包まれる。

砂粒の光が集まり、巫女風トップスとオーバースカートが編まれるように形成。

足元に大地の力が集まり、茶×金のロングブーツが装着される。

砂粒の光が髪を包み長い髪が自然に三つ編みに編まれ、金色の土の紋章飾りが結び目に浮かぶ。

最後に茶色の天使の輪が頭上に浮かんで、変身完了



変身が終わると先程の魔王が放った巨大な魔力の塊が俺達を襲う。

みんなは咄嗟に紫の魔族の時に使った歌を歌う。


黒の魔法と俺達の輪唱がぶつかる。


「くっ…!」

魔王の攻撃を魔法で受け止めたが、衝撃を感じる。


先頭に位置する俺は、歌を歌いながら、みんなを護れるようにと願う。

すると、レティーシアが使うような白い結界が産まれ、俺達を護ってくれた。


防御を気にしないなら更に全力を出せる!

黒い魔法は俺の白の結界に弾かれるように霧散した。

そのまま押し切れば!


「これほどとは…!」

魔王が放った魔法が消えていく。


その時何故か、魔王を庇うようにレティーシアが俺達の魔法と魔王の間に入り、魔王を護るかのように両手を広げた。


「危ない、レティーシア!」

レティーシアにぶつかった俺達の魔法は、レティーシアに吸収されるように消えていった。


みんな魔力が消えて、元の姿に戻る。


レティーシアの行動にみんな動揺してる。

俺はレティーシアに駆け寄った。

「レティーシア!怪我は無いのか!?」

レティーシアの両腕を掴んで、怪我がないか確認する。

「セート…みんな御免なさい…。戦いを見ながらちょっと考えて…一つの仮説が浮かんだの。」

「仮説?」


レティーシアの言葉を待つ。

魔王も何故かレティーシアの言葉を待っているようだ。


「聖女か……聖女ともなると、魔王ですら庇うのか?」

魔王はレティーシアにそう言いながらも、戦おうとはしない。

「魔王……いえ、貴女の名前は?」

「ヴァルティア…」


ん?何か、普通に会話出来そうな?

城の人達の方が会話にならなかったんだよな。


「ヴァルティア、貴女は人間を滅ぼしたいの?」

「っ……!?好き好んでしているわけでは無い…」

ヴァルティアの本質を付いたようだ。


ヴァルティアは強い視線でレティーシアを見る。

「じゃあどうして……?」

二人の会話に俺が加わる。

「魔族を滅ぼそうとしてるのは、人間の方だろう!だから私達は、生きるために戦う!」


決意を籠めた表情で冷たく言い放つヴァルティア。


「そもそも前提が違うのよ。人間と魔族は本来越境しない。いがみ合っても居ないし、何なら仲良く出来るはずなの。」

「聖女、何故そんな事が言い切れる?」

レティーシアの言葉に、ヴァルティアもみんなも「どう言うこと?」と固まっている。

「まだ今は詳しく語れないのだけど、今は信じて欲しいの。それに黒幕もわかったわ。」

「「黒幕?」」

その場にいたレティーシア以外のみんなの声が合った。


「セート、魔王を悪く言ったのは誰?」

「あ、えーと……王様。」

「じゃあ、魔王を倒すように言ったのは?」

「お、王様……」

「最後に……魔族と人間が争ってるとセートに信じさせたのは?」

「王様!」


そう言えば俺がこの世界の仕組みを覚えさせられたのは、全て王様の言葉だった。


周囲の人がスキルをやたら重視して、レティーシアが俺のスキルを隠してくれなかったら、どう利用されてたかわからなかったんだ…。


「意図的に魔族を滅ぼそうとしたのが国王!?」

ミアは貴族だから王様に会った事もあるらしい。

信じられない、と青くなってる。


「私は勇者召喚のために捕らえられて、無理矢理召喚させられた。王様の息子の第一王子と勝手に婚約させられた。」

レティーシアは説明を続ける。

「婚約!?」

「ええ。でもそれは他ならぬ王子自身が婚約を解消してくれたので助かったわ。王様は婚約という縛りで私を利用してたの。でも王子には想い合う相手がいたから、王子と協力して王子に私を断罪してもらった。」

「確かに第一王子は良い方だね。」

ミアは第一王子を知ってるらしく、そう言い放つ。


「王子という枷が無くなった私に、王様は無理矢理魔法で私に勇者召喚させたから、儀式と私の魔力がずれたせいで、私はセートからスキルを奪うことが出来たの。」

「そんな…事が……」

エリンが呟いた。

「セートは自分の世界に帰れないの?」

思い付いたベルがレティーシアに尋ねる。

「私の知識の範囲では、帰れないと思う……」

すまなさそうな表情でレティーシアは俺を見た。

「大丈夫だって!本来の世界で俺は死んでたんだし!」

一際明るく笑みを浮かべて、レティーシアに「平気だよ」と言い向けた。


「あの…」

急に不安な顔をしてキャスが言葉を向けて来る。

みんなはキャスに注目した。

「国王はレティーシアに強制させることが出来る程の力があると言うことですよね?」

「……」

レティーシアが俯いた。

そうだ、レティーシアは物凄く強いというのがわかる。

そのレティーシアを魔力で言う事を聞かせることの出来る程の強い魔力……レティーシアの結界だって効かないということじゃないか?

それに気付いて俺達はしんとなる。


「魔族を騙したという国王を倒しに行くのなら、私も力になろう。」

ヴァルティアが申し出てくれる。


レティーシアの説明だと、闇の魔法…つまりヴァルティアの魔法は上位の魔法だと言っていた。

「レティーシアと俺達、ヴァルティアがそこに加われば、どうにか行けそうじゃないか?」

「そう……ね、きっと……」

希望が見えてきたから、レティーシアも微笑んで頷く。



「決戦だ!」とみんなで円陣を組んで「おおーっ!」と声を上げた。

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