初恋の人が近所に住むようになった&破局

第31話 まといさんが引っ越してきた

 みのりさんと交際をスタートさせて、一年以上が経過していた。


 友達すらまともに作れなかった究極不器用男なのに、彼女とは関係を継続させている。みのりの寛容さ、おおらかさだからこそなせる業だと思われる。他の女性だったら、10000%の確率で堪忍袋の緒が切れている。


 みのりのことを考えていると、見覚えのある顔が立っていた。


「無口君、こんにちは・・・・・・」


「ま、まといさん・・・・・・」


 わずか2年しかたっていないのに、肌は別人のように色褪せている。彼女の周りだけ、10倍以上も時間が加速したかのように。高校時代のアイドルだった姿は、まったく感じられなかった。


「無口君、久しぶりだね。いろいろな事情があって、こちらに引っ越してきたんだ。ご近所さんとしてよろしくね」


 初恋の人が近所に引っ越してくる。どんなに切っても切れない糸に操られているかのようだ。


「そうなんだ・・・・・・」


「無口君はどうしているの?」


「特に変わりのない日々を送っているけど・・・・・・」


 唯一の変化は彼女ができたことくらい。他については何も変わっていなかった。


「まとい、早くこっちにこい」


 まとい呼び寄せたのは、高校時代に交際していた男。卒業式をあげてからも、おつきあいを継続しているとは。二人はよほど相思相愛の関係なのかなと思った。


「俺の妻にあんまりちょっかいをかけるなよ」


「お、おくさん・・・・・・」


 颯とまといが結婚していたとは。予想していなかった事実に対して、驚きを隠すことはできなかった。


 片方は超イケメン、片方は超絶美人。超絶お似合いカップルという言葉があてはまる。


 みのりに結婚の話をされていたことが、強烈に思い出される。あの二人みたいに、幸せな結婚生活を送れるのだろうか。

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