『【朗報】転生チートで剣も魔法も即・世界最強! 邪神も魔王もワンパン無双してたら、各国の王女騎士にエルフ王女、果ては元敵国の姫まで俺にベタ惚れでハーレム状態なんだが、どうすればいい?』
第1話目覚めは異世界、神の気まぐれと若返りの肉体
『【朗報】転生チートで剣も魔法も即・世界最強! 邪神も魔王もワンパン無双してたら、各国の王女騎士にエルフ王女、果ては元敵国の姫まで俺にベタ惚れでハーレム状態なんだが、どうすればいい?』
Gaku
エピソード1:新たなる生と覚醒
第1話目覚めは異世界、神の気まぐれと若返りの肉体
その年の秋は、ひときわ空が高く、澄み渡っていた。屋敷の庭に立つ一本の大きな銀杏が、燃えるような黄金色の葉を空に広げ、太陽の光を浴びてはらはらと金貨のように舞い散る。冷たい風が窓ガラスをカタカタと小さく揺らすたび、部屋に満ちた薪ストーブの柔らかな暖かさが、いっそう肌に心地よかった。
カイは、使い古された革張りの安楽椅子に深く身を沈め、薄く目を開けてその光景を眺めていた。九十年の歳月を刻んだ体は、もはや自らの意思で動かすことさえ億劫だったが、その心は凪いだ湖面のように穏やかだった。
チリン、と
それは、終わりが近いことを告げる優しい合図のようだった。
「じいじ、寒くない?」
傍らに寄り添っていた幼い曾孫の一人が、カイの皺だらけの手を、もみじのような両手でそっと包み込む。その小さな手の柔らかさと、子ども特有の高い体温が、まるで命そのものが流れ込んでくるかのように、じんわりとカイの枯れた体に染み渡っていく。
「ああ、大丈夫だ。暖かいよ。お前たちの顔が見られて、じいじは幸せだ」
掠れた声で、それでも精一杯の愛情を込めて囁いた。視界は白く霞み、愛らしい曾孫たちの顔立ちさえ、ぼんやりとした輪郭でしか捉えられない。だが、それで良かった。彼らが健やかに育ち、未来へと命を繋いでいく。その事実だけで、カイの心は満たされていた。
思えば、長いようで短い一生だった。戦乱の時代に生まれ、剣を取り、家族を守り、村を興し、多くの仲間と笑い、泣いた。愛する妻に先立たれた悲しみも、子や孫たちの成長を見守る喜びも、すべてが今のカイを形作る、かけがえのない記憶の断片だ。後悔がないと言えば嘘になる。もっとやれたことがあったかもしれない。違う生き方もあったかもしれない。だが、それらすべてをひっくるめて、カイは自らの人生を「天晴れ」だったと、胸を張って言えた。
最後に感じたのは、
次に目覚めるならば、それは古今東西の物語に語られる死後の世界だろうと、漠然と考えていた。裁きの門か、安息の野か。どちらにせよ、それもまた一興だ。カイは、そんなことを考えながら、深い、深い眠りへと落ちていった。
時間の感覚が完全に消え失せた、永遠とも思える静寂の後。
再び、あの鈴の音が響いた。
今度は、
ゆっくりと意識が浮上していく。水底から水面を目指す泡のように、軽やかに、どこまでも昇っていく感覚。
(……ここは……天国か、地獄か? いや、どちらにしても随分と体が軽い。まるで羽が生えたようだ)
最初に感じたのは、圧倒的な解放感だった。九十年にわたりカイを縛り付けていた重力そのものが消え失せたかのような、奇妙な浮遊感。老いという名の重い鎧を脱ぎ捨て、生まれ落ちたばかりの赤子に戻ったような、途方もない身軽さだった。
微かな戸惑いと共に目を開けると、そこは言葉を失うほどの光景が広がっていた。
純白。
上も下も、右も左も、始まりも終わりも見えない。地平線もなければ天頂もない、ただひたすらに続く、無限の白。それは目に痛いほどの白ではなく、真綿に包まれるような、あるいは上質な絹の肌触りを思わせる、柔らかく温かみのある光で満ちていた。空気はないのに息苦しさはなく、心地よい静寂がすべてを支配している。死の匂いも、生の喧騒もない。ただ、存在することだけが許されたかのような、神聖な空間だった。
そして、カイは自らの体に起きた異変に気づいた。
まず、視界が驚くほど鮮明だった。晩年は白く霞んでいた世界が、今は細部までくっきりと見える。ふと視界の端に映った自分の手を見て、カイは息を呑んだ。
そこに在ったのは、長い年月を刻んだ深い皺も、浮き出た血管も、老人特有のシミもない、若々しく血色の良い手だった。指の一本一本に力がみなぎり、しなやかな筋肉が皮膚の下で確かな存在感を主張している。まるで、熟練の職人が丹念に鍛え上げた鋼のような、力感あふれる若者の手だ。
驚きに目を見開いたまま、慌てて全身に意識を巡らせる。ゆっくりと立ち上がると、意図した以上に体が軽やかに動き、音もなく純白の空間にすっくと立った。たるんでいたはずの腹筋は硬く引き締まり、細っていた手足には、かつて武芸に明け暮れていた頃の、しなやかで強靭な筋肉が隆々と盛り上がっている。深く息を吸い込めば、肺が大きく広がり、体の隅々にまで新鮮な力が満ちていくのが分かった。
記憶の中の六十年以上も昔、二十代後半から三十代前半、心身ともに最も充実していた頃の肉体そのものに若返っていることを、カイは理解した。
「すごいな。一体どういう仕掛けだ? 若返りの秘薬でも飲まされたか、それとも質の良い夢か?」
呆気に取られて呟いた声は、自分でも驚くほどに低く、張りのある響きを持っていた。老人のそれではない、生命力に満ちた男の声だ。その声は、無限の白に吸い込まれることなく、澄んだ音色として空間に響き渡った。
すると、その問いに答えるかのように、穏やかで中性的な声が空間そのものから響いてきた。
《お目覚めですか、カイ殿。夢ではございませんよ》
その声は、耳で聞いたというより、魂に直接語りかけられたような不思議な感覚だった。温かく慈愛に満ちていながら、同時に人の理解を超えた、絶対的な存在の威厳を秘めている。
カイは声がした方向――と言っても、方向の概念があるのかどうかすら定かではないが――に目を向けた。すると、いつの間にか彼の数歩先に、淡い光をまとった人型の存在が立っていた。
それは、虹色の粒子が寄り集まって形作られたかのような、幻想的な姿だった。輪郭は常に微かに揺らめき、性別も年齢も判然としない。その光の中には、時に満天の星空が広がり、時に生命の芽吹きを思わせる緑が萌え、またある時には森羅万象の叡智を宿したかのような深遠な色が渦巻いていた。
神か、天使か、あるいは全く別の何かか。正体は分からない。だが、それが人の尺度では測れない超越的な存在であることだけは、理屈ではなく魂で感じられた。
(なるほど、神か、あるいはそれに類する何かか。最近の若い者たちが口にする「異世界転生」とやらに遭遇したのかもしれないな)
カイは元来、物事の受け入れが早い性質だった。九十年も生きていれば、常識では考えられない出来事にも幾度か遭遇してきたし、何より大抵のことには動じなくなる。目の前の超常現象に驚きはすれど、恐怖や混乱はない。むしろ、この後に何が起こるのかという、老いて久しく忘れていた好奇心がむくむくと頭をもたげていた。
内心でそう考えつつも、表面上は平静を装い、その存在に問いかける。その口調には、九十年の人生で培われた、相手の力量と意図を探るような深みがあった。
「ほう。では、この状況を説明していただけるのでしょうか。私は確かに、先ほど天寿を全うしたはずですが」
カイの問いかけに、光の存在はくすりと笑ったかのように、その虹色の粒子をきらきらと楽しげに揺らめかせた。その様は、まるで穏やかな風にそよぐ木漏れ日のようだ。
《左様。カイ殿、貴殿の地球における人生、実に天晴れなものでした。我々は、始まりから終わりまで、貴殿の歩みを見守らせていただいておりました》
その言葉と共に、カイの周囲の純白の空間に、いくつもの情景が淡い光の映像となって浮かび上がった。
若き日のカイがいた。飢饉に喘ぐ村のために、たった一人で危険な森を越え、隣国との交易路を切り開いた時の姿。無法者たちの襲撃から、一本の槍を手に村人たちを守り抜いた夜の姿。やがて領主となり、荒れ地を開墾し、水路を築き、人々が笑って暮らせる豊かな土地を築き上げた姿。愛する妻を娶り、子を育て、孫たちの成長を優しい眼差しで見守る姿。そして、多くの弟子たちに自らの技術と、人としての生きる道を説いていた賢者の姿。
それは、カイ自身でさえ忘れかけていた人生の断片だった。
《多くの徳を積み、人々を見守り、導き、そして育て上げた。その魂は、数多の感謝と尊敬の念を受け、我々の世界にさえ届くほど、強く美しい輝きを放っております。その功績と、貴殿の魂が放つ輝きに報いるため、我々はささやかなる褒美を差し上げることにしたのです》
「褒美?」
カイは浮かび上がった自らの過去の映像を、どこか懐かしむように、それでいて少し気恥ずかしげに眺めながら、オウム返しに呟いた。
《ええ。新たな世界で、新たな生を謳歌する機会を。いわば、第二の人生というものですな》
第二の人生。
その言葉は、カイの心の深い部分に、静かだが確かな波紋を広げた。カイは腕を組み、しばし考え込む。若々しい肉体の下で、九十年を生きた賢者の思考が巡る。
前の人生に悔いはない。やりきったという自負がある。愛する者たちに見守られて迎えた穏やかな最期は、望みうる限り最高の終わり方だった。だが、本当に心の底から、やり残したことは無かっただろうか。
若い頃、もっと世界の果てを見てみたかったという冒険心。未知の武術や魔法のような不可思議な力に触れてみたかったという探求心。そして何より、守るべきものを背負わず、ただ己の心の赴くままに生きてみたいという、密かな願望。老いと共に心の奥底に仕舞い込み、蓋をしていたはずの感情が、若返った肉体と呼応するように、再び熱を帯びてくる。
悪くない響きだ。いや、むしろ望外の幸運と言えるかもしれない。
しかし、とカイは思考を切り替える。うまい話には裏がある。九十年の経験則が、無条件の楽観を強く戒めていた。
「それはありがたい申し出だ。しかし、何か裏があるのではないか? 物語でよくあるように、例えば世界を脅かす魔王を倒せとか、邪神を封印しろとか、そういう厄介な使命がついて回るのでは?」
老獪とも言えるカイの問いに、光の存在は再び楽しそうに、虹色の光を一層強くまたたかせた。その反応からは、警戒や不快感ではなく、カイの慎重さを好ましく思っている気配が感じられた。
《ふふ、ご心配なく。実にカイ殿らしい、賢明なご質問です。ですが、我々は貴殿に何かを強制するつもりは毛頭ございません。先程も申し上げた通り、これは褒美なのですから。特別な使命はございません。貴殿が望むように、自由に生きなされ》
光の存在は、そこで一度言葉を切り、その光の揺らめきが少しばかり複雑な色合いを帯びた。
《ただ、我々の手違い…いえ、少々の計算違いと、貴殿の魂の強靭さが相まって、新たな肉体と魂の適合が、我々の想定を遥かに超え、完璧すぎたのです》
「完璧すぎた?」
《ええ。貴殿の魂は、例えるなら純度の高すぎるオリハルコンの原石のようなもの。我々が用意した新たな世界の『常識』という鋳型に流し込むには、あまりに強靭で規格が大きすぎた。結果として、鋳型の方が貴殿の魂の形に合わせて変質してしまったのです》
その説明は、カイにとっても少々飲み込みがたいものだった。光の存在は、カイの戸惑いを察したように言葉を続ける。
《結果として、貴殿は転生先の新たな世界の基準からすれば、かなり突出した力を持つことになりました。世界の理そのものに愛された、一種の才能の塊とでも申しましょうか。剣を握れば、その日のうちに剣聖の域に達し、魔法の理論を学べば、たちまち大賢者を凌ぐでしょう。貴殿の魂が『そう在りたい』と望めば、世界の方が貴殿の望みを叶えるために法則を捻じ曲げる。それほどのポテンシャルを、貴殿は秘めているのです》
「ほう、強力な力、か…」
カイの口の端が、わずかに吊り上がった。それは老賢者の笑みではなく、強敵を前にした武人の、あるいは未知の玩具を与えられた少年の、獰猛で純粋な笑みだった。
戦いは嫌いではない。むしろ若い頃は様々な武道に明け暮れ、その道を極めようと研鑽を積んだ。それなりに名を馳せた経験もある。だからこそ、力の使い方や制御の難しさ、そして何より、力がもたらす興奮とそれが孕む危険性を、カイは骨身に染みて理解していた。前の人生では、その力を常に誰かのために、守るために使ってきた。だが、今度は――。
《その力を良きに使うも、己の楽しみのために使うも、すべてはカイ殿の自由です。森の奥で静かに暮らすもよし、前世のように国を興すもよし、あるいは世界の誰も見たことのない絶景を探す冒険者となるもよし。我々はただ、貴殿の新たな人生が、実り多く、そして何より貴殿自身にとって楽しいものであることを願うばかりです》
その言葉は、カイの心に残っていた最後の躊躇を吹き飛ばした。
「それは気楽でいい。前の人生では、自分のことより他人のことばかり考えてきたからな」
カイは肩をすくめ、若々しい肉体に満ちる力を確かめるように、ぐっと拳を握りしめた。家族のため、領民のため、弟子のために生きた九十年。それは誇り高く、満ち足りた人生だった。だが、今、目の前に提示されているのは、全く違う生き方の可能性だ。
「今度は少し、自分の欲望に忠実に生きてみるのも一興かもしれん」
心の底から、遠い昔に忘れた少年時代のような、純粋な高揚感がマグマのように湧き上がってきた。
新しい世界。新しい肉体。そして、世界の理さえ捻じ曲げる規格外の力。
これほど面白い舞台が用意されて、ただ安穏と過ごすという選択肢は、カイの中にはもはや存在しなかった。この力を試してみたい。この体でどこまで行けるのか、この世界で何ができるのか、自分の目で確かめてみたい。
「よし、決めた!」
カイは顔を上げ、その瞳に決意の光を宿して快活に宣言した。
「その話、乗らせてもらおう!」
カイの力強い宣言に、光の存在は満足そうに、これまでで最も大きく温かい光を放って頷いた。純白の空間全体が、祝福の輝きに満たされる。
《賢明なるご判断です。では、カイ殿。新たな旅立ちの準備を》
光の存在がそう告げると、カイの足元が水面のように静かに揺らぎ始めた。純白の世界に、少しずつ異なる色彩が混じり合っていく。
《貴殿がこれから赴く世界は、剣と魔法、そして神々の息吹が未だ色濃く残る世界。多様な種族が共存し、未知なる魔物が闊歩し、古代の遺跡が人知れず眠っています。貴殿の探求心をくすぐるには、申し分のない舞台でしょう》
その言葉と共に、カイの脳裏に断片的だが鮮烈なイメージが流れ込んできた。
天を衝くほど巨大な世界樹の枝葉が空を覆う、壮大なエルフの森。溶岩が川のように流れる地下深くに築かれた、ドワーフたちの荘厳な鍛冶都市。草原を風のように駆け抜ける、誇り高き獣人たちの集落。そして、活気に満ちた市場で、様々な種族が笑い、語らい、酒を酌み交わす人間の街。
鬱蒼とした森の奥深くで月光を浴びて咆哮する巨大な狼。空を悠々と舞う、宝石のような鱗を持つドラゴン。見たこともない景色、出会ったことのない人々、そして胸を躍らせる冒険の予感。
《貴殿の新たな人生に、我々の祝福があらんことを。良き異世界ライフを!》
光の存在の最後の言葉が、魂に優しく響き渡る。それを最後に、カイの意識は再び柔らかな光の奔流に包まれた。しかし、今度は死の時のような闇への落下ではない。未来へと向かう、心地よい浮遊感だった。
全身が分解され、光の粒子となって新しい世界へと再構築されていくような、不思議な感覚。過去の人生の記憶が、走馬灯のように、しかし今度は温かい感謝の念と共に駆け巡る。そして、それらの記憶が遠ざかるにつれて、新しい世界の感覚が五感を満たしていった。
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