第32話

「っふ…うっ…」


1人で泣きながら家に帰る。


このままの顔だとお母さんにも奏にも心配されるから途中で公園に寄り、顔を洗う。



思う存分泣いて少しは落ち着きを取り戻し、先程よりは全然ましな顔になったので家に帰ると玄関に奏がいた。


「奏?なんで玄関にいるの?」


「大丈夫か…?」


奏が何をどこまで聞いているかなんて分からないけど私は大丈夫な振りをする。


「何が?私今日は疲れたからもう寝るね。」


きっと奏は私が大丈夫じゃないことは分かってるだろうけど何も言ってこなかった。













コンコン



「音、入るぞ。」


真っ暗なままベットに寝転がる私に奏が近づいて来た。


返事をしない私に話しかける。


「やっぱ無理にでも止めとけばよかったか…?


2人とも俺にとって大事だから、庇う訳じゃないけど、伊織にもきっと理由があったはず。

でも…もうあいつのことは忘れろ。」


私の頭を撫でて奏は部屋から出て行った。




これから距離を縮めていこうと思ってた。


最初は一目惚れで始まって、こんなに好きになったことなんて無かったから頑張ろうと思ってた。



何か理由があるとしても私を彼女にするつもりはないって、もう会わないってはっきり言われたから。ここまで面と向かって言われてまだ諦めずに会いにいくなんてこと私は出来ない。






「もう…会いになんていけない」




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