第7話

——埼玉県秩父 国防軍属 蚕月医院


●アラタの入院する個人部屋/リクライニングベッドで上体を起こしているアラタ。

●頭に包帯を巻いたアラタは右手には筋力アップのハンドグリップを握っている。

●見舞いに来ている馨、診断結果(カルテ)を見ながら驚愕する。


馨「全治1ヶ月って聞いてたのに1週間で退院って……どういう体してんだよ」


アラタ「週明けには任務に復帰します。僕が乗れるコロッサスはありますか?」


馨「いやまぁ……あるといえばあるけど、リハビリは必要ないのか?」


アラタ「必要ないです、そういうのは」


馨「そうは言っても病み上がりなんだし…」


●コンコンと病室のドアをノックする音。


馨「はーい、どうぞ」


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韮沢「失礼します」


韮沢太一にらさわたいち登場/海上自衛隊の制服を着ている


アラタ「韮沢さん!」


韮沢「齋藤くん、盛大にやられたらしいね。とはいえ元気そうでよかった」


●見舞い品の菓子箱を馨に渡しながら微笑む韮沢。

●馨は菓子箱を受け取りながら顔だけアラタに向けて聞く。


馨「……あの、どちら様?」


アラタ「海自の韮沢さん、コロッサスのパイロットです。韮沢さん、彼は仲村馨」


韮沢「仲村……?」


●仲村の名字で察する韮沢。


アラタ「【はぐろ】に乗っていた、仲村勝也さんの弟です」


韮沢「ああ、仲村くんの……それは驚いたな、配属は?」


馨「メカニックです。齋藤一尉のコロッサスを担当しています」


●握手を交わす馨と韮沢。


韮沢「そうでしたか、お兄さんは……残念でしたね」


馨「! あの……兄と親しくしていただいていたんでしょうか?」


●勝也の名前が出て少し驚いている馨。


韮沢「仲村くんとは防衛大の同期で僕も【はぐろ】の護衛艦に乗っていたんです」


韮沢「何しろ急ごしらえの艦隊で……あの時の僕では何もできなかった――申し訳ない」


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●勝也の遺影の前で海自の帽子を握りしめる韮沢(回想シーン)

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馨「! いえ、そんな謝らないでください!」


●表情を曇らせる韮沢、馨は慌ててさえぎる。

●馨と韮沢のやり取りを見ていたアラタ、ベッドの上から声をかける。


アラタ「そうですよ、それにあれはそもそも作戦自体がおかしかった」


韮沢「はは、僕たちがそういうことを軽々しく言うんもんじゃないよ」


●韮沢はニコニコと穏やかな笑顔でアラタをたしなめる。

●一方、いつものようにスンとしているアラタ。


韮沢「でも、元気そうでよかった。今日はお見舞いとお別れを言いにきたんだ」


馨「お別れ?」


韮沢「来月にも宇宙そらに上がることになりました。意味はわかるよね?」


●「宇宙」という言葉を聞き察するアラタ、少し表情が厳しくなる。


アラタ「――サジタリウスですね」


韮沢「ご名答」


●大きなモニターに並ぶパイロットたちのデータ、リストのイメージ


韮沢「――『サジタリウスの矢作戦』、全国から優秀なパイロットが召集されているんです。お陰様で僕にも白羽の矢が当たってね」


●なんでもないことのように語る韮沢、馨は驚嘆の表情で韮沢の話を聞いている。


韮沢「めでたく今回、宇宙そら行きが決まりました。齋藤くんにも声がかかるかもしれないけど……あいにく今回の出番はないかな?」


●ニコリと微笑む韮沢/苦虫を噛むような表情になるアラタ


※韮沢(アレス)は「無茶な戦いで人を死なせる日本政府に対する怒り」を持っているので、アラタたちパイロットには「無駄死にさせたくはないから前線に出てくれるな」と思っています。「死に急ぐことはない」は本心ですが、インテリかつオリュンポスに同調しているので過激な人間ではあります。


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韮沢「開戦から2年が経った今、世論もオリュンポス派が増えているように感じます」


●ネットニュースの見出しのイメージカット


「政策が後手後手の政府に国民の憤り加熱」

「未だ停戦の目処立たず」


●ワイドショーのインタビューを受けている一般人のイメージカット


「まぁ、今のところ戦時給付金で最低限の生活はできていますし……」


「ぶっちゃけ政府よりオリュンポスのほうがリーダーシップ? あるんですよねぇ」


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●シーン、病室の韮沢に戻る


韮沢「アメリカやロシア、中国のような強国が白旗をあげない限りこの戦争は長引くでしょう」


●ヒリつく雰囲気の2人を見ていた馨に向き直る韮沢、馨の顔をしっかりと見て告げる。


韮沢「2人ともまずは『生き残って』ください。お兄さんもそれを願っているでしょう」


●馨、ふと思い立ったように。


馨「あの、韮沢さんは……なぜ戦っているですか?」


韮沢「――僕の場合は、これが仕事だからかな」


●ニコリと笑う韮沢に馨は言う。


馨「あの それなら……大丈夫です 。誰も死に急ぐようなことはしません」


●アラタ、馨をじっと見る。


馨「パイロットも メカニックも、みんな与えられた仕事を懸命にやっています」


馨「……もちろん、まだまだ僕らは未熟だと思いますけど」


●馨のアップ。


馨「……それに、アラタは同じ相手に二度は負けませんよ!」


●ハッとするアラタと韮沢。

→「二度は負けられない」という勝也のかつての言葉と重なる。

●固まっている2人を前にして途端に恐縮する馨。


馨「ああああすみません!! なんか生意気なことをペラペラと!」


韮沢「いや……いいんです、すまなかったね。とはいえ、無理はしないように」


馨「はい!」


●慌てて敬礼する馨。


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●1時間ほど滞在の後、韮沢は帰ることに。


韮沢「じゃあ齋藤くん、お大事に。仲村くんも気をつけて。見送りは結構です」


●敬礼をして部屋を出て行く韮沢。

●廊下を歩く韮沢の胸元をクローズアップ。

→マリーゴールドを模したネクタイピンにさらにクローズアップ。


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●P9から暗転して場面転換

●カメラはオリュンポスのオキュパイトの整備ドッグに。

→アレス専用機マルスが整備されている。


●マルスの胸元をクローズアップ。

→マルスの胸元にはマリーゴールドがあしらわれている。


●韮沢太一=アレスを匂わせてEND。

●ラストに病室で韮沢の見舞いの焼き菓子を美味そうに食べる馨と迷惑そうなアタラのカット。

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