第16話 食事
食事の時間になり、相良と美柑がやってきた。
「おーい、来たよ!」
美柑は相良の腕にがっつり抱きついている。
「よし、行くか」
植田は何も美柑には反応せず、みんなで洋食店に向かった。
「試合どうだったんだ?」
植田が相良に聞く。
「負けた」
ぶっきらぼうに相良が言った。
「そうか」
「でも、ミッチー2点決めたんだよ!」
美柑が嬉しそうに言う。
「へぇ、すごいな」
俺はサッカーに詳しくないが、すごいことなのは分かる。
「まあな。でも3失点で負け。うちの守備、へぼいから」
「そうなんだ」
「でもおつかれ! 食べよう!」
美柑が相良に言った。
料理が来て俺たちは食べ始める。俺はハンバーグのプレートを頼んでいた。
「ハンバーグ好きなんだね」
高田さんが俺に言う。
「うーん、まあそうかな」
「よく食べてるイメージある」
確かに最初に高田さんと会ったのもマックだし、その後もハンバーガー店に行ったりしてるか。
その後は俺たちはいつもの昼休みのように話し出した。しばらく経つと相良が言った。
「それにしても、萩原と高田、仲直りできたんだな」
「え?」
「最近、ぎこちなかっただろ。心配してたんだぞ、みんな」
「そ、そうか……ごめん」
「まあ、あんな事があったら仕方ないけどな。萩原、吹っ切れたのか」
「……いや、まだだな」
「そうか。でも、いつも通りに見えるぞ」
「うん……今は、いろんな人に助けてもらって何とかな」
「そうか……」
少し場に沈黙が降りた。やがて、高田さんが言った。
「……そんなにつらかったの?」
「え?」
「萩原君。私に振られたこと、そんなにつらかった?」
「そりゃあね。前にも言ったけど、俺は真剣に高田さんが好きだから」
「そうなんだ。で、今も私と話すのつらい?」
「うん、正直言うと少しね」
「そっか……わかった。じゃあ、話しかけない方がいいかな?」
「ごめん、しばらくの間はそうしてもらえると助かる」
「わかった……」
高田さんは下を向いた。
「なんか、みんなに迷惑掛けてるよな、俺」
「そんなことないぞ」
植田が言う。
「いや、雰囲気悪くしてるし、気を使われているのも分かってる……だから、俺、しばらく抜けるよ」
「え?」
「お昼とか、俺は別のところで食べるから」
「いいって、そんなこと言うなよ」
「いや、俺もそうした方が楽なんだ。そうさせてくれ」
俺は真剣な顔で言った。
「そうか……お前がそうしたいならそうしろ。ただし、吹っ切れたら戻ってこい」
植田が言った。
「わかった。でも、別にみんなと絶交するわけじゃ無いからな。普通に話してくれ」
俺は笑った。
「だな、形は変わってもこれからもよろしくな」
相良が俺に言った。
「ああ、よろしく」
「萩原君、待ってるから」
高田さんが言った。
「うん、ごめん。吹っ切れるまでもう少しかかると思う」
「分かった」
美柑は何も言わなかったが心配そうな顔をしている。
麦島さんはいつもと変わらない表情で何も言わなかった。
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