第二部・第10話 神殺し、再び──記録の結末と旅人の名



 


世界せかいは、しずんでいた。


神性結晶域しんせいけっしょういき拡大かくだいし、空間くうかん崩壊ほうかい寸前すんぜん

万象ばんしょうしずまりかえるそのなかで、二つの存在そんざいかいう。


 


一方いっぽうは、かみ

記録きろくつかさどり、世界せかいしば言葉ことば支配者しはいしゃ


 


一方いっぽうは、旅人たびびと

うしない、記憶きおくうしない、それでもただけんにぎもの


 


「……ルシアス・エル・フェルディア。

 あなたがいまわたしころすのなら、

 《記録きろく》にのこされたすべての“真実しんじつ”が、ることになる」


 


セレスティアの言葉ことばは、しずかにひびいた。


 


「それでも……あなたは、そのわたしるのですか?」


 


ルシアスはこたえなかった。

そのわりに、けんたかかかげ、黒炎こくえんまとわせる。


 


言葉ことばにしなくていい。

 あのときおなじだ、ルシアス。

 “かみ正義せいぎ”をえる“人間にんげん意志いし”を、もう一度いちどせてやれ!』


 


魔剣まけんグリム》が咆哮ほうこうする。


その咆哮ほうこうこたえるように、ルシアスはした。


 


《黒翼解放・最終段階こくよくかいほう・さいしゅうだんかい

《神滅ノ断罪しんめつノだんざい


 


くろつばさ大地だいちき、

てんのぼ斬撃ざんげきが、神性しんせい構造こうぞう破壊はかいしていく。


 


セレスティアは微笑ほほえみながら、そのられた。


 


「……ああ。これが……あなたのえらんだ、みちなのですね」


 


ひかりくだけ、神性しんせい構造体こうぞうたいくずちる。

セレスティアの姿すがたもまた、かぜすなのようにうすれていった。


 


「ありがとう、ルシアス。

 あなたの記録きろくは、もうわたしにはとどかない。

 だからこそ──あなた自身じしん意志いしで、あゆんでください」


 


その最後さいご言葉ことばは、

まるで祝福しゅくふくのように、旅人たびびとつつんだ。


 



 


結晶域けっしょういき崩壊ほうかいともに、すべてはしずけさをもどした。


 


アデルが、とおくからはしる。


 


わったか……!? 本当に、あれで“かみ”を……!」


 


ルシアスはただ、グリムをもどし、そらげた。


 


「……いや。“かみ”は、これでわりじゃねぇ。

 でも、“おれ”は……もうまよわねぇよ」


 


そのかおには、たしかにみがかんでいた。


 



 


そのよる

だれもいない焚火たきびまえ


 


ルシアスは、ひとりしずかにつぶやいた。


 


「なあ、グリム。おれはさ……おもしたよ。

 全部ぜんぶ、じゃねぇけどさ。

 おれが“だれすくいたかったのか”。……だれと、きたかったのか」


 


『……ああ。おもせたなら、あとはすすむだけだな』


 


「そうだな。じゃあ、くか。……まだ、“わってねぇ”からよ」


 


──そしてたびは、ふたたはじまる。


世界せかいしずかにわりつつあり、

その変化へんか中心ちゅうしんには、もなき旅人たびびとがいた。


 


つづく

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