第20話 膝枕2

 みのりを怒らせないために、ありとあらゆるところで気を遣った。メンタルの残りライフは0に限りなく近かった。


 みのりの柔らかい箇所が、視界に飛び込んできた。女に興味を持っていなかったはずの男は、オスとしての反応を示してしまった。 


「無口君は正直なので、心の中までまるわかりだね」


「あの、その・・・・・・」


「無口君のために膝枕をしたいんだけど・・・・・・」


「セ、セクハラになるのでは・・・・・・」


 みのりは口をあんぐりとさせる。


「無口君は女性のことをなにもわかっていないんだね」


「うん。女性のことはさっぱりわからない」


 対人スキルが0になりさがった男に、異性の心など知る由もなかった。


 みのりは膝枕の体勢を作ったあと、手でどうぞどうぞと合図をする。


「しゅ、しゅちゅれいしましゅ・・・・・・」


 前髪でおおわれている頭を、みのりの膝に預ける。


「みのりさんの太腿、ものすっごく優しい感じがするね」


「ありがとう・・・・・・」


 優しさを感じる太腿を触ってみよう、そのように思ったときには行動に移してしまっていた。


「無口君はすっごく正直な人で、ありのままの自分をさらけ出しているね。ものすごくグレイトだよ」


「そ、そうかな・・・・・・」


 みのりの太ももを揉んでいると、女性の声が鼓膜を通過する。


「のりちゃん、恋人ができたの?」


「みのりちゃん」ではなく、「のりちゃん」と区切る感性に、独特なものを感じずにはいられなかった。


「恋人ではないけど、二人で遊んでいるんだ」


「のりちゃん、い・・・・・・・」


 みのりはやばいと思ったのか、友達にストップをかける。


「ス、ストップ・・・・・・」


「そうなんだ。ごめんね。デートは楽しそうだね」


「うん。最高に楽しいよ」


 みのりはデートのつもりで、二人きりになっているのか。心を読むスキルが低い男は、心の中を読み取れなかった。

 

「のりちゃんの友達で、なつみといいます。はじめまして・・・・・・」


 なつみはテンションがやけに高い。相手を威嚇するために、高い声を出しているのかなと思った。


「しゃ、しゃじめまして・・・・・・」


「無口君は極端に人見知りなんだ。初対面の人に話しかけるのは・・・・・・」


 初対面でなかったとしても、話をするのはしんどい。失言癖を発動させないために、喉をつぶしてしまいたいくらいに。


「そ、そっか・・・・・・」


「なっちー、無口君と二人きりになりたいんだけど・・・・・・」


「わかった。邪魔してごめんね・・・・・・」

 

 なつみは軽くウインクをしたあと、二人のところからいなくなった。


「みのりさん、さっきの人は・・・・・・?」


「小学校時代からの親友で、私を理解してくれる数少ない友人だよ。お調子者かつ口が軽いのがネックなんだけど、いいところをたくさん持っているよ」


 お調子者で口が軽い。対人関係を苦手とする男にとって、一番の危険人物になりうるかも。なつみに対して、強い警戒心を抱いた。

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