第1話 想像力は知識よりも重要だ――知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。

 春の終わり、窓から差し込む陽射しが、放課後の理科室にやわらかく舞い降りていた。

 理科クラブの机に向かい、真帆はノートとにらめっこを続けている。

 明日はいよいよ科学クラブ発表会。彼女の班は「ペットボトルロケットの飛距離と水の量の関係」というテーマに挑戦していたが、計算通りの結果にならず、何度もつまずいていた。


 「うまくいかないなぁ……」

 真帆はため息をつく。いくら計算しても、公式で割り出した答えと、実際の実験結果が合わないのだ。知識は十分に学んだつもりなのに、現実は教科書通りにはいかない。


 その時、隣で片付けをしていた同じ班の綾子が、ふと声をかけてきた。

 「ねえ真帆、ロケットが一番遠くまで飛んだ時、どんな工夫したか覚えてる?」

 「あ……うん。発射台の角度を変えたり、ロケットの先っぽをテープで丸くしたり……」

 「そうだよね。教科書には“水の量”と“空気圧”しか書いてなかったけど、実際は他にもいろんなことが影響してるんじゃないかな?」


 綾子の一言で、真帆の胸に小さな火が灯った。

 「知識」に頼るだけじゃなく、自分で“何が影響しているのか”を想像し、実験することが必要なんだ。

 彼女は思い切って、班のメンバーと「もっと遠くまで飛ぶロケットを作るには?」をテーマに、自由な発想でアイデアを出し合うことにした。


 ――「もしロケットの形が鳥の翼みたいだったら?」

 ――「水の量はもっと少なくてもいいのかも?」

 ――「逆に、空気の抜ける穴を作ったら、どうなるかな?」


 真帆たちの発想は、どんどん広がっていく。

 知識が積み重ねてきた“地図”の外側へ、想像力が自由に羽ばたく瞬間だった。


 翌日、発表会の壇上に立った真帆の声は、少し震えていたけれど、目はまっすぐだった。


 「私たちは、最初は公式や知識に頼りました。でも、うまくいかないとき、自分たちの想像力を働かせてみました。すると、ロケットが飛ぶためには、もっといろんな要素が関係していることがわかったんです。」


 真帆は、実験でうまくいった時の図や写真を見せながら続ける。


 「知識には限界があります。でも、想像力は、まだ見ぬ世界や新しい可能性まで広げてくれる――私たちはそう思いました。」


 発表が終わったあと、先生がやさしく声をかけてくれた。

 「素晴らしい発表だったよ。君たちは、“知識の先”に踏み出したんだね。」


 真帆は心の中で、どこまでも広がる青空を思い描いた。

 これからどんな壁にぶつかっても、教科書や公式だけじゃなく、自分の想像力を信じて進んでいこう。

 世界はきっと、もっと広い――そんな確信が、静かに胸の中に芽生えていた。


【コラム】偉人と名言

アルベルト・アインシュタイン

「想像力は知識よりも重要だ。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。」


アインシュタインは、物理学という学問の枠を超え、想像力の大切さを何度も語りました。

「知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。」という言葉には、

既存の知識だけでは到達できない“新しい発見”や“未知の世界”が、想像力の翼の先にあるというメッセージが込められています。


私たちは、何かに行き詰まったとき、知識だけに頼りがちです。

けれど、ほんの少し視点を変え、自分だけの想像を広げてみると、

今まで見えていなかった世界や可能性が、きっとそこに広がっています。


アインシュタインのこの名言は、未来を切り開く力は、知識の外にある想像力の中にある――と、私たちにそっと教えてくれているのです。


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