第30話-世界を繋ぐ光、偉大なる敵の影-
巨大な意志のテレパシー――黒く、冷たく、絶対的な排除の意志。それは、かつて感じたどの怒りよりも深く、明確な敵意を持った存在の脅威だった。世界を「汚染」と断じ、純粋な光を消し去ろうとする圧倒的な力。私たちが核を浄化したことで、ついにその存在に見つかってしまったのだ。
「……あれが、真の敵の……意思……!」
私のかすれた声に、白石先生は厳しい表情で頷いた。
「間違いありません。かつて現れた黒い影、あの騎士を操っていた存在……ついに、その意志が直接、私たちに接触してきたのです」
健太は対抗結晶をしっかりと握り、周囲のエネルギーの流れを観測装置で注意深く監視している。美咲は、これまで以上に多くの麻痺胞子を準備し、いつでも戦闘態勢に入れるよう構えていた。
私は、核から流れ込む純粋で膨大なエネルギーを全身に感じながら、新たなグローブをしっかりと握りしめる。光の導き手としての私の役割――それは、この闇に立ち向かい、世界を守ること。
敵のテレパシーは絶え間なく、私の意識に響き渡る。
『……光の導き手……秩序を乱す存在……
その圧力に意識が押し潰されそうになる。しかし、核から流れ込む温かく清らかなエネルギーが、私の心を支え、この恐ろしい圧力に抗う力をくれた。
「私たちは……あなたたちの好きにはさせない!」
私は意識の中で、敵に向かって強く叫んだ。
その瞬間、核の赤い結晶が、以前よりもはるかに強烈な光を放ち始めた。エネルギーの奔流が私の体を通じて増幅され、黄金を超えた、純白の光が、闇に包まれた空間を一瞬で払拭する。
テレパシーが一瞬、途切れた。純粋な光の力に、あの強大な闇の意志でさえ、わずかに揺らいだのかもしれない。
「今です! 核のエネルギーを最大まで高めて、敵の意志に一撃を!」
白石先生の指示に従い、私は意識を限界まで集中させ、核から溢れる純粋なエネルギーを、新しいグローブを通して敵の方向へと放った。白い光の奔流が、核から一直線に、あの意志の在処へと向かっていく。
光が通過した空間には、温かく澄んだ気配が残り、黒いエネルギーの冷たい気配は完全に消え去っていた。
敵からのテレパシーは、しばらくの間、沈黙したままだった。私たちは息を潜め、敵の反応を待つ。
しかしその静寂を破って、再びテレパシーが響いてきた。先ほどよりも低く、だが絶対的に冷たい声音で。
『……光……発見……秩序を乱す存在……必ず……滅する……』
敵は、私たちの「光」を絶対的な脅威と見なし、その全力をもって私たちを滅ぼそうとしていた。
次の瞬間、周囲の空間が歪み始める。黒いエネルギーが再び増幅し、暗い影が四方から現れ始めた。かつて現れた黒い鎧の騎士に似たシルエットが複数、そして以前には見たことのない、黒い影を纏った巨大な存在が、ゆっくりと姿を現す。
「あれが……あの意志の、直の使徒……!」
白石先生の声には、深い警戒と、決して揺るがぬ覚悟が込められていた。
ついに始まった、真の戦い。
光の導き手としての私の力、科学の知識と対抗の技術、仲間たちの勇気。
そのすべてを賭けて、私は闇に立ち向かわなければならない。
私は純白の光を纏う新たなグローブを構え、目の前の敵を見据えた。
悪魔が託した温かな希望を胸に、決して退かない。この光が消えるまで、私は戦い続ける。世界を守るために。
黒い影を纏った敵は、低く、しかし圧倒的な威圧感をもって咆哮し、無数の黒いエネルギーの奔流を、私たちに向けて放ってきた。
「全員、防御!」
白石先生の叫びと共に、私たちはそれぞれの方法で防御態勢を取る。
先生は強化されたエネルギーのバリアを展開し、健太は対抗結晶を前に構え、美咲は加速の草で一気に間合いを詰め、麻痺胞子を広範囲に散布する。
私は、新しいグローブから純粋な光の奔流を放ち、黒いエネルギーと正面からぶつかり合った。光と闇が激しく衝突し、閃光と影が全方位に広がっていく。
敵の力は、想像を遥かに超えていた。黒いエネルギーの圧力は極めて強く、私たちの光を徐々に押し返してくる。意識が再び暗闇に染まりかけるが、核から流れ込む清らかなエネルギーが、それに抗う力をくれる。
「このままでは押し切られる……もっと強力な一撃を!」
白石先生の声に応じて、私は意識を極限まで集中させ、核からのエネルギーをグローブへと一点集中させた。
白い光はさらに輝きを増し、まるで太陽のような巨大な光の塊が私の拳に宿る。
「
私はその光の塊を、黒い影を纏う敵に向かって放った。
巨大な光は闇を裂き、激しく燃え上がる。
爆発が起き、辺り一帯が純粋な光で満たされる。
敵は悲鳴のような異音を上げながら、光の中に溶けていき、やがて完全にその姿を消した。
テレパシーもまた、完全に消失していた。
直の使徒を倒したことで、偉大なる意志も一時的に退いたのかもしれない。
だが、真の脅威が完全に去ったわけではない。
敵は「光を必ず滅する」と言った。戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
私たちは、第一段階の戦いを乗り越えたという安堵と、深い疲労を抱えながら、光に照らされた空間に立っていた。
核は、これまで以上に清らかに輝き、悪魔が託した温かな希望が、今も私たちの胸の中で光を灯している。
光の導き手として――
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