第12話 エピローグ(前編)

 あれから、2年半が経った。俺は社会人2年目のクリスマス。仕事を早めに終えて、パーティー会場に急いだ。もうみんなは来ているだろう。俺が借りたホテルの小さな会場の扉を開けた。


「あ、萩原っち、やっと来た!」


「おせーぞ、幹事」


 美柑と相良が言う。


「悪い悪い、これでも急いで来たんだ」


「忙しいんだね、社会人」


「ちょっとシステムがトラブって。でも、道筋はつけたから後は部下に任せたよ」


「部下!? お前、部下居るのか。2年目で、まだ22歳だろ」


 相良が驚いて言う。


「まあな。俺は優秀だったらしい。今は4人部下がいる」


「出世しそうだな」


「ミッチー、それぐらいにしてよ、有佐が待ちくたびれてる!」


 美柑が相良に文句を言った。


「いつも一緒に居るからいいだろうが、まったく……さあ行け」


 相良が俺の背中を叩いた。俺は有佐の隣の席に座る。


「ごめん、遅れて」


「いいけど、ちょっとは連絡ちょうだいよね」


 有佐が少し不満そうに言った。


「すまん、急ぐことを優先してしまって……」


「お前、有佐を大事にしろよ」


 隣から植田が言う。


「ああ、わかってるよ」


「ほんとだろうな」


「当たり前だよ。俺にとって有佐が一番大事だから」


「早速、のろけか。まったく……」


「いいだろ……奈保美は?」


「ちゃんと遅れるって連絡してきたぞ」


「そうか」


 そのとき、扉が開いた。


「ごめん! 車が混んでて。熊本の渋滞はほんとにひどいわ」


 麦島奈保美が入ってきた。


「今日の主役がやっと登場か」


 植田が言う。


「私が主役なの?」


 奈保美がそう言いながら有佐の横に座った。植田が言う。


「だって送別会みたいなもんだろ。もうあと何回会えるか分からないし」


「東京行ったって、毎年帰ってくるわよ。実家はあるんだし。お盆と正月には会ってよね」


「寂しくなるな」


 俺は言った。奈保美は東京への就職を決めていた。2月には引っ越すそうだ。


「今だって政志とは年に数回しか会ってないでしょ」


 奈保美が言う。あれから、奈保美は政志と呼ぶようになった。


「そうだっけ?」


「そうよ。みんなで会うときだけなんだから。二人では会えないし」


 奈保美がふてくされたように言う。


「奈保美も納得してのことだろ」


「そうだけど……ああ、もういいや。今日は飲もう!」


「奈保美、車で来たんじゃ無いのか?」


「代行使うし」


「はぁ。まあ、今日は飲むか」


「うん!」


 奈保美は笑顔だった。それを見る有佐も笑顔だ。


「そういや……もうすぐ来るな」


 植田がそう言って部屋を出て行った。なんだろう。俺たちは顔を見合わせた。

 すると、植田が再び部屋に入ってくる。そして、その後ろから見知らぬ女性が入ってきた。


「えーっと、誰?」


 美柑が植田に聞く。


「俺の彼女だ」


「「えー!」」


 植田の言葉にみんなが驚いた。


「は、はじめまして。高橋佐枝です。植田君とはおつきあいさせてもらってます」


「そっかあ、初めまして徳淵美柑だよ! 美柑って呼んでね!」


 こういうとき、誰とでもすぐ仲良くなる美柑がいると心強いな。俺たちは順番に自己紹介した。


 その後、乾杯をして、食事を始めた。


「植田、良かったな。真剣に好きになれる人が見つかって」


 俺は言った。


「まあな。大学卒業前、ギリギリに見つかったよ」


「大事にしろよ」


「お前に言われたくは無いけどな」


「まあ、そうだな」


 俺も久しぶりのビールを飲んだ。


――――

※次話で完結となります。


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