第24話 近づく限界

 その後、俺たちはカラオケに向かった。

 部屋に入ると一番奥に相良と美柑が座る。そして、植田と有佐が座った。その横に俺と奈保美が座る。相良と美柑は当然ながら距離が近い。俺と奈保美もそれなりに近かった。植田と有佐は少し離れて座っていた。


「私が最初に歌う!」


 美柑が最初に曲を入れ歌い出す。相良も曲を入れたようだ。俺も何か入れなくては、と思うが、なかなか何を歌っていいか分からない。最近のボカロ曲でも入れるか。


 やがて、俺が入れた曲が流れ出す。が、やはり誰も知らないよな……と思ったときだった。


「あ、この曲大好き!」


 有佐だけは反応してくれた。俺は有佐の声に元気をもらい何とか歌うことが出来た。

 歌い終わると有佐が近づいてくる。


「萩原君もこの曲好きなんだ」


「う、うん……」


「私も好きなんだよね。これとかも聞いてる?」


「もちろん……」


「いいよね、これとかも……」


 有佐が久しぶりに俺に話をしてきていた。だけど、しばらくたち、奈保美が歌い終わると、有佐は我に返ったようだ。


「あ、ごめん……奈保美」


「何で謝るの?」


「奈保美の彼氏だったよね」


「そうよ。でも、いいのよ、有佐は」


「そういうわけにはいかないから」


「そっか……じゃあ、返してもらうね」


 奈保美は俺を引っ張り腕に抱きついてきた。


「!!」


 有佐が驚いて見ている。


「どうしたの、有佐。私たち、これぐらい、いつもやってることよ」


「そ、そうだよね……付き合ってるんだもん」


「うん。政志、とってもシャイだから私からいろいろしてるんだ」


「そ、そうなんだ……いろいろ……」


「うん。いろいろね」


 有佐は俺から離れていった。


「なんで煽るんだ?」


 俺は奈保美に小声で聞く。


「有佐が自分の気持ちに気づくためよ」


「それでいいのかよ」


「うん。有佐との関係を早く決着させて欲しいのよ、私は」


「俺の中ではもう決着してるし」


「嘘よ。だったら私とキスできるでしょ」


「……」


「私も限界が近いのよね……じゃあ、そうね。一週間かな。その間に有佐が何もしてこなかったら、もう有佐のこと、あきらめてもらっていいかな?」


 奈保美は口調は軽い感じだったが、真剣な表情だ。

 俺ももう心を決めるときなんだろう。


「……わかったよ」


「そのときはキスしてよ」


「うん……」


 その会話はカラオケの轟音の中で有佐には聞こえなかったはずだ。


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