第34話
01-03-09
「キャンピングカーを魔道具化したら日本でも便利な移動式住居じゃね?」
二月に入ろうかというある日、兵頭一家四人で夕食を摂っていると群治が唐突にそんなことを言った。
「そういうのはニーちゃんが居る時の方が建設的な話になるんじゃない?」
「群治君、物理的に説明できない有様になっていたら、車検通せないと思うよ」
「ちなみに、キャンピングトレーラーも公道を走る物だから車検が要るわ」
「キャンピング系はだめか。ってか車系がダメなんだな。じゃあやっぱり
「母音違うけどイントネーションが危なくない?」
「でも
兵頭宅は
「いやあ、まずは
「いや、今更だけどあった方がいいよ。ケースもセットなら邪魔にはならないんだし、いざという時の備えは必須だよ。備蓄食料も俺が持ってるやつと同じように補充できるようにして、魔石も……あ、自給型でミリメシセット補充したらどうなるんだろ」
夕食を終えた兵頭家の四人はそのまま食卓を囲んであれこれと非常時の備えに関して話し合っていた。
食卓上に紙が広げられ、群治によってまず真っ先に「衣食住」と「三大欲求」の二つが書き込まれている。
「住」の漢字から伸びた線の先に「
「ぐーちゃん、大事だけどそこからなの?」
「いや、
「確かに他にどうしようもないかなあ……」
「うん。群治君の言う通りだね……」
「群治――はともかく、
誰も言及していないが、仁兵衛と
「じゃ、次で」
三大欲求と称されるほど重要な一つを真っ先に切り捨てた群治の感性に
「んー……やっぱ俺が実際に使って使い勝手がわかってて問題も特にない物を優先するのが良いんかなー。魔石さえあればBB弾をアホほど作ってそれで[複製]すれば良いんだし、既にある物はそうすっか」
非常時に一家そろって迷彩服姿はちょっと人目を引きそうだが、利便性には代えられない。
「あ、パンツは流石に使いまわすのアレだし、三人分を一回魔道具化しよう」
「それは譲れないわ」
群治が言わなければ自分で言っていた玻璃緒が力強く賛同する。
「[複製]すんのは服とミリメシセットと
「衣食住」と「三大欲求」から伸びた線を追っていった群治の指が「睡眠欲」で止まる。
「ベッドとかはどうする? 新しく買うんでも、それぞれのを[複製]するのでも良いんじゃね」
「自分のをそれぞれコピーしてもらいましょうか」
「そうだね」
「うん」
群治の提案を受けた三人が視線で相談し、特に誰も意見はないので
「おっけー。……あとはニーちゃんに相談してアウトドアグッズでも一通りそろえれば良いか」
「あ、ねえ群治」
「ん?」
「保存食を増やすんじゃなくて、生鮮食品を長期保存してそれを増やしたり……できないかしら?」
「できると思うよ? ミリメシセットとは別にそういうのも用意しておく? でかい自給型作ってそれから魔力を調達するようにすれば……あ、これ日常的に使えば食費がめっちゃ浮くんじゃね」
「うーん……でも[複製]なんでしょう? 結局は同じものだから、いざという時だけの方が良いと思うわ」
「おっけー」
群治は
「うーん……流石に護身用って言っても魔動ガンはどうするかな。アレ、人を撃ってどうなるかわかんないんだよな」
「群治君、やめておこう。防犯用のさすまたくらいにしておこう」
「そうね。あからさまな武器を持つのは良くないわ」
「ぐーちゃん、銃の見た目ってだけでエアガンですらダメだと思うよ」
「それもそうか。じゃ、個室用ロッカーとか密閉容器とかは明日にでも用意するから、とりあえずはそれで各々が備えてみるってことで」
「お願いするね群治君」
「よろしくね群治」
「ぐーちゃんよろしくね」
「どーんと任せときんさい」
翌日、
三人は普段生活している家の私室や寝室よりもに広い緊急時用住居に、ちょっと言葉にし難い感情を抱くことになった。
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