吸い殻の詰まった募金箱
霧ヶ原高校怪異探求部調査報告書
報告番号:第■■■号
件名:吸い殻の詰まった募金箱
調査責任者:九十九 九十九
記録担当:雨下 空鹵
■ 調査対象概要
本件は某地方都市の老朽化したショッピングモールの一角に設置された、通常とは異なる募金箱に関する調査報告である。
外観は透明なプラスチック製で、一見すると普通の募金箱のように見えるが、中身はすべてタバコの吸い殻で満たされており、硬貨は一切確認されていない。
箱の側面には手書きの文字で、「この募金は、煙になった人たちのために。」と記されている。
設置者は不明。清掃員が撤去を試みた際に“原因不明の呼吸困難”で搬送されたという記録が存在しており、それ以降、関係者は物理的な接触を避けている。
■ 現地調査結果
調査班が現地に赴いた際、問題の募金箱は依然として存在しており、周囲には人の気配もなく、まるで“誰にも認識されていない”かのような空気を纏っていた。
観察中、以下の異常が確認された:
・募金箱内の吸い殻の一部が、火のついた状態であるにもかかわらず煙も匂いも発していない。
・募金箱にカメラを向けると、ファインダー越しに微細な煙が立ち上る様子が映るが、肉眼では確認できない。
・録画映像にノイズ混じりの音声が入り、「ありがとう」という微かな声が収録された(録音機器にエラー発生後、該当ファイルが編集・削除不能に)。
■ 体験証言と異常報告
タバコの吸い殻を入れた人物(20代男性):その後、喫煙時に「味がしない」「空気を吸っているだけのような感覚」と証言。
硬貨を入れた人物(30代女性):数日後より喉に焼け焦げたような異臭を感じるようになり、原因不明の咳が続く。医療検査では異常なし。
近隣警備員の証言:深夜帯に「箱の中から誰かが咳をしているような音がする」。また、床を這う煙のようなものを一度目撃。
都市伝説研究者:吸い殻を入れた数日後、夢の中に「タールでできた人影」が出現。
■ 考察
なし。
■ 危険度評価【D】
触れることで生命に直接の危害は確認されていないが、
心理的・身体的に「喉」「呼吸」「煙」に関わる異常が連続的に報告されており、
本件の周辺に長時間留まることは潜在的な侵蝕を招く恐れがある。
特に、硬貨を投入する行為は絶対に避けるべきである。
■ 追記
昨夜、私の財布に10円玉が7枚入っていた。
硬貨からタールに類似した臭気を確認。
調査責任者に募金箱への投入を提案する。
以上。
報告日:20XX年XX月XX日
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