第2話 これって本当に面接ですか?

目の前の男は、無精ひげを生やして腕を組み、ちょっと斜め上の天井を見上げていた。


その背後では、黒い箱みたいな機械が、なにやら低い音を立てながら動いてる。……多分、何かを加工しているのだろう。


「今、忙しくってさ」


ぼそりとつぶやいた男の声に、私は思わず間の抜けた返事をしてしまう。


「はぁ、そうなんですか……」


(なにそれ!? 今すぐ来いって言ったの、そっちじゃん!)


心の中では思いきり文句を言ってるけど、口には出せない。


「社長もさ、今どこいるか分かんないんだよね。オレもさ、いきなり『面接しといて』とか言われても、困るんだけど」


天井を見ていた視線をこっちに移しながら、男はため息まじりに言った。


「面接官なんて、やったことないしさ……」


「……はぁ」


またもや、返事とも言えない声を出す私。

なんなのこの空気。面接っていうより、雑談?


恐るおそる、聞いてみた。


「あのぅ、これって……面接なんでしょうか?」


「.......オレが聞きたいよ」


男は、ちょっと笑いながら肩をすくめた。


「社長からLINEで『あんた来たら面接しといて』ってだけ送られてきてさ。なぁ、どう思う?」


(いや、こっちが聞きたいわ。)


「……まぁ、なんというか」


言葉に詰まる私を見て、彼はふと真顔になってこう言った。


「こうしてる時間、もったいないだろ? お互いにさ。あんた、これから時間ある?」


「え? あ、はい。時間は……いっぱいありますけど……」


情けない声で答えた私に、彼は作業着のポケットから名刺を取り出して渡してきた。


名刺には、社名の「アトリエ・ウイング」とだけ書かれていて、その下に『青木優作』という名前。


役職も何もない。ただ、住所と電話番号だけが載っている、シンプルな名刺。


「で、あんた名前は?」


「あ、相原美玖です」


その瞬間、私はあることに気づいて青ざめた。


(あっ……履歴書、持ってきてない!)


大学のキャリアセンターだったら、絶対注意されるやつだ。


でも、青木さんは気にするそぶりもなく、壁のハンガーを指差した。


「まぁ、そこのハンガー使って、上着脱いだらこっち来て」


「え……?」


またしてもマニュアル無視な展開に、思わず声が漏れる。


「その格好じゃ仕事できねーからさ」


(やっぱり、仕事……今からするの?)


軽く衝撃を受けながらも、私は小さく拳を握る。


(こうなったら、やるしかない……!)

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