第14話 駅

 そして日曜日。俺たちは新八代しんやつしろ駅に集合していた。ここから小川町のイオンモールまで行き映画を見る。みんなで映画を見ようと計画したが、八代市やつしろしには映画館は無い。電車で10分ほどの小川町まで行くしかないのだ。


 だが、相良たちサッカー部の試合もちょうどそのイオンモール横のサッカー場で行われるらしく、試合後に合流するならむしろここが理想的だった。なので、徳淵美柑も俺たちと一緒に行くことになった。


 俺と植田は先に駅に到着し、女子たちを待っていた。そこにちょうど美柑がやってくる。


「あれ? 早いね」


「おう、美柑。制服か?」


 植田が言う。休日だというのに美柑は今日も制服を着ていた。


「うん、部活の応援だから無難に制服。あ、私服見たかった?」


「友達の彼女の私服に興味ない」


「ひどーい!」


 そんなことを言っていると、高田有佐と麦島奈保美が来た。高田さんは白いワンピース、麦島さんはデニムのロングスカートだ。


「待った?」


 高田さんが植田に言う。


「いや、そうでもないぞ」


「萩原君、おはよう」


 麦島さんは真っ先に俺に声を掛けてきた。


「お、おはよう」


「え、まだ緊張してる?」


「う、うん。その……麦島さんの私服、初めて見たから」


「ああ、そっか。どうかな?」


「うん、似合ってる」


「ありがと」


「……そんなこと私に言ったこと無かったよね」


 高田さんが俺に言ってきた。


「い、いやあ……高田さんも似合ってるよ」


「高田さんも、かあ。萩原君、私のこと好きなんじゃなかったっけ?」


「そ、それ、ここで言う?」


「あ、ごめんごめん。だって、奈保美にばっかり優しい感じだから。あのときは私に告白してくれたのになあって思っちゃって……」


「……うん、今も好きだよ」


 俺は思わず言ってしまった。


「え!? そ、そうなんだ……ありがと」


 高田さんの顔が赤くなったような。少しは意識してくれたかな。


「なんだ、萩原。モテモテだなあ」


 植田がからかってくる。


「何言ってるんだよ」


 モテモテどころか振られてるんだからな。


「俺は美柑と先行ってるぞ」


「うん、柳治君行こう!」


 美柑が植田の手を取った。


「お前、いいのかよ、俺と手なんてつないで」


 植田が美柑に言う。


「これぐらいはいいでしょ。有佐と奈保美を見てたらなんかうらやましくなっちゃって。柳治君、ちょっと彼氏の代わりやってよ」


「相良に言いつけるぞ」


「そこは内緒で。お互い楽しもうよ、ね?」


「まったく、しょうがないやつだな」


 そのまま2人で手をつないで行ってしまった。


「じゃあ私たちも行きましょうか」


 麦島さんが俺の手を取る。俺は麦島さんに手を引かれて改札に向かった。


「ちょっと、奈保美。危ないでしょ」


 そう言って高田さんがもう片方の俺の手を握った。

 おいおい、両手に花かよ。そう思ったら麦島さんは俺の手を離した。


「ふふ、有佐、嬉しそう」


「な、何よ」


「今日は楽しんで」


「奈保美もね」


 俺たちは改札の中に入った。


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