15:3 - 縄の継ぎ目にて
「それ関係あるかぁ? 忘れずに言えばいいだけだろ」
俺は悪びれ方がどこか嘘くさいイヴに思わずツッコミを入れる。
「まーそうなんだけどねー。取り敢えずいま言って謝ったし、進むことの方を優先しようか」
しかし、対するイヴはそれすら気にしていない感じでしれっとそう言い、笑顔で前に向き直ってまたヴィトのおっさんを銃口でせっついた。
起点のペグからの命綱の長さ:四二メートル。
そこから先の通路は右左の湾曲や横道はもちろん、キツい傾斜になっていたり
「む、そろそろ終わりかな」
そんなこんなで岩肌の回廊にライトを取り付けて少しずつ照らしながら進むこと五〇〇メートルかそこらあたり、先頭を行くおっさんがギシッという音と共に立ち止まったのを見てイヴが呟く。
「終わり? ってことはイヴ、今の音って……」
「そうだね、命綱がどうも限界まで来たみたいだ。これ以上はロープがない」
「でも魚群探知機レベルでもこんだけ深いことは最初っから分かってたんだろ? この次はどうすんだ」
「さすが我らがリーダー・アキ、話が早くて助かるよ」
イヴはそういって先遣隊の面々にその場で一旦止まるよう指示を出してから話し始める。
「聞こえたかな? “一本目”の、僕が持ってるロープが全部伸び切りました。じゃあこれからどうするかというと、みんなが持ってるロープの出番。カラビナで僕のロープに繋いで使う。見ての通り一本で五〇〇メートルくらい、つまりここにいる十二人各自のを一本に繋いで使えば単純計算で最大六キロ程度は伸ばせることになるワケだね」
そして腰に
「よし……で、この継ぎ目が外れたりしないように一人ここに残ることになるけど誰が……おっと、ちょっと待って!」
急にイヴが慌てたように右わきの岩肌に駆け寄って石ころを拾い上げる。薄い光のみ暗い状態のためよく見えないが、石ころは弱々しいながら青く発光しているように見えた。……イヤちょっと待て、“青く発光して”?
「ふむ、こりゃ驚いた。ここの地下にアイテリウムの大鉱脈が眠ってるっていうのは間違いなさそうだ」
イヴが石ころを手元のライトで照らす。やはりというか何というか、石ころのに埋まっている青い金属結晶がまばゆい反射光を放っていた。間違いなくかなり大粒のアイテリウムだ。
「うっわおい何だよそれ! これだけでもかなり金になるんじゃねーのか⁉︎」
「こんだけじゃ足んねーよバカ……えと、で、どんだけ集めんだっけか」
イガラシの歓声にも似た驚きの声にトツカがすぐさまツッコむ。うーん、どっちもバカ丸出し。
「あぁ、このレースのルールを再確認しておこうか。僕たちに必要なアイテリウムは一チームにつき一トンだね」
イヴが苦笑いしながらいま一度大会の基本的ルールを説明した。
「あーそうだったそうだった、悪りーなオッサン」
ちょっとは機転が利くらしいヤソジマがフォローに入ったものの、ノルマ量について言い出したトツカは何も言わないまま素知らぬ顔で上の方を見上げている。さすがに見かねたのか穴に入って以来喋っていなかったイスルギも口を尖らせた。
「おいトツカ、お前ェが聞いたことだろ。何でお前本人が
「あ、イヤすんませんっす! なんか物音聞こえた気がして……」
頭上の暗闇をチラチラ
対するイスルギは見るからにイラつきながら一喝する。
「テメェ、言い訳ほざくヒマあんならイヴさんに謝れや! 叩っ殺されてェかこの野郎‼︎」
「すっ、すんま……すみません!」
「……あのさ、ヤクザってそんなに礼儀とかに厳しいもんなのか」
そんなやりとりを見ていて不意に湧いた疑問を、俺は恐る恐る切り出してみた。
「おいコラテメー、イスルギさんに何つークチ聞いて……!」
「おい、
イスルギはというと、当然俺を見て殺気立つトツカをまた怒鳴ってからやれやれとでも言いたげに話を続ける。
「あと
「サラリーマンと変わらない、ってなぁ……夢がないってか何てーか」
独り言みたいに俺はボソッと呟いた。
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