第12話夜会②

国王の乾杯で夜会が正式に始まり 国王への挨拶の為人々が壇上へ続く階段に群がる 国王への挨拶の後 男性は王子側へ 女性は王女側へと挨拶に向かう

クロノス王とマリアート様はアリアの隣に用意された席に座っている

ある婦人が女性王族の方に来て 第一王女に挨拶をしメリルとアンナを無視してクロノス王の前で跪き「私は」と言いかけたのをクロノス王が制止し

「後でホールに行きますので挨拶はその時にでも それよりも何故王女に挨拶もせずに私達の所に?」優しく聞くが目は笑ってない

「そ それは 自国の王女より来賓の方に先にご挨拶をと思いまして」慌てて言うが「なら 何故第一王女より先に来なかったのですか?」

そう言われ スゴスゴと下がって行った

同じ事が繰り返される中 ある婦人が第一王女に挨拶をした後 メリルの前に来て

「お久しぶりですでございます メリル様」婦人が言うと

「まあ グレイブ婦人 お久しぶりですわ エメットは元気にしてますか?」メリルが嬉しそうに話す

「お気遣いありがとうございます エメットは大分体調は良くなりましたが やはり王都の寒さは良くないので 今回は主人と二人で王都に参りました「最近のエメットは編み物を嗜んでおりまして これを是非メリル様にと」婦人は手元の紙に包まれた物を取り出すと 緑を主に使った色鮮やかなストールを見せ「拙い出来ではありますが どうぞお受け取り下さい」

ストールを手に取りメリルは涙を浮かべ 肩にかけた

「こんな心のこもったプレゼントは初めてです エメットには最大の感謝をお伝え下さい グレイブ婦人」

「良く似合ってるよ メリル」そう言うと「ありがとう シリウス兄さん」

グレイブ婦人はアリアの前に行き

「まあまあ 最後に会ったのはまだ赤ちゃんでしたのに大きくなられましたね アリア様」

そうして紙包みを開き「アリア様にもとエメットから預かって参りました」

青とオレンジで編まれたストールを渡す

「ありがとうございます グレイブ婦人 私からもエメット様に最大の感謝をお伝えください」 ストールを羽織るとノエルさんを見て「どうでしょう?」と聞くと「ああ 凄く素敵だ」言われて顔を赤らめる

グレイブ婦人は次にクロノス王とマリアート様の前に行き

「お初にお目にかかります 私キャサリン・ヴァイ・グレイブと申します ご挨拶させて頂き 光栄に存じます」

今までと違ってクロノス王は

「僕はクロノスだよ お見知りおきを」そう言ってマリアート様を見ると

「私はマリアートだ 母娘共に良き心を持っておるな そなたらの領地に私の加護を与えよう」

「あ ありがとうございます」驚きの表情で涙を流すグレイブ婦人


ダンスの音楽が一区切りついたところで マルラス国王が立ち上がり

「ここで 皆の者に報告がある 先程言ったように聖王国国王と儂は友誼を結んだ それでお互いの国に駐在大使を置く話となり 我が国からは第三王女のメリル 第四王女のアリアを派遣する事となった」王が言うと

「何故? 私ではないのですか!! あんな汚い取り替え子なんか派遣したら この国の恥となりましょう!!」第一王女のキリアンヌが椅子を倒す勢いで立ち上がり叫ぶ

「そうだ そうだ 汚い取り替え子なんて我が国の恥だ 母親みたいに国から追放しろ」騒ぐ者達が出て来る


「王弟 王妹の友人を汚い取り替え子等と言うのは どうかと思うよ」

静かにクロノス王が言うと 顔を青くしてキリアンヌは椅子に座り 野次を飛ばしていた者達も静かになる

「と言うわけで 聖王国への商売やシリウス旅団への依頼は駐在大使を通してもらう事になるから よろしくね」続けてクロノス王が言うと会場内に静かなどよめきが起こる


会場内が落ち着いた頃合 ヴァンデーユ領主が豪華な箱を持って国王に挨拶に来た

[これは 名のある職人に作らせた胸飾りでございます 国王 第一王子に着けて頂ければ これ以上の幸せはございません]

箱を宰相に渡そうとするが

「ヴァンデーユ領主 一度下がってその箱を開けてみせよ」

国王に言われると ヴァンデーユはあからさまに狼狽し

「こ これは国王の為に作らせた物 どうかお納め下さい」

「だから それをお主が手にして見せてみよと言ってる」

「ググッ」階段下に降りるが箱を開けようとはしない

「お主の企みは全て分かっとる 衛兵!! ヴァンデーユを捕らえよ あとミームもだ」

衛兵に取り押さえられるヴァンデーユ領主とミーム領主

「くッ このままで済むと思うなよ」不敵に笑うヴァンデーユ領主


そこへ クロノス王が呑気に「あーそうそう ここに来る途中で二万ぐらいの大群が王都に向かって来てたから 魔物だと思って殲滅しといたよ」と言うと

国王が「王軍に確認に行かせたらヴァンデーユ領軍の軍旗が散見されたと報告があった ミーム領主 お前の所の二千の領軍も既に王軍が制圧済だ」

言われて「グッ」肩を落とすヴァンデーユとミーム

夜会の後 応接室でクロノス王の手を握り

「本当にありがとうございました クロノス王 感謝してもしきれません」

そう言うマルラス国王に

「いいんですよ 興国の時の恩を返しただけですから」

そう言って笑うクロノス王

「娘達を宜しくお願いします」真剣な目で見つめるマルラス国王に

「もちろん 任せて下さい 春にはお迎えに上がります」

クロノス王とマリアート様は王宮に一晩泊まり 翌日ドラゴに乗って帰っていった


王弟 王妹の立場だと分かると 次の日から更に夜会 お茶会の誘いが増えた

その中でグレイブ婦人からの招待があり そのお茶会だけ出席した 招待された他の招待客達も気持ちのいい人達ばかりでメリルとアリアも楽しんでいた

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